その壱拾八
「初代様は、邪龍王対策の為に東大公家を作った、と?」
嫌々ながらも、慶一郎は現状を確認する。
「またしても、半分当たりで、半分外れ。東大公家はパルジヴァル陛下の純粋な好意の表れ。あの方も雷刃小父さん大好きだったからねえ。悪い遊びはオートアン小父さんと雷刃小父さんの二人から教わった口だし。それに、扶桑人には皇位継承戦役でお世話になりっぱなしだったという負い目もある。その感謝の念を示す為に、大公位を授けたと見るべきだねえ」
埋もれてしまった歴史の一幕をイアカーンは教えた。
「すると、東大公家が出来たから事のついでに魔王退治の集団にしてしまおうと思った、と?」
とても嫌そうな表情で慶一郎は問い返した。
「大体当たり。より正確に云えば、自主的に魔王を退治しようとする気概を持った兵法者が育ちやすい土壌を作る、かな?」
「それは何となく分かりますね。俺も然ういう風土で育ったんですから」
イアカーンの説明に慶一郎は納得した。
「君の家は特にそうだろうねえ。雷刃小父さんと邪龍王の闘いを見届けたの、父さんと君の御先祖様って話だから。まあ、君の御先祖様はちゃんと食事と睡眠は取っていたそうだが」
うんうんと強く頷きながら、イアカーンは感慨深そうに告げる。
「普通の人間は三日三晩飲まず食わずで何かを打っ通していたら、三途の川まで辿り着いていますよ」
「まあ、死にはしないだろうが、ほっとけば死ぬだろうねえ」
イアカーンは大したことないとばかりに言い切る。「宗一郎さんなら二三日静養したら元通りだっただろうけど」




