赤眼ノ灰狐
イクサに命じられてから数日後五行信仰の1人、偽りの名 B ブライドは自身の守護する結界塔の最下層にある地下実験室にてイクサに頼まれた物を造る為に籠っていた。
しかし長き間籠っていたようで時間がおかしくなってしまったようで、現在の時間1時過ぎなのだがそれがわからいようだ。
そして仕事が一段落したところでブライドはため息をこぼす。
『・・・ふぅ。少し休憩しよう』
ブライドは元々、オメガとマサエルが戦闘を繰り広げたクロノトーン研究所で機械侵食者に対して有効な武器を造っていたのだが、とある理由で結界塔を守護することになってしまったのだ。
あまり人の上に立って指揮するのは得意ではなく、どちらかというと部屋に籠って研究している方が性に合っている。しかし現在はイクサの名によってとある物を造っているため、結界塔の守護は偽りの名W ワイズマンに任せている。
『し、しかしこれを造ることになるなんて。
イクサ様は本当に奴らを壊滅させるつもりなんですね。元々は僕らの仲間だったのに・・・』
ぶつぶつ独り言を言いながらブライドは椅子から立ち上がり、ストレッチをしながら研究室の扉から出ていく。
研究室から出たブライドは休憩がてら食堂がある1階にたどり着いた。
『あれ!?開いてない。』
ブライドは食堂に着いたのだが扉はシャッターで閉まっており、どうやら閉店しているようだ。
『あぁ。もうこんな時間か』
ブライドは自身の懐中時計を取り出し時間を確認する。時計の針は1時24分を差しており、どうやら徹夜してしまったらしい。
『うーん。どうしよう時間も時間だから寝ようかなぁ・・・だけどぜんぜん眠くないだよなぁ』
食堂の前で考え込んでいると、後ろから声が聞こえてくる。
『ブライド様どうしたのですか?食堂に何かご用意ですか?』
後ろから声をかけて来たのはブライドより背の高い女性で、帝の軍勢の軍服を身に纏っており、右肩につけている称号で少佐であることがわかる。
肩まで伸びた金髪を後ろで結っており、金色の瞳に黒の丸縁眼鏡をかけている。まだ若いようだがそれでも少佐の称号を持っているのはその分優秀なのであろう。
『は、はい!
あ、あの、その・・・こ、これはサボってるのではなくて、ちょっと休憩するために近寄っただけでして。あの、その』
ブライドは急に話しかけられたからなのかひどく動揺してしまっている。ブライドはこの結界塔での最高責任者なのだが性格的なこともあり、普段から積極的に話していないので動揺してしまったのだ。
『ブライド様落ちつて下さい。私です。レヴィ・マニージャ・アデレートです』
『れ、レヴィさんでしたか。大丈夫です落ち着きました』
ブライドは声を掛けて来たのが自身の知っている人物だったようで、ブライドは落ち着きを取り戻したようだ。
『夜遅くまでご苦労様ですブライド様。確かイクサ様に頼まれて例の物を造っているのですよね?』
『は、はい』
レヴィはブライドに一礼をする。ブライドは顔を合わせたくないのかパーカーを深くかけ直してから、レヴィに向かって一礼する。
『それは素晴らしいことですね。流石は若くして五行信仰の地位に着いただけはありますね』
『は、はい。ありがとうございます』
誇らしげにブライドのことを語るレヴィ。
『我々も誇らしいのです。ブライド様の元で働けることが』
『そ、そうですか。それはよかったです』
ブライドは照れてしまったのか、半歩ほど後ずさりしてもじもじとしている。
『そうですよ。ブライド様はもっと堂々とするべきなので・・・ブライド様?』
『は、はい。な、なんでしょうか』
レヴィがだんだんブライドの方に近寄ってくる。ブライドは近寄ってくるレヴィから逃れるように後ろにさがのだが、後ろの壁にはぶつかってしまった。そしてレヴィはブライドの右手を掴むと自身の手元に引き寄せる。
急に引き寄せられたブライドはバランスを崩し、レヴィの胸元に抱きつくような形になってしまった。
『きゃ、あ、あの・・・レヴィさん?』
『ブライド様・・・最近お風呂には入られましたか?』
レヴィはブライドから臭いを嗅ぐように首もとに顔を近づける。
『え、えっと、あの・・・』
『正直に話してください』
ブライドはレヴィの胸元に埋めていた顔をあげレヴィを見上げる。レヴィの顔は怒ってるはいないようだが、先ほどブライドのことを自慢していた顔とは明らかに違っている。
『み、3日くらい前だと思います』
ブライドは恐る恐る答える。
『そうですか・・・ブライド様。今からお風呂に入りますよ』
『え!?えぇぇ。あの、その、い、痛い!』
レヴィは掴んでいるブライドの右手をさらに強く握る。
『逃げようとしてはダメですよ。五行信仰の1人がお風呂にもろくに入っていないなどということが他の部下に知られては困ります。何よりも3日もお風呂に入っていないなんて衛生上非常によろしくありません』
そう言うとレヴィは腰にぶら下げている手錠を手に取ると、自身の左手首とブライドの右手首に手錠をかける。
『これでもう逃げられません。観念してお風呂に入りますよ。この時間ならすでに入っている人はいないでしょうし』
『え、ちょ、待ってくださいよ』
レヴィに手錠をかれられ逃げることを出来なくされたブライドは、よたよたと引っ張られるように歩かされる。
『全く信じられません。こんな身近に3日もお風呂に入らない人がいるなんて』
レヴィは聞く耳を持たずに歩き始めた。
『あ、あの。1人で洗えますから・・・』
『ダメです。3日もお風呂に入っていないのですから、丁寧に洗いませんと』
ブライドはレヴィを説得できなきないと分かると、手錠を外してもらい一緒にお風呂場に入る。
レヴィは赤子を洗うようにブライドの身体を、首筋から細い腕、そして背中へと優しく洗っている。
『ひやぁ!?れ、レヴィさん。
そ、そこは・・・』
レヴィはブライドの腰の辺りを優しく洗っている。
・・・しかし何だかんだか嫌らしい手つきだ。
『ブライド様。だいたい洗い終わりました。湯船に浸かりにいきましょう』
ブライドはレヴィと共に湯船に向かって歩き出す。ブライドとレヴィが並んで歩いているさまは、何だか歳のせいで端から見たら親子のように見えなくもない。
『ふぅ、やはりお風呂はいいですね。疲れが取れます』
『は、はい。あ、あの・・・レヴィさんもお風呂はまだでしたんですか?』
『私は2回目です。
それよりブライド様。例の物は順調に出来ていますか?』
ブライド、レヴィは共に湯船にゆっくりと浸かっていると、ブライドが作っている物の話を始める。ブライドと話しているレヴィの横顔は、子供との久しぶりに話を弾ませている母親のようだ。
『は、はい。本当は造りたくはないですがこれもイクサ様の為です』
『ブライド様は偉いですね!』
そう言うとレヴィはブライドの頭を優しく撫でる。
ブライドは照れてしまったのか顔を下に向けてしまう。頬何だか赤らめているようだ。
レヴィが頭を撫で終えるとブライドは顔を上げ、潤んだ瞳でブライドを見つめる。
『レヴィさん・・・も、もっと撫でてく、ください』
『わかりました。ブライド様は甘えん坊ですね』
レヴィはブライドを引き寄せると、子供を抱き寄せる様な形をとりブライドの頭撫で始める。
やはりこの2人は親子のように見える・・・




