ドライブマン
どういう訳か、ボーリングのスピンにしろ、卓球のドライブにしろ、
フィニッシュが耳元で終わる形になる。
今流行の体幹を使っているからにしても、昔からスポーツでは体幹を使っていた。
重要性がここにきて着目されてきたのかは不明だ。
全てドライブで返すしか能がない俺はドライブマンだ。
そうはいっても俺は幽霊部員で試合にでたことがない。
温泉で、ゲーセンで、彼女と、大人気ない卓球をすることをこよなく愛したい。
でも、できない。
勝負に勝つことより大事なことがあるんだ。
楽しい時間を過ごすこともそうだけど。
喧嘩にならないようにすること。
その為には、ドライブを封印しなければならない。
今、彼女と体育館で卓球をしている。
程よく負けている俺に上機嫌の彼女。ふふふとほくそ笑んでいる。
腕を組んだ。
「私の方が強い」
「いいよ、サーブ打って」
忘れてはいけない。俺はドライブマンだ。半身をひねってタイミングを取る。
僕の右腕が耳の辺りに行く瞬間、コースと狙ったピンポンが這うように跳ねる。
「そんなん取れるわけないやろーが!!」と怒られる。
シェイクハンドのラケットが俺の顔めがけて飛んでくるのを横にすっと、
すっとよける。
俺はそれを拾ってあげる。