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その壱拾弐

「んー、僕が知る限り、扶桑人てそんな感じだよ。自分達同士だとどうもそこら辺の評価が低いけど、僕なんか生まれた頃から付き合い深いから、よく見ているしね。まあ、扶桑人が云々(うんぬん)と云うより、竜の因子が強い所為で、竜の習性が出ているだけかも知れないけど」

 イアカーンは常々思っている事を言ってのけた。

「そうは思えないんですけどねえ。まあ、今の時代、乱世ではしゃいでいる連中が多いから俺はそう見えるだけかも知れませんが」

 褒め殺しを受けた事を気が付いた時の様に、慶一郎はばつが悪い笑顔を浮かべた。

「かも知れないね。僕にとっての扶桑人の典型例って、兵四郎だしなあ」

 イアカーンは肩を竦めて苦笑する。

「そりゃ無いですよ、流石に」

 慶一郎は閉口する。「先生は俺から見ても奇人ですぜ?」

「でも、扶桑人にとって一番大切な魂は彼が持っているモノだろうね。雷刃小父さんの知り合いはみんなあんな人たちばかりだったし、もうそろそろ千年近く生きることになるけど、ここ一番で頼りになる扶桑人はみんな兵四郎みたいな連中だったよ。だから、僕は扶桑人が大好きなのさ。だから、手助けしたくなる」

 我が事のようにイアカーンは鼻高々と自慢した。

「過大評価もここまで来ると有り難すぎて、怖いですよ?」

 何とも言えない表情を浮かべ、慶一郎は呟いた。

 顎に手を当て考え込みながら、

「これは僕の個人的感情だから問題ないよ。南大公家の総意では無い。まあ、兄さんもなんやかんや云って扶桑人好きだから、今の南大公家に影響ないかと云えば、難しいけど」

 イアカーンはそう言った。

「同盟関係が崩れないって云う話なら問題ないです。それ以上は、仁兵衛に通して下さい。もう、俺はお腹いっぱいで、逃げ出したいです。俺は唯の武官です」

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