喰の国。
喰の国 セツロ・ラーシー
ええ。こんなものを書くのはとても面倒で反吐が出ます。けれどこうして書き続けているんだから、自分に対しての疑問と不満を持ってしまいます。
本当ならゆるゆると心地のいい野原なんかでサンドイッチをぱくぱくしていたいのに、今はこの薄汚く、男臭いこの場所で肉の塊にかぶりついているのだから本当に現実と言うのは非情なもの……。
これでも私は乙女なのよ? なんて言っても、周りの男共は一心不乱に肉を口に放り込んでいるのだから、涙の一つでも流したくなる。
なんでここにいるのよ! というかここはどこよ! というのはほんの数十分前の私の気持ちだ。そう。あの時引き返せばこんな事にはならなかったはず……。
なんでここにいるのよ! というかここはどこよ! その疑問に答えるものなどいない。
知りたければ自ら行けとでも言っているのだろうか? ええ。そっちがその気ならいいわ。
行ってやろうじゃないの!
喰の国なんて言う男臭いネーミングは嫌いだけどそこには目をつぶる。けれど、この国は、国と言えないわね。所狭しと屋台とも言えないような不衛生な机と椅子だけがあるような場所が山のように溢れかえっている。
その数と比例するようにいかにも近接戦闘を得意としてそうな男共が騒いでいる。
そんな光景を目の当たりにしてテンションが上がる程私は腐った神経はしていない。
けれど、料理に関しては悪くないようで、どこからともなく肉を焼く良い香りがしてきた。
見た目が最悪で近づくことすら嫌でも、私の腹の虫は正直者。ぐーなんて乙女にあるまじき音だわ……。
気付けば、私は薄汚い椅子の上に座っていました。そして目の前に置かれた肉の塊にかぶりついて……。と、今の状態である。
色々と考える事はあるけど。今はこうして肉を貪り食う事に必死なので、満腹になってからにしよう。
にしても、この肉変わった味だわ。今まで食べた事のない味。
折角だから、隣に座っている比較的話の通じそうな男性に聞いてみることにした。
「ちょっとすいません。このお肉はなんのお肉なの?」
「ああ? これは死んだ人間の肉さ。良い感じに腐っていて美味いだろ?」
「え、ええ、そうですね」
……。ま、いいか。
美味しい肉を食べて私は満足です。
例えそれが人間だろうと関係ない。口に入れてしまえば何も同じよ。