その八
「大魔王がお手上げって時点で関わりたくないんですがね。とりあえず、話戻しましょうや」
慶一郎は仕切り直しの一言を口にした。
「ん。ぶっちゃけるとさ、あのリングラスハイムの最下層に封じられていたの、僕の母さんの神話時代の肉体でね」
昨日のおかずの献立を語るぐらいの気軽さで、イアカーンは厄介極まりない事実を言ってのけた。
「……今、とんでもない発言が飛び出した様な?」
顔を引きつらせながら、慶一郎はイアカーンを見る。
「ああ。それ自体は関係ないんだ。まだ父さんが人間だった頃に回収したからね。今の話には直接は関係ない。最下層は管理者権限がないと入り込めないという事実の裏付けになる話をする為に教えただけだから。ちなみに、今はとある混沌に落ちた神が封じられているんだけど、知りたいかい?」
何事もなかったかの様に、淡々とイアカーンは言った。
「滅相も無い!」
慶一郎は即答する。「知ったら碌な目に遭わない予感しかしませんぜ?」
「当たり。御陰で、僕は貧乏籤を引いている。今のリングラスハイムの迷宮管理者、僕だから」
慶一郎の即答に対し、イアカーンは苦笑を以て返事とする。
「……又知りたくないことを知ってしまった様な……」
心底嫌そうな表情で、慶一郎は肩を落とした。
「諦めてくれ。今回の件を話すには、ここが最低必要条件だから」
真顔でイアカーンは言う。「リングラスハイムが富を吐き出す装置であり、上手く活用すれば独立出来るというのは想像付くだろう?」
「ああ、そこで一統派が関わるんですね」
慶一郎は得心する。