リセット
ゼータ、イクサの攻撃によって翼を撃ち抜かれ、地面に落下してしまったアリス。
しかしアリスの瞳にはアリスの攻撃によって負傷したイクサとゼータが落下してくる光景を捕らえる。
イクサの鎧は最早鎧としては機能する事が出来ない程破壊され、無傷であった翼にも赤いクリスタルの破片が刺さってしまい、羽ばたくことは不可能だ。
そしてゼータもまたイクサと重なるようにしてアリスの投擲した赤いクリスタルに貫かれた、気を失ってしまったのであろう、ゼータの身体は指一本動く気配がない。
そして地面に落下してしまう。
打ちどころが悪かったのか、イクサ、ゼータは動く気配がない。
先に落ちてしまったイエスメデスも動く気配はないようだ。しかし、動かないからと言っても死んでいるわけでないらしく、微かだがまだ息はあるようだ。
イエスメデスが支配していた帝の軍勢も支配から逃れたようで、戦意は無く、皆地面に横たわってしまっている。
遠くの方では未だにヴィゼイアスとの戦闘で傷ついた帝の軍勢の治療や、負傷者の搬入、行方不明者の捜索など行っているようだが、今アリスのいる場所には帝の軍勢が増援してくる気配はない。
人手不足なのかも知れないが、今もイクサ、ゼータ、イエスメデスが戦っていると思われているのであろう。
それに数分前に増援を寄越したのだ。おいそれと次の人員を派遣する程今の帝の軍勢は余裕がない。
『未だに息があるのですか・・・流石は偽りの名。人智を越えた力を持っているだけのことはありますね』
そう言いながらアリスは砕かれた右肩の止血をして、撃ち抜かれた弾丸を引き抜く。
アリスも真命の名と名乗っているが、基本的にはイクサ達、偽りの名と同じ人智を越えた存在であり、機械侵食者を倒す事が可能なライフル銃を数発撃たれた程度では死にはしない。
しかし死なないからと言っても痛いものは痛いのであり、イクサの槍によって貫かれた右肩はもう元には戻ることはないであろう。
(しかし・・・やっと終わったのですね)
アリスの頭の中に声が響きわたる。
この声の正体は・・・偽りの名V ヴィゼイアスであり、アリス達が討ち滅ぼした結晶の巨人ヴィゼイアス・ヴォナルガンドに取り込まれてしまった哀れな偽りの名である。
ヴィゼイアスの説明によればヴィゼイアス達、最初の使徒は機械侵食隕石の回収する為にこの地へ赴き、未来に持ち帰る予定であった。
しかし、問題が発生してしまい。偽りの名I イルミデンテが裏切りヴィゼイアス達と対立、イクサがイルミデンテとの相手をしている間にヴィゼイアスが機械侵食隕石の回収をする手筈だったのだが・・・残念ならが回収する事は出来なかった。
予想していた以上に機械侵食隕石の侵食能力は凄まじく、機械侵食隕石に近づくだけで他の生物は機械侵食者化してしまう危険性があったのだ。
大気を、川を、そして大地までも侵食していく機械侵食隕石を未来に持ち帰ってしまえば未来はどうなってしまうのか・・・考えなくてもわかる。
世界の破滅すら可能性にしてしまうのだ。
生態系の破壊など比較にならない、温暖化や大気汚染すらも凌駕し、最早天災の領域までいたってしまうほどこの機械侵食隕石は危険な物質なのだ。
そんな物質を未来に持って帰るなど言語道断。
その事を即座に理解したヴィゼイアスは自身を犠牲にする事によってこの機械侵食隕石を封じる事にする。
侵食細胞とは何なのか?
侵食細胞とはある日突然発見された未知の細胞であり、その細胞は取り込んだ者の細胞を活性化させ、身体の巨大化や、金属化させるという特性を持っている細胞であり、その細胞を取り込んだ生物の生存本能、闘争本能を刺激する特性もある危険な細胞だ。
そう・・・適合しない者が取り込めばただの巨大で金属の鱗を持つ生物になるだけであったのだ。
しかし・・・その危険な細胞に適合する人物も存在が彼ら、偽りの名なのだ。
選ばれた彼らは未来において数々の窮地を救い、数々の奇跡を行う存在であった。
ある時は飛行機事故から誰一人として死なせる事なく救出してみせたり、地震により崩落するビルの中から救出不可能な人物を救出する等その噂はことかかさない。
しまいには各国が戦争を止めるまでに至る程の力を持つ組織となってしまう。
それぞれがコードネームを持ち、名前を捨てた存在は偽りの名と名乗り始める。
そして彼らは各国の技術を結集させて過去改変次元跳躍装置を完成させるまでにいたってしまったのだ。
過去を改変し未来をより良くし、世界平和を実現させる。
その事を目的として過去改変次元跳躍装置を使用しようと思った矢先・・・跳躍して行こうとした過去に異変が生じてしまう。
人類が越えてはならない一線を越えてはしまったからなのか?それとも過去改変などを行おうとしたから神が怒り出したのか?そんな事はわからないが過去に機械侵食隕石が落下してしまう。
未来の技術であれば機械侵食隕石の侵食を押させる事が可能なのだが、機械侵食隕石が落下した時代にはそんな事が出来る筈もなく、このままでは侵食され、生態系、人類全てが死滅していまう可能性があったのだ。
機械侵食者化した人物、生物は最早この世界に存在してはならない。
その事を理念に置いていた偽りの名の面々は過去に赴き、機械侵食隕石の回収をするという任務につく。
全員ではなく最も侵食細胞を使っていたもの達が選ばれ、彼らのことを最初の使徒として過去に送ったのだ。
順調にいけば最初の使途だけで機械侵食隕石の回収が出来る筈であったのだが、事態はそう上手く行くことはなく、イルミデンテの裏切り、予想していた以上の侵食能力、未来に持ち帰る事を断念したヴィゼイアスによって機械侵食隕石は封じられてしまったのだ。
そして月日は流れ第二の戦徒、第三の聖徒が過去に到着し、第三の聖徒・アリスが過去に行った事によって過去改変次元跳躍装置が壊れてしまい戻れなくなってしまう。
偽りの名A アリスもその侵食細胞の大半と記憶を失ってしまったのだ。
『これで・・・全てがリセットさせるのですよね』
(えぇ・・・これで全てが終わりです)
『この力は存在してはいけない物・・・過去にも未来にも』
アリスは確信をついたように人物の変わり果てた姿を見つめ、機械侵食隕石を見つめる。
人智を越えた力を持つ事は罪なのか?使い方を誤らなければ大丈夫・・・っと思っていた時がアリスにもあった。
しかしそれは大いなる誤解であったとアリスは確信してしまう。
そう・・・結晶の巨人。ヴィゼイアス・ヴォナルガンドによって操られたユセに、Vの侵食細胞によって侵食されるまでは。
偽りの名A アリスの能力を失ってしまったアリスにVの侵食細胞が侵食し、そして融合してしまい、対機械侵食者、侵食細胞を持つ者に対して絶対なる力がアリスの身に宿りってしまう。
そしてヴィゼイアス・ヴォナルガンドによってその侵食細胞を取り込まれてしまった筈の偽りの名V ヴィゼイアスの残思がアリスの中に復活してしまい、侵食細胞の秘密を教えてくれる。
侵食細胞の秘密とは・・・その細胞事態に明確なる意思が存在していると言うことだ。
細胞に意思があるなど冗談だと言いたいところだが、現実とは小説よりも奇妙であり、人間とは己の常識より逸脱した事を認めたがらない存在だが・・・その常識すらも越えてしまっていたのだ。
その事に気づかされたアリスは自身のこの身に宿る機械侵食者、侵食細胞を死滅させる能力をいかしてかつての仲間であるイクサ、イエスメデスを討ち滅ぼす事を決意し、今討ち滅ぼしたのだ。
最早この世界にアリス以外の侵食細胞を持つ者は存在せず、機械侵食者を産み出していた原因である機械侵食隕石も既に破壊済みだ。
安堵したからであろう。口からはため息が、そして仮面に覆われた瞳からは涙が零れ落ちる。
自身の上司だけではない。自分を娘のように可愛がってくれたトト、勝手に恋のライバルと意思していたパルパト、そして自分が好きでいたオメガでさえ討ち滅ぼしてしまったのだ涙も自然に零れ落ちてしまうのは仕方のないことなのだ。
しかし泣いてはいられない・・・自分は既に取り返しのつかない事をしてしまったのだ。
泣いたからといって自分のしてしまった事は元に戻ることなく、この現実が夢になることはない。
(もう・・・大丈夫なの?)
『えぇ・・・大丈夫です』
優しげなヴィゼイアスの声がアリスの頭の中に響きわたる。
アリスの最後の意思を確認し終えたヴィゼイアスはアリスと共にこの世界からいなくなることを決意する。
今のヴィゼイアスはアリスに寄生している侵食細胞に残る残思であり、アリスが死滅してしまえばヴィゼイアスも同時に消えてしまう。
最早自分の身体にも、この世界にも未練はない。
そう確信したヴィゼイアスは自分の考えがアリスと同じだと確認してゆっくりと意思を閉じる。
まるで眠るように・・・
ヴィゼイアスの意思が薄れるのを感じとったアリスはゆっくりと自身の左腕を喉元に当てる。
自身の侵食細胞とヴィゼイアスの侵食細胞によって造り上げられたクリスタルのガントレットが光に照らされきらびやかに輝く。
思い残すことはない・・・そう確信してアリスは目を瞑りガントレットで喉元を貫く・・・筈であった。
勢いよく突き刺さる筈のガントレットは横から入ってきた黒色のガントレットによって止められ、アリスの喉元を少し傷つけただけで止まってしまう。
誰が止めたのか?恐る恐るアリスはガントレットを掴んだ黒色のガントレットの人物を視界に捕らえ、絶句してしまう。
『オ、オメガ・・・様?』
アリスのガントレットを止めたのはオメガであり、Rの侵食結晶を纏っていた時とは違いオメガだけの侵食細胞となってしまっていた。
何故止めたのか・・・そう思った矢先にオメガから蹴りを喰らい、吹きとばされてしまった。
『が、がはぁ・・・』
オメガの蹴りによって地面に倒れこんでしまったアリスに、オメガは踏みつけ攻撃を開始するが・・・咄嗟に動いたアリスによって回避されてしまう。
地面を転がるようにして回避したアリスに対してオメガは近くに落ちてる瓦礫を投げ捨て、追撃するがアリスの左腕のガントレットを使用して粉砕する。
『ちぃ・・・流石に状況が掴めなっ』
状況を確認しようとしたアリスに対して、瓦礫を投げた隙にアリスの後ろに回ったオメガがアリスの頭を掴むと・・・勢いよく地面に叩きつける。
叩きつけた衝撃によって地面が凹み、アリス自身の仮面に微妙に皹がはいる。
喋っていたからなのか地面に叩きつけられた衝撃で口の中に、土が入ってしまい口の中が土臭くなかってしまう。
地面に顔面を押し付けられていた事によって息がし辛くなっていたアリスだが、不意に後ろ髪を引っ張られて地面しか見えていなかった視界がクリアになる。
ブチブチと数本の髪の毛が引きちぎられ、痛さと、屈辱がアリスを襲い、一瞬にして次に何をすべきなのか判断を下す。
『邪魔ですよ!』
アリスの左腕のガントレットがアリスの髪を掴んでいるオメガに直撃して、オメガの着ている鎧に当たり鎧が砕け散る。
怯んだオメガに対してアリスはボロボロのクリスタルの羽を動かし、一気に後ろに跳躍して距離を取る。
距離を取る理由は突然攻撃してきたオメガの次の攻撃が予測出来ないからであり、何故オメガが生きているのか問いただす為でもある。
アリスの攻撃は確実にオメガに当ていた。
通常であればアリスの攻撃を喰らってしまった偽りの名、機械侵食者は砕け散ってしまう。なのにも関わらずにオメガは倒されることなく、今この場にいるということはどういうことなのか知る為だ。
しかしよく見るとアリスが攻撃した筈のオメガの鎧は砕け散ってしまったのか、辺りに散らばっていて、アリスの髪を掴んでいたであろうオメガの左腕の黒色のガントレットも砕けたのか無くなってしまっている。
どうやらアリスの攻撃が無効化された訳ではないようだ。
『どうやって私の攻撃を防いだのですか・・・オメガ様』
『・・・』
アリスの問いかけにオメガは無言でアリスを見つめているだけで、答えてくれる気配はない。
何も喋らないオメガの様子を伺っているいたアリスだが、オメガの砕かれた鎧の隙間から包帯が見え隠れしているが見える。
そしてオメガが包帯を巻いている位置は、アリスがオメガ、パルパトを攻撃して貫いた場所だとわかる。
(傷は完治していない・・・)
『オメガ様そのような身体でよく戦えますね』
『それはお前も同じであろう・・・』
『何故生きていたのです?』
『それを教えても意味の無いことだ。そして俺の質問に答えろ姫子。何故俺らを攻撃した』
『・・・』
今度はオメガの問いかけに黙ってしまうアリス。
オメガを攻撃した理由は単純明快・・・オメガが偽りの名であるからだ。
この世界に存在してはいけない物質、侵食細胞を所持している人物だからであり、アリスが討ち滅ぼさなけらばならない存在だからだ。
たとえどんなに犠牲払っても、どんな手段を使ってもだ。
『その理由をお話したら素直に納得してくださるのですか?』
『いいや・・・お前を許す事は出来ない。イクサ様を、トトを、そしてパルパトを殺したお前を許す事はない
だが・・・ただお前が何故涙を流し、自殺しようとしていたのか知りたかったのだ』
『・・・その理由をお話する事は出来ません。そしてこれから待ち受ける運命を変える事は不可能です』
『・・・どうやっても不可能のか?』
『不可能です。私が・・・真命の名A アリスが貴殿方、偽りの名を討ち滅ぼす運命に変わりはありません』
『そうか・・・ならば全力で抗わせてもらおう』
そう言い終えるとゆっくり大斧を持ち上げ、アリスに構えるオメガ。
それに対してアリスはゆっくりと左腕を突き出し応戦の構えにはいる。
『行くぞ姫子!』
『討ち滅ぼします・・・覚悟してくださいねオメガ様』
オメガと姫子は全力で走り出す。
互いに愛した相手を殺す為に・・・仮面から涙を流したまま・・・
とある極東の島にて・・・
照りつける日差しが暑く、外で活動するにはもってこいの天気の中で、数名の人影がうろうろしている。
人影の回りには凄まじい衝撃だったのであろう、何十年以上も放置されたような瓦礫が散乱していて日陰を作っている。
そんな回りが瓦礫まみれに中で人影は地面に埋もれている物を探しているのか、手にはスコップやツルハシを持って採掘作業をしている。
『おぉ!?こ、これは・・・』
『どうした何かあったのか?』
『ちょっと待って・・・ここを削れば・・・
おぉ!?やっぱりだ!』
一人の作業員が土の中から何やら掘り出し、それを持ってテントを張っている場所まで移動する。
『教授これ見てくださいよ。これ!』
『おぉ!?こ、これは・・・』
『間違いなく新発見ですよね!?』
『確かにそうじゃ。君これを何処で掘り起こしたのだね?』
『あちらです教授』
『そうか・・・ならばあちら付近を念入りに調べる必要があるな』
『そうですね教授。我々はついに幻とされていた島で発見したのですね』
『あぁそうじゃ。数百年前に突如この島を襲った隕石の落下。そして落下してから数十年の間他国との交流を一切拒絶し、突如として滅んだとされているこの島の秘密に迫る重要な鍵じゃ』
『心が踊りますね教授!』
『そうじゃな・・・少し儂も行ってみるかのう』
そう言うと小太りな教授と言われた男性はテントから出て行き、その後を若い男性が追って出て行く。
若い男性の手には発掘によって手に入れたのであろう仮面を手にして。
『それにしてもこの仮面・・・何故Aと書かれているのでしょうね?』
『それはわかっ・・・』
『どうしましたか教授?』
『い、いや・・・今そこに女の子がいたような・・・』
『女の子!?何言っているのですか教授。この島はもう既に無人島ですよ。
とても人が住めるような環境じゃないですよ』
『そ、そうじゃな・・・儂の見間違いじゃな』
『ちなみにどんなに感じの女の子だったのですか?』
『後ろ姿だったので顔までは見てはおらぬが・・・その腕には不似合いなクリスタルのガントレットをはめておったぞ』
『へぇ・・・もしかしたら幽霊なのかも知れないですよ』
『そんな事はないじゃろ。今は昼間なのじゃから』
そう言いながら小太りな男性と若い男性を見つめる影が一つ・・・顔は仮面を着けているのでわからないが手には不似合いなクリスタルのガントレットをはめた女の子が二人を見つめていた。
偽りの名AtoZは此で終わりです。
最初に比べて少しはまともになったと思いますが、まだまだ初心者です。
この物語は自分の好きなゲームの設定を多少弄り、いろいろな設定を追加して作った作品です。
少しでも面白いと思ってくれれば幸いです。
こんな感じの最後のなのかーと思う人もいるかもしれませんが、自分は満足しています。
それではまた何処かで・・・
次の作品も作る予定です。




