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韓国風「食虫植物の旅」

世の中って物は理不尽だ

あっちこっち言いたいことを人が言っていて

それが正しいことはほとんどない

ただ一つあるとすれば

そのほとんどがそれを間違っていないと思い

そしてその思いが強ければ強いほど

たいていの人は

その風向きに逆らえないのだ

それはそれを悪いふうに受け取った一人の男(オス・雄蘂、馬鹿)の話にもならない話だ


世の中に毎週日曜日を含む土日が毎週やってくるが

その男のところにやってくるものではない

その男のところへやってくるのは

目に見えない電波から流れる

植物に関する映像や文

その他全てが植物関連だと言っても良い

その男の家には

庭には一見すると花のような植物が発泡スチロールの中に鉢ごと入れられ

育っているが

その正体は「サラセニア」と言い

全八種類の原種から成り、そこから発生した交配種は星の数ほどはないが

名前もない物まで含めればとてつもない数字になるだろう

彼いわく「原種も言ってみれば交配種と何らかわらない」そうだが

そうなると境目が分からなくなる

その鉢の中にも小さな鉢が無数に並べられており

そのほとんどが、ドロセラ、即ちモウセンゴケだったり

ウトリクラリア、つまりは、地中に捕獲する袋を持つ

かわいい小さな花の、ミミカキグサの一種だったりする

果たして種類だけで膨大な物を

彼が把握しているかはなはだ疑問的だが

少しでも鉢がいどうすると激怒することから

分かっていると思われる

私はそのハッポースチロールの並べられた腰水栽培地から更に奥に進むと

庭に窓が見える

そこが彼の書斎であった

私は遠慮なしに

その玄関ではない

その窓ガラスの扉を開けると

無遠慮に中に入った

「おじゃまします」

一応の挨拶はあるが

基本やつは返事をしない

ものすごく礼儀知らずのように見えるが

しかし

ものすごくシャイであると思われ

特定の女性(たぶん結婚前提、もしくは恋人くらい)出ないととても普通に喋っては、いけないと思っていると思われる

私がここにきたのはちょっとしたことがきっかけだった

本当に些細な

それは忘れそうなくらい昔

正しくは二年半前

私は、一人の新聞記者になったが

しかし

持ち前の行動力と

それに相反する

不味いスクープを上が出さないと言うお触れ

結果的に私は新聞業界を追い出され

笑いながらのみにつき会ってくれた先輩の薦めで

とある雑誌編集社に転身することになる

その名は「蛸壷草社」

一見いかがわしさが爆発するような名前であり

住所だけ知らされて行ってみて

その会社の看板を見て一度帰ろうとしたが

しばらく近くの喫茶店でようすみをすると

その建物から出てくるほとんどが

老人であったり

とても境適応社とはいえないような山男だったり

とにかくそれが一体何なのか判断しかねる物であった

先輩から聞かされていたのは

「まあ、特殊なところだから、君に会うかも知れない、変人は変人の中ってね」

私はその答えに対して

「隠すような性格をしてるって言うのですか」と言うことも忘れていなかったが

私は喫茶店を出ると

その興味に引かれるままに

そのボロい建物の二階に上がった

三階全てがその会社であるが

入り口はどうやら上にあるらしい

私は階段を上がると

二階に玄関があり

私は少し躊躇するも

その扉に手をかけた

軽いベルの音が鳴る

中にはいると

そこは書類と木と木と木があった

何から何まで木というわけではないが

まるで、森の中の山小屋のような

何かときが目に付く

それを隠すように

白い紙が山済みにされている

いわゆる普通の編集室のような光景だ

木が多い以外は

私は受付のないその場所でうろうろしていたが何時までもこんな事はしていられないと

一番近くにいた

市役所の受付にいそうな丸めがねのおじさんに声をかけてみることにした

「あのすいません」

「ああ聞いてますよ、あなたが新しく来てくれたという・・・えーーとあなたの仕事は」

「あのちょっと待ってください、どうして私だと」

「・・・ああ、ここの女性が来ることは少ないですから」

「そうなのですか」

「まあ、それに写真がばらまかれてますから、あなたは有名人です」

沿おう行って老人は机の引き出しから一枚の写真を取り出す

そして先ほど彼が言ったとおり

その写真には私が写っている

「・・・誰が」

「・・金髪のあの・・の人です」

「齊藤さんか」

「ええ確かその後島さん」

「・・・それで私は何を」

「それなんだけど・・・」

かくして行動力はあれど

常識がない駄目人間の私は

とりあえず仕事を受けることになるが

そこでやっていたというのが

いわゆるマニアック物

と言っても、大人は大人でも

盆栽、アクアリウム、アクアテラリウム、ボトルプランツ・・・などなど

その会社で一番の大ヒットが近年発売された「植物を苛める十の方法」

と言う、ガラス瓶などの中に植物を入れて

その中であんな事やこんな事・・・とかいうのではなく

ただ単純に、植物を瓶に監禁するだけの話なのだ

(瓶詰めの植物)

私はそのとき、夢の久作の瓶詰めの悪魔を密かに思ったりもしたが

物が違うだろう

とにかくここはそう言う趣味のマニアックさに視点を置いた会社であり

蛸壷と言うのも

人それぞれの好きな場所をピックアップするという意味だと

なぜか習字で額に飾られてあったりするが

それを誰が書いたか誰も知らないと言う

とにかくそんな中で最初の一週間がすぎ

二週間目に突入しようかどうかという月曜日

その日はやくも私はあるコーナーを任される事になった

それは、食虫植物を扱った雑誌「ダーウィン窓際植物」のなかで

今年一年は

その名物企画らしい

毎年変わる企画で

「隣の食虫大国」と言う物をやっているという

何でも食虫植物を育てているお宅へ行き

そこでインタビューを交えてその植物の写真をばっしばっしと

撮りまくると言う

ここの編集室でなぜかいいカメラとレンズが多いのは

ここら辺が大きな意味を持つのであろう

私はカメラとノートを持ってその日あるお宅へ向かった

それが即ち奴の家である

「彼の四輪他アノヨりんた二十四歳

食虫植物を初めて八年

なお引きこもり」

私は奴の家に行くまでの電車の中でそんな

知らされた内容というかプロフィールを見ていた

果たして大丈夫であろうか

私が家に付くと

そこは平均的な家ではあるが

その木造三階立ての白い壁

庭に生える芝生に隙はなく

実に言い雰囲気だ

それは昭和の初め頃の西洋建築ともまた

外国の家ともいえそうである

どちらにしても私はその言い雰囲気に

少し胸を躍らしていたといえる

そう、そう思わなかったと言えば嘘になる

その木の扉をチャイムを押してからあけると

中からは清楚な女性が

そんな思惑から私はチャイムを鳴らし

中からの返事を待つが

いっこうに何の声も聞こえない

「・・・・」

私は何度もチャイムを鳴らすのには飽きたらず

声を張り上げて、誰かいませんかと怒鳴ってみる

するとおようやく

「はいはい」

そう言う男の声

玄関の扉が開いて出てきた物は

清楚なお母様といえるものではなく

四月のまだ少し寒い時期だというのに

白いTシャツに徳利とお猪口が、今風に描かれた物を着て

さらにはそのナナフシのような長い手足

さらにはその一番上につけられた頭は

アフロのようにもじゃもじゃであり

あの会社に行ったときほどに帰ろうかとも考えたが

しかし仕事上逃げるわけには行かない

と言うか逃げても別段いいのだが

そのモジャモジャ頭に隠れたその顔は

以外と幼さを残したそれでいて

その年齢にはないしっかりとした物が見えた

しかしそのときの私はまだ知らない

そのしっかりとした物は

実にヒネクレた根っこに絡みついているという事を


私を出迎えたその男に招かれるとは言い難い

それは、私を見ることなく

ただ扉を開けたわ良いが、そのままただ立っていた

なにをするわけでもなく

置物のように

「あのー」

私は耐えかねて彼に言う

「取材はどこでしましょう」

この場合、始めから家の外で全てを終わらすということも出来るし

また外ではなく全ていえの中ということも出来なくはない

趣味をやるものというのは妙なことでこだわるものだ

「あっ・・すいません・・お茶でも出しましょうか」

それは、あわてたようにそう言と、家の中に引っ込もうとしたが

すぐに、

「リビングは、その廊下のすぐ横です」

玄関からすぐ横を指さして家の奥に引っ込んでいった

彼がどの様な経緯で取材をすることになったかと言えば

それは家の雑誌を毎回購読してくれているというのと

日本食虫植物連盟なる組合に所属している縁からだと聞かされている

この国には他にも色々な組織が地方ごとにあり

その中の一つ

東京で主に活動しているのそれである

しかし

今の時代パソコンなどもあり

その垣根はイベントをやる場所と言う縛りあり

ほとんど関係ないとも言える

そんな彼のほとんど分からない経緯であるが

私としては取材できればそれでよい

ここで持つのも良いが

ものすごく人見知りしそうな彼のことである

ここは待っているよりか

リビングに言われたとおりいってみるのも良いかも知れない

私は

「お邪魔します」

そう言って家の中に足を踏み入れる

中は木が基調としてある

どこか落ち着いた涼しげな家であり

どこか外国に行ってしまったような

それでいてどこか親しみがあるような

私はそんな家を見ながら言われたままにリビングに行くと

そこはまるで、舞踏会でも開けるのではないかという広さの

物である

「・・・・・」

私は黙ってそれを見ていると

「・・・っあ・・あのお茶」

先ほどの彼が扉の前で邪魔になっている私にそう言った


「それで何時からその食虫植物を」

私はメモも取らないで話を聞いていた

基本そんな構えをすると喋るものでも喋らなくなる

少なくとも普通に接した普通の状態から出る物の方が良いだろう

私はそんな構えのまま彼に聞く

「・・・中学三年生の頃だから・・・七年くらい前かな」

「そのきっかけは」

「えーーと・・・ホームセンターに売ってたんですが・・・杉植物を枯らす人間でしたけど・・どうしてもそのときは欲しくなってしまって」

「枯らす人間だったんですか」

「ええ」

「それで今まで続いていると」

「まあ・・・本当は柳が好きなんですが」

「・・はあ」

「・・いえ、なんでもありません」

「一番好きな食虫植物は」

「・・サラセニアでしょうかね」

「サラセニアですか」

サラセニアとは、筒状の植物であり

その筒に消化液と、消化を助ける微生物をため込み

虫などを消化して養分とする物である

「ええ、単純に栽培が楽というのもあるのですが

大きいのはやはりすごいです」

「すごいですか」

「まあ、普通ならもっと小さいですし、それに大きくても値段が高かったり

第一栽培が難しい」

この世界で一番大きな食虫植物は10メートルにも達する

しかし別に人間も

また動物を食べるわけでもなく

それは幼少期

50センチの幼木の時のみ虫を捕らえる粘着液を分泌するのである

しかし今現在その謎の植物トリフィオフィラムは

その生息地が戦場のため、調べることがほぼ不可能であり

開発による伐採から

絶滅の危機に瀕しているかも知れないと言う

かく言う全ての知識は

うちの出版社から出ている

「食虫植物に食べられたい本」と言う名前からしてふざけている物によるものであり

題名とは裏腹に実にげんんじつてきなほんだ

「そのサラセニア以外に好きな物は」

「基本食虫植物となれば好きだが、しかし、こう思うことがあるのです

もし食虫植物のような形状の物と

これは絶対食虫植物ではないと言うもの

果たしてどちらを好きになるか」

「・・はあ」

「・・あなた聞く気がありますか」

「ええ・・仕事ですから」

私は答えておく

「あなたは好きな物はありますか」

「無いです」

「無いのですか」

「・・・いけないですか」

「衣食住も」

「・・・・・・・・・理屈っぽいです」

「・・・・私が食虫植物がどうして好きなのか私にも分かりません

しかし、一つ言えることがあるとすれば

私はそれを見るとなぜかうきうきしてしまうのです」

「恋ですか」

「どうですあなたも好きになってみては」

「いえ私は結構です」

その日私は一通りその取材を終えてから彼のうちをあとにした

しかし

後日、写真を一枚も撮っていないことに気が付き

私は急いでそのうちを再度訪ねた

「すいませーん」

私は前もって連絡を入れた後に

その家に向かった

「・・・・どうぞ」

男は家の扉を開けるとそう言った

しかし今度はあのひろくくらいリビングではなく

男はそのまま、庭に行くゆくようにと言うと先に玄関を出た

そこにあったのは


今までに見たことの無いような多さのさらせニアであり

数十いや、数千はあるように思われた

その全てが、同じ水盤でまとめられており

きっとタイマーで水が流れるようになっているとも思う

と言うのもそう言う設備をしている人間がいるとパソコンでみたのだ

「これどうやって増やしたのですか」

「大体が買ったものです」

物ごとに、わけられており

ある一角には「フラバ」という種類だけ

その一種類だけでもレパートリーは非常に多く

それだけでも数個にわけられている

「輸入はするんですか」

「ええ・・最近は少し」

「そうなるともしかして」

私はそこでフラバの中でも、黄金色に輝くというゴルディーと言う品種をいう

「・・良くご存じで」

男はそう言うと私のいった品種を膨大な鉢の中から引き上げた

それはまだ輸入して間もないのか

それほど大きくはない30センチくらいの中株であったが

しっかりと子供ながらにその色合いを醸し出していた

その一本しか捕獲袋を出していないながらも

私はそれを眺めていた

「好きなのですか」

私はどれくらい見ていたか分からなかったが

そんなことを言われて振り返る

そこで私ははじめて何か食虫植物に、私自身感じる物があるという事に気が付いたのだ


「どうです、サラセニアを見に行きませんか」

私は何時頃からだろうか

土日になると少しづつこの家にくるようになっていた

別に来ても挨拶にくるような男ではない

と言うか話しかけない限り話さないような人間だ

何度も来るうちに

「好きに見てって良いから」

と、自らいちいち挨拶しなくても良いと言うことになったほどだ

私はそんなこんなでそれを見ていた

そのうちにひょんな事で雨ふる日

私は雨が降っているときが付いたときには酷い状態になろうとしていた

「・・・いたんですか」

毎週のように来るようになっていた私にそれはそう言うといえに招き入れた

そこで発覚したのが

奴は極度の引きこもりという事実であった

しかし

それはかなり微妙な線引きともいえる

長いつき合いができない

それが主に引きこもらしている原因なのである

基本外には出る

と言うのもこの家にはかれ一人しか住んでいないので

実質的に買い物には行かないといけない

それならどうやって稼いでいるのか

何でも莫大な遺産があるとかないとか

しかしどちらにしてもこのままではいけないだろう

そんなことを思う反面

この男が喧嘩しうるメンタルを持ち合わせていないように思えた

「まあプリンでも食べて」

それは土鍋に作られたプリンを私に差し出す

なまじ本降りの前だったので

そこまで濡れていない

だからタオルでどうにかなった

「あなた職業は」

「・・・無職ですが」

「どうやって生活を」

「死んだ両親の遺産で」

「・・・いいんですか」

彼は首を傾げて

広いリビングから出ていった

なぜ熱いものではなく冷えたプリンなのかはなはだ疑問であった

私はそのプリンに手をつける前に

気になりリビングから出る

果たして奴はどこに行ったのか

実に無礼だと思わなかったのは

それを許し得る心が奴にはあったように思えたからだ

しばらく辺りを見る

そこまで整理されていないどころか

なにもないような気がした

どこまでも無機質であり

止まったような時間

私はそんななかを歩く

すると廊下の一室に明かりが

そして、キーボードを打つようなおとがした

私はその扉に耳を押し当てた

「・・・・・・・・」

同じような音が不規則に続く

「・・・誰です」

中からそんな声がした

「・・え・・あの」

私はどぎまぎとこたえる

「何かようですか枯れ木さん」

それは私のみよじをよんだ

「・・すいません・・・少し気になったもので」

私は何時までもドア越しのそれにどうも心が落ち着かなくなり

その木のそれを開けた

中は非常に暗かったが

それは時間帯とそして雨の暗さだろう

そのへや一面にあるのは天井近くまであるほんだなと

それに積められた本

そしてその本棚の一番下に開けられたような机で

奴はパソコンを打っている手を止めてこちらを見ていた

「・・何か」

「いえ」

私はその日お礼を言ってその家を出た

なぜかそのとき非常に胸が高鳴っていたのを

私は帰りの電車で驚いていた


家にある物はほとんどがこのように不用意なものだと私は思う

しかしその不要意な物の中に私がいるとも思う

だから人は快楽を求めて自分にない物を求めて

この世のズレを求めてさまよう

私の部屋にある物は

大抵の物は他の家にもあるだろう

その中で私は仕事の文を考えていた

しかしその考えとは裏腹に

そのパソコンに打たれた文字は

今の自分の心情を

観察するような物だった


「果たして私がこの感情を抱いたのは何時だろう

もしかすると抱いてはいなかったのかも知れない何時も

それは生まれてからこの方

私が世に一般的に言う恋と言う存在について

それほどまでに浮かれたことがない

というよりか

韓国ドラマくらいであろう

そう考がえると

今私が抱いているのは

あのときのきゅんきゅうと行う擬音が使われる物なのか

しかしそんな物が現実に存在しているというのが疑わしい

大体私は何時やつのことが好きになったというのだろうか

それ自体が分からない今現在

私は実に困った状況に思われた

・・・・どうする・・」

私はふと時計を見ると午前二時をすぎていた

不味い

不味いがきになるがどちらにしても不味い

私は少しシャワーに浴びると

そのまま布団の中に落ちていった


「こんにちは」

次の日私は会社が終わると

その足で奴の所に来ていた

奴はこの少し時間のずれたときに庭にやってきて植物を観察する

昼間だと人の目に付きやすいとか何とかだと私は思う

「・・こんにちは」

奴は軽く頭を下げてまた植物に目を移した

この空間には最近気が付いたが

食虫植物の他に

キンシナンテン、カンアオイ、などという

いわゆる江戸時代が生んだ奇形種が、少ないながらに置かれ

「あの種類なんて言うのですか」

私はそれに気が付いたとき聞くと

「折鶴筏」と言った

キンシナンテンというのは

いわゆる普通のナンテンとはまったく違った葉っぱを出すもののことをさす

そして今彼が言ったのは

たしかキンシナンテンの番付

即ちお相撲さんのあれをまねて作られた

奇形の偉い順に描かれたものでも

最高位に準ずる物だったと記憶している

しかし値段はその品種と言うだけなら二千円もすれば手に入ったと思う

「好きなんですか」

「ええ・・ものすごく、たぶん彼さえあれば、奇形をこの手にしたと言っても良いくらいです・・・勝手に言っているだけですけど」

そう言うとまた植物に目を背けた

「・・・私も手伝って良いですか」

「いえ良いです」

「・・はや」

「そんなことしてもらうわけには・・それに最近水盤に水を張るようにしたので、水くれをする手間が省けていますし

大体水をくれるにしても、他の人にやらして何かあったらちょっと」

「・・そうですか」

私は夕暮れの中植物を見ている

彼は一通り終わると

「・・・・・あの何か」

ときいてくるので

「いえ」

と私は言う

「・・・そうですか」

彼はそう言うと自分の部屋に玄関を使わずに

窓を開けて中に入る

私もそれに続いた

「・・・・・・」

彼は部屋にはいると

パソコンを付けてから私をみた

「・・・あの何か用が」

それは胡座をかいてこちらをみた

私は正座でそちらを見ている

「・・・どうです今度ムシトリスミレでも見に行きませんか」

私は、ここからに時間ほどでつくムシトリスミレの自生地を見に行かないかと

昨日なぜか調べていた自生地へ行く誘いを言ってみる

「・・・・はあ・・ぜひ・・あっでも・・・しかし」

「・・・」

「やはり止めておきます」

「なぜです」

「・・・いや・・・密漁をしてしまうかと」

「採取との違いは」

「・・・・」

「この世界はいつかは滅びます

そしてその課程で起きたことは

全ては必然なのではないでしょうか」

「・・・僕は捕まりたくはありません・・大体そんな高山性の物はここでは育てられませんし

育てたところで有り難みがなくなります」

「なら採らなければいいではないのですか」

「人間何時なにをするか分かったものではありません」

「・・・・そうですか」

「・・・・・いきましょう」

「・・行くんですか」

「・・止めますか」

かくして予定が流れるように

その約束に効力はあるのか

私はその次の週

彼の家に自転車を持参して現れた

もちろんママチャリではなく

彼に付いていけるように

スポーツ用の奴であり

自転車本体あわせて

諸々で13万円はしたと思う

「こんにちは」

私は彼の言るであろう部屋のガラスをはたく

「・・・・」

「こんにちは」

無言である

何時もここに来ているのは

昼過ぎであり

毎日が何曜日でもない彼のことだ

きっと寝ているのかも知れない

「・・来たんですか」

それは窓ガラスを開けてではなく

玄関から出てきたようで

そしてその格好は

どこかに行くように思われた

背中にはリュックサック

服装は気軽・・と言っても

お洒落感はなく

ただ必要最低限という物

「そんなものまで買ったんですか」

その男は

愛車であろう

KONAのファイヤーマウンテンを横に私にそんなことを言った

「ええ」

私はなににどきどきしているのか分からなかったが

そう言う

「・・・・・・・行きますか・・しかし道が分かりません・・大体あなた体力は」

「・・・走ってますから」

こう見えて全国トレイルランニング大学選手権二位である

「・・そうですか・・なら僕のこと少しは待ってください」

「ええ心配なさらず」

かくして私は自転車をこぎ出した

彼の愛車を前々から知っていたわけではない

しかし自転車に乗ることは知っていたから

自転車をいろいろと調べていた

そこで彼の乗っているメーカーもたまたま見ていたわけだ

ちなみに2012年の青いカラーモデルだ

しかし問題点は

彼のはいているタイヤが

悪路耐用のブロックタイヤのままであり

それから分かることは

ヒネクレているという事だろう

「気にせず行ってください」

道が分からないと言うのにそんなことを言う

基本的に自転車の種類が違う事による最大の利点は

疲れるか疲れないかにある

同じ二百キロでも


ロードという細いタイヤの自転車は長い距離でも疲れないが

マウンテンバイクという悪路耐用のものでは格段なさが出る

しかし

スピードにかんしてはそれほどまでの差はないだろう

ただつかれるだけではある

旅は道ずれと言うが

今回に限って

私は一体なにを巻き添えにしたのだろう

私たちは、二時間ほどでつく

そのやまに向かっていた

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