表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

自意識ラビリンス

 陽日が目を刺す。朝だ。閉め切ったはずのカーテンは夜中の風で半開きになっていた。ここ数日続いていた雨はすっかりあがって、雲一つない、太陽が空を一人占めしている。

頭が痛い。昨日飲んだマイスリーがよほど効いたのか、ぐっすり眠ったようだ。しかし、頭が痛い。低気圧かしら。強烈な尿意がする。溜まった尿で膀胱の存在が感じられる。朝一で脳髄と膀胱の存在を意識させられる、空の青みとのコントラスト。

尿意によってペニスが生々しく勃起している。MORNING GRORY 。

 一七,五センチの僕のペニス。以前、ネットで測り方を調べて、定規で測った。ズボンとパンツを仰向けになったまま脱ぐ。ペニスが僕の体とまさしく正確な九十度で上を向いている。あぁ分度器があったら測ってみたい。きっとぴったり九十度のはず。

ペニスを眺める、じっくりと慈しむような目をして。もしかしたらこのペニスを媒介として宇宙人と交信できるかもしれぬ。なぜそんなことを考えたかというと僕のペニスは実際、放射線と電波を感じ取れるからだ。放射線を感じるとペニスに浮きだった静脈はピクピクと脈を打つ。電波の場合は亀頭が赤くなる。

別に宇宙人と交信したくないから、トイレに向かい勃起したペニスを下に向かせ、大量の尿を放出する。アンモニアの鼻を刺す臭い。排水が尿で黄色く染まる。

ベッドに戻って、読みかけのビアスの「悪魔の辞典」を読む。大学一年生を引く。「苦悩と御馴染みになった学生」なるほど、ビアスは辛辣だ。この年頃の人間は苦悩といった玩具で、しかめっつらの背後には陶酔を感じている、もったいぶった気取りの高尚なことを考えやがる。それは僕だが。人生とは何だろう、人間は如何にして生きるべきか!


 馬鹿か!てめぇ親の脛かじってぬくぬくと育ってきた鼻たれ小僧が何、くだらないことにうつつぬかしてんだ。バイトもしねぇでずっと家でバカみたいに本を貪って、お前に漱石なんかわかりゃしねぇよ。人生経験が年齢に伴っていないくせに、書物から人生を学び取るなんていって、おめぇ芥川龍之介じゃあるめぇし、なに?芸術至上主義?なに言ってんだぁ、馬鹿野郎!芥川龍之介みたいな天才はそうかもしれねぇけれどもよ、お前みたいな三流大学の文学部の一学生がなぁに言ってんだ!せいぜいお前には五流雑誌の三文記事がお似合いだぜ。っけだから文学なんて嫌いなんだ。単純に現実から逃げてるだけだろ、思うようにならない現実の逃避口として人が読まないような本の世界に入り込んであたかも自分が高尚な人間と勘違いしてやがるんだ。おい、世の中を見てみろよ。外を歩いている人間をみてみろよ。誰がどこの大学を出で、どの企業に就職しているなんてわかりゃしねぇよ。面子で飯は食えないぜ。


 こんな事が馬鹿らしいってことは気付いている。文学者気取りの対人恐怖症引きこもりダメ人間。

ドラマは起きない、しみったれた単調で反復の人生。だけど僕は何も行動しないだろう。

まぁ、なんとかなるさ。なぜなら俺は選ばれた人間だっかっらっさッ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ