偽りの名―X イクサ
帝の軍勢の総本部司令室の前へとやって来たワイズマン。
これから会う男は最強の偽りの名であり、帝の軍勢の最高責任者だ。
ワイズマンは緊張した手つきで扉をノックする。
帝の軍勢・総本部指令室
指令室の中央で書類に目を通している人物が1人・・・
偽りの名と帝の軍勢を束ねる者。
名をイクサ。
最強と言われる偽りの名X の適合者であり、帝の軍勢の総司令官である。
片目を眼帯で覆い右手には白い皮手袋、総司令官専用の白色の帝の軍勢の制服に身を包んでいる。
しかし他の帝の軍勢の制服とはまるで違い、その服装を一言で表すと威風堂々その言葉がよく似合う様な作りで、
右胸部分にはXの紋章、そして総司令官にしか着けることのできない紋章も見られる。
さらにその瞳は歴戦の英雄に相応しい眼光。
服装の上からでわかる鍛え上げられた肉体、前線を遠退いてからも感じられる覇気は本物その者である。
『失礼します。イクサ様、ワイズマン様が面会を求めています』
イクサの秘書。四季葵が報告しに部屋に入ってくる。
総司令官と同じ専用の帝の軍勢の女性用制服を身に付け、黒く伸ばした髪は艶やかで美しく気品があり、それに合わせて同色の瞳は人を魅了する力を感じられる。
街で見かけたら思わず振り向いてしまう様な可憐な女性である。
『戻ってきたのか。よい。面会を許可する』
『賜りました』
四季が部屋の前で待機しているワイズマンに教える為に出ていった。
『イクサ様執務の最中失礼します』
ワイズマンはイクサの前に立つと深々とお辞儀をする。
『頭を上げよ。
報告の必要であったのだから私に会いにきたのであろう。ならば私はお前の話を聴く義務がある。
ワイズマン話を聞かせてくれないか』
イクサはワイズマンに顔を上げるように指示を出す。
イクサが総司令官になれたのは功績だけではなく、人柄も大きく関係している。
仲間思いで、他の帝の軍勢や偽りの名を助ける為に自身が深手を被うことも構わずに行動する等が挙げられる。
しかしそれが原因で片目と右腕を失ってしまったが・・・
『はい。メリーが調査していた蟻型の機械侵食者の親玉である女王機械蟻の討伐に成功しました。
しかし戦いの末メリー、パルパトが負傷、メリーが率いていた帝の軍勢の全滅等。
こちらもかなりに戦力を失ってしまいました』
『そうか・・・』
イクサは暫く瞳を閉じて顔を左手で被う。
『ワイズマン君達の活躍で人々の驚異が1つ減った。
ありがとう。
それと亡くなられた帝の軍勢の名前と詳細を頼む』
『分かりました。
それともう1つ・・・フリーが現れました』
『残念ながら討伐は出来ませんでしたが』
イクサは無言だが左手の隙間から見える瞳には、明らかに怒りが灯っている。
『フリーは現在何処にいる』
先ほどとは口調が違い、明らかに不機嫌だ。
『我々がフリーと接触したのは旧地下鉄駅広場です』
『そうか。ワイズマン疲れたろう。
今日はもう休むがよい、それと少しばかりだが休暇をやろう』
『分かりました。
それでは失礼いたします』
『他のことは報告しなくてよいのか』
ワイズマンが扉から出るとそこには見知らぬ少女が立っていた。
しかしその声はどこか聴いたことがある。
『シルベルト・・・別にいいでしょう』
見知らぬ少女は先ほどのオメガ達を助けてくれた偽りの名 Sの適合者である。
出会った時はすでに能力を発動していた為素顔は拝見出来なかったが、顔はまだ幼くオメガ達よりも年下に見える。
薄紫色のショートヘアーに紫の瞳。
服装は他の帝の軍勢とは違い、パルパトと似たメイド服に迷彩柄のマフラー。
両腕には鉄甲冑、それと右耳だけ周りを金で囲った青色の宝石を埋め込んだイヤリングを付けている。
普通の人はあまりしない格好だがシルベルトは気に入っているようだ。
『貴女が報告なさったらよいではないのでしょうか』
『嫌だね、私は面倒が嫌いなの』
シルベルトは他の偽りの名と違い、イクサと対等に話す権限をあたえられている。
この権限を持っている者はシルベルトの他に4人いる。
『それよりイクサ様に用がなるにではないのですか?』
『わかっているだろ?私はお前会いにきたのだ』
ワイズマンは手持ちの懐中時計で時間を確かめた後、シルベルトを再び視線を動かす。
『ここで立ち話もなんですし、何処かでお食事でもどうでしょうか?
先ほど助けてもらったお礼もしたいですし』
『ナンパかい?
いいよ。幼女とお茶会とは良い趣味だねぇ』
シルベルトはその場で一回転してワイズマンにウインクをして見せる。
『それではお嬢様。
参りましょう』
ワイズマンはかしずいてシルベルトの手を取る。
『私は我が儘だから覚悟してね』
ワイズマンとシルベルトはその場を後にした。




