その六
そこで、初代互助組合長である雷文公は死番制度を設立した。
リングラスハイム迷宮に挑戦する冒険者一同に、満月の二日前までに迷宮からの離脱を義務付け、満月直後に持ち回りで最初の【門】がいずれの区画に繋がっているかを調べてくると言う任務を与えたのである。当然、帰って来られない可能性がある初心者は免除されるが、それ以外の者が死番を断る場合、莫大な違約金を払うことが取り決められたいた。
しかし、リングラスハイムで効率よく儲けるには、再構築後に一番乗りをし、死なない程度に宝を集めてくる必要がある。当然、怪物も再召喚されている為危険は高いが、見返りも大きい。力量から見て適正の区画に入り込んだ場合、報告に戻らずにそのまま荒稼ぎをすれば、一夜にして億万長者にも成れた。
ただし、それは冒険者の理屈である。冒険者互助組合側としては何処に繋がっているかの報告が無ければ安全は確保出来ない為に、報告期限を三日以内、報告後二日間は死番で探ってきた探索隊の占有期間とする褒賞を与えることとした。これにより死番を上手く利用し、巨万の富を得るものが現れる様になった。
危険を取るか、儲ける機会を得るか、そこら辺の人間心理を上手く使った雷文公の手腕と言えた。
「まあ、雷刃小父さんは、そこら辺、本当に厳しいですからねえ。扶桑に居る時、かなりの分限者だった筈なのに、西中原に流れ着く頃には無一文ですからねえ。そこから、再び世界で並ぶ者無き分限者に返り咲いたんですから、あの人は本当に金回りの良い人ですよ。リングラスハイムを始め、各地の迷宮で儲けたんですからねえ」
中半呆れ顔でイアカーンは首を傾げた。
「初代様はどれだけ無茶していたんですか?」
興味深そうに、慶一郎は尋ねる。
「あー、所謂探索仲間がですね、僕の父親と母親が居る時点で察して欲しいんですよ」
目を逸らしながら、イアカーンは言った。