手紙。ザン・キルム
みなへ。
手紙を書く……。言葉を書くのには慣れていると思うのだが、今はあまり良い文は書けそうにない。許してくれ。
それに関しては理由がある。
どうも、俺はこの数週間眠りつづけていたらしい。目が覚めたら見知らぬ場所だった。誰かが俺を助けたらしい。片隅には手紙が置いてあり。
『貴方様は道で、傷だらけで倒れられていました。
私が出来るのは、貴方様を安全な場所へ連れて行くことくらいです。
貴方様がいつ目覚めるかは分かりません。けれど、私は見届けることはできないでしょう。
もし、目を覚ます事が出来たなら。貴方様のために用意した食事を食べてください。
それともう一つ。貴方様にとって役立つであろう物も用意しておきました。
それでは。私は去ります。あなたが、目覚める事を祈って』
……。まあ、感謝しなくてはならないか。
目覚めてから一日は過ぎただろう。だが、俺が倒れた前までの事が思い出せない。
何故傷だらけなのか? 何故倒れていたのか? ……。駄目だ。思い出せそうにない。
そもそも、俺を助けたこの手紙の主は誰なのだ。今はどこにいるのだ? 考えなくてはいけない事が多すぎておかしくなりそうだ。
誰かに助けを求めるにも、俺は一人だ。こんな時に、みながいてくれれば……。
そういえば、役立つものがあるといっていた。辺りを見渡すと、テーブルの上に一枚の紙が
置いてあった。
それは地図だった。どうやら、子供の国。という国への地図らしい。しかも、ご丁寧に五枚ずつ用意されていた。折角なので、手紙と一緒にしよう。
子供の国……。今、自らがどこに居るかすら定かではない中で、この地図はどのくらい役に立つのだろう。まあ、貰えるものは貰っておこう。
まだまだ書き始めだが、そろそろ限界が近づいてきたようだ。
数週間眠りつづけていたとはいえ。全身の傷が完全に癒えている訳ではないようで、未だに体はボロボロだ。
それに、頭の調子もあまりよくない。眠り過ぎで、脳みそが駄目になったのかもしれない。
どのくらいになるかは分からないが、俺は子供の国へ行く事にする。手紙の主がわざわざ置いていったということは。この国に何かがあるのだろう。
それでは、また、子供の国であおう。
さよなら。
ザン・キルム