その弐拾壱
「その点、東大公家が本気を出しても他の勢力を刺激しない、と?」
イアカーンの言葉の裏側にある意味を酌み取り、慶一郎は言った。
「御存知の通り、神話の時代に父上と母上が世界に対して一度喧嘩を盛大に売っている訳でしてねえ。あの人達が動いたり、何かをやらかすと敵であれ味方であれ身構えるんですよねえ。その緊張感と疑心暗鬼が最終戦争を呼び起こす。父上の完璧なる計算に寄ればそうなるらしいですよ?」
お手上げとばかりにイアカーンは肩を竦めた。
「イアカーンの旦那が動くと問題になるってのは?」
「そっち側の世間一般から見ると、僕は父上と母上の手先なので。痛くもない腹を疑われるんですよ」
肩を竦めてイアカーンは言った。
「ああ」
慶一郎は納得する。「確かに、旦那が独自の認識で動いているって思いにくいですからねえ」
「困った事にねえ。基本、母上の務めを代理している訳ですからねえ。そりゃ、疑われもしますよ」
イアカーンは苦笑した。
「すると、冒険者互助組合って旦那の隠れ蓑でもある、と?」
「結果的には。本来は父上と雷刃小父さんの隠れ蓑だったんですけどね。いつの間にか僕の隠れ蓑になっていますね」
苦笑しながらイアカーンは言う。
「互助組合って、結局何の為に作られたんです?」
聞けば聞く程謎が溜まっていく現状を確認する為に、慶一郎は尋ね直した。
「さあ? 本当のところは父上に聞いても、雷刃小父さんに聞いても話がてんでばらばらで分からないんですよねえ。まあ、推測は出来るんですけどねえ」
困った表情を浮かべ、イアカーンは虚空を眺めた。




