手紙。 クスザラ・ベルマ
みな様へ。
お元気にしていますでしょうか? 私はとても気分が悪いです。今、こうして万年筆を走らせている瞬間でさえ酷い吐き気とめまいに襲われています。
理由は、あまり言いたくないですが、それを書かねば内容の中心がスッポリと抜けてしまいますので書きます。
ついさっきです。数十分前。私は塵の国へ行きました。何故あんな場所に行ったのかは分かりません。自分で決めたきもするのですが、どうも記憶が曖昧なのです。
まあ、そのへんの事は置いときましょう。とにかく、私は塵の国へ行きました。
そこは、腐りきった死体と白骨のオンパレードのチョモランマでした。この時点で私はここに来た事を深く後悔しました。しかし、何もしないで帰るのもどうかと思う。
そもそも何故ここに来たのかすらハッキリしない、目的すら分からない中で何をしろと?
けれど行ってしまったのは、私が好奇心に負けたからでしょう。
死体を踏むと言うのは、あまり良いものではありません。
グチャリと嫌な感触が足に伝わります。骨のカラコロと言う音にさえ腹が立ってしまいます。
死体と骨しか無い場所で、私は人間を見つけました。まあ、人間だと確信できた理由は。
そいつが二足歩行だったから。という理由だけです。見た目はただの老いた乞食でした。
もう限界を超えています。この気持ちをみな様と共有したい。私だけこんな思いをするのは
とてもしゃくです。
このまま乞食を放っておいて帰ってもなんら問題はありませんでした。けれど、私は何を
血迷ったのでしょう。乞食に話しかけた。思い返しても意味が分かりません。多分、死体から漂う強烈な腐敗臭で一種の催眠状態にでも陥ったのでしょう。そうとしか考えられない。
乞食は訳の分からない哲学的な事を言っていました。内容は九割程忘れてしまいました。
確か、ここは全てを終えた者が来る場所。なんて事を言っていた気がします。
乞食と少し話をしてから、私はこの国を後にしました。
そういえば。あそこ、国と名乗るにしてはかなり小さかったです。大きな建築物程度の大き
さでした。あれを国と呼ぶのは他の国に失礼ですね。
文字に起こしてみると、本当に何をしに行ったのだと言う感じです。けれど、元々目的など無いのですから、これが当たり前なのでしょう。何か収穫があったかと言えば、見るに堪えない物への耐性が出来たことくらいでしょう。何の役にも立ちません。
そろそろ、この手紙も終わろうと思います。あまり長く書いてもつまらなくなるだけです。
みな様はどこにいるのでしょう? そんな事を考えながら、私はまた歩き出します。
今度は、もう少し綺麗な場所がいいですね。それでは、御機嫌よう……。
クスザラ・ベルマ