その壱拾四
「そのまさかさ。腐っても六大魔王。雷刃小父さんが止められず、止めを刺された場合、単独で六大魔王に勝てる存在が居なくなる。僕にしろアルヴィース小父さんにしろ、そうそう現世に対して干渉出来るわけじゃ無い。誰にも手が付けられなくなったら、流石にどうにもならないよ」
お手上げとばかりに、イアカーンは天を仰いだ。
「東大公家が、現世守護の急先鋒というのは、それなりに意味がある、と?」
何か考えを纏めるかのように、思いついたことを慶一郎は言った。
「それなりどころか、御世辞抜きで人類の守護者ですよ? 西中原は法と混沌との闘いの最前線ですからね。ここを人類側が抑えているのは大きな意味を持つ。逆に、どっちかに傾けば、その時点で人類種が滅びる可能性が大きくなります」
イアカーンは指を鳴らすと、世界地図を空に描き、分かり易く色付けをして説明をする。
「……それを知っているのは上様ぐらいですか?」
唸り声を上げながら、イアカーンが魔導で創り出した世界地図を慶一郎は凝視した。
「いえ、違いますよ。【旗幟八流】とはそれを守る為に作られた役職。当主ならば知っているはずですよ」
なんで知らないんだろうと言った表情を浮かべ、イアカーンは応える。「御存知ありませんでしたか?」
「知った上であの乱行だと?! クソッ、爺は殺しておくべきだった!」
慶一郎は悔恨の情を隠さずぶちまけた。
「まあ、そう云ってやりなさんな。彼らの云い分も又正しいのですから。些か皮肉ですがね」
イアカーンは溜息交じりに言う。「東大公家が世界を守る為に魔王や法の手先たる御使いをいくら討とうとも、西中原が荒れている限り、然程意味を成さないのは確かですからね」




