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大人の為の子供相談室

大人の為の子供相談室 海

作者: 栖坂月

ここまでで半分です。

タケジー:さぁ今回も始まりました『大人の為の子供相談室』第六回となります(ぱんぱかぱーん)

ミカリン:やっと折り返しかー。

タケジー:長かったような短かったような、一瞬のようにも感じますし、初回が遥か昔のことのようにも思えますね。ミカリンはどうです?

ミカリン:一つ一つ挙げればキリがないけど、毎回思うのは――

タケジー:思うのは?

ミカリン:早く帰ってゲームしたい(ぶっぶー)

タケジー:皆さんはこんな大人にならないよう気を付けてくださいね。

ミカリン:そうだな、社会の冷たい眼差しに耐える覚悟がない者には勤まらぬ仕事だよ、自宅警備員は。

タケジー:いや、職業にしないでください。そんなことより本題に入りますよ。今回のお葉書はタクシーさん(?4歳)からいただきました。えーと……「海を見ると左手の古傷が疼いて仕方ありません。早く逃れたいと思いつつ、いざ離れてみると刺激に満ちていたあの頃、海面を漂っていたあの子との出会いがなければ、今の私はなかったでしょう。ところで海の水は何であんなにしょっぱいんでしょうか。教えてちょんまげ」……随分と長い前フリでしたけど、海が塩辛い理由が聞きたい、で良いんですよね?

ミカリン:ちょんまげとか言っちゃう人は三十代以上確定じゃないの?

タケジー:そんなことありません。私も良く使います(えぇ~)

ミカリン:あー、タケちゃんのセンスって一回りくらいずれてるもんね。

タケジー:人をオッサンみたいに言わないでください。そんなことよりどうですか、今回のテーマは?

ミカリン:そうね……一つだけハッキリしていることがあるかな。

タケジー:それは何です?

ミカリン:ネタに困ったのね。これといった大きな特徴もなく、海の日があるから海でいいだろという実に安直な思考が見え隠れしているわっ!

タケジー:そそ、そういうことはあまり大きな声で言わないでください! というか音響さん、こういう時こそピーとか鳴らして仕事してくださいよ!

ミカリン:(ぴー)だから仕方ない。

タケジー:遅いですよっ。というか何でもないところで入れたら卑猥な感じになっちゃったじゃないですかー!

ミカリン:面白いからいいじゃない。それとも何、(ぴー)な(ぴー)を延々と(ぴー)るような(ぴー)がお望みなの?

タケジー:やめてっ、もうやめて!

ミカリン:はいはい、音響さんそこまでにしときましょ。このままだとただでさえ危うい感じのタケちゃんの生え際が、ストレスで砂漠化進行しちゃうから。

タケジー:余計なお世話ですよっ。というか危うくなんかないですからね。誤解を招くようなこと言わないでください!

ミカリン:うんまぁ、認めたくないってのは理解できる。

タケジー:だーかーらー。

ミカリン:で、何だっけ?

タケジー:……海です。海がシオカライ理由ですっ。

ミカリン:あーそうだったね。とりあえずタケちゃんはどうなの? もし親戚のガキにそんな質問されたら、半分キレ気味に何て答えるつもり?

タケジー:いや別にキレる理由がないんですけど……そうですねぇ、やっぱり無難に石臼の話が妥当なんじゃないかと。

ミカリン:あー、あの船ごと沈んだ話ね。

タケジー:やはり童話ですし、本という形で残っているのも良いですよね。大人になっても、何となく信じてみたいと思えますし。

ミカリン:ダメねー、タケちゃん。今時の子供は、そんな安い話じゃ釣られてくれないよ?

タケジー:確かに現実的な回答じゃないのは認めますけど、夢があって良いじゃないですか。

ミカリン:わかってないなー、タケちゃん。女子中学生に「キモーイ、石臼とか小学生までだよねー」とか言われたいの?

タケジー:いや、意味がわかりません。

ミカリン:もっとこう、エキサイティングでドラマティックでコミカルな理由じゃなければ、今時の子供は眉一つ動かさないんだから。

タケジー:何ですか、その子供は。目茶苦茶怖いんですけど。

ミカリン:人類の進化の賜物ね。

タケジー:そんな進化は断然却下です。

ミカリン:そもそもさー、塩が溶けてるからっていう発想自体がダメでしょ。正しい正しくない以前に安直過ぎる。

タケジー:でも、実際そうでしょう? 塩が溶けているからこそ塩辛いっていうのは、動かしようのない事実じゃないですか。確かに石臼というアイテムは突拍子もないように聞こえますけど、今でも塩を吐き続けている何かがあるかもっていうのは、ロマンがあって面白いと思いますし。

ミカリン:さすがに昭和生まれは発想がセピア色ね。

タケジー:いや、ミカリンだって大差ないんじゃ――

ミカリン:違いますー。私はギリ平成生まれですー。

タケジー:ではその平成生まれのミカリンは、塩が溶けているという発想をどうやって否定するんですか?

ミカリン:否定するっていうか、だってそれ事実じゃないもの。

タケジー:は? え、いや、どういうことです?

ミカリン:そもそも塩が流れ込んで海がしょっぱくなったっていうなら、その大量の塩はどこからやってきたの? 誰かが投げ入れたの? 空から突然降ってきたの? 不思議な石臼があったとでも言うの?

タケジー:いや、石臼はなかったでしょうけど、山から溶け出した塩分が海に流れ込んで、とか?

ミカリン:あらおかしい。岩塩というのは隔離された海や塩湖の蒸発によって生まれるものなんだけど、その為には元々海がしょっぱくないといけないんじゃないの?

タケジー:え、いや……そうですね。確かにちょっとおかしいか。

ミカリン:悩んでる悩んでる(ぷぷぷ)

タケジー:……お手上げです。

ミカリン:素直でよろしい。じゃあ聞くけど、塩ってどういう物質?

タケジー:どういうって、しょっぱくて人間に欠かせないもの、ですよね。

ミカリン:そういうことじゃなくてさ、私が聞いてるのは化学式のこと。

タケジー:化学式って……えーと、NaClとかですか?

ミカリン:そうそれ。つまり塩ってのは塩化ナトリウムのことね。ところでタケちゃん、海が初めて生まれた瞬間、しょっぱかったと思う?

タケジー:それは……しょっぱくないと思います。ただの水溜りでしょうから。

ミカリン:その通り、雨に海水のような塩分はない。つまり淡水だった。でもねー、雨も純粋な真水というワケではないの。空気中の成分が溶け込んでいる。

タケジー:そういえば、雨は弱酸性だって、どこかで読んだ気がします。

ミカリン:それは二酸化炭素が溶け込んでるからね。でも海が生まれたばかりの頃は、もっと雨に溶け込みやすい物質が空気中にあったのよ。

タケジー:それは?

ミカリン:塩素よ。そしてそれが、同じように溶け込んだ様々な鉱物と結びつき、海になったの。ここまで言えば、もうわかるでしょ?

タケジー:つまり、それぞれに溶け込んだ塩素とナトリウムが結びついて塩になったと、そういうことですか。

ミカリン:端的に言っちゃうと、海がしょっぱいのは偶然ね。ナトリウムの含有量が少なかったり、塩素ガス以外がより多く溶け込んでいれば、味は変わってたと思う。

タケジー:うーん……だけど結局、塩が溶け込んでいるからしょっぱいっていうのは、別に間違っていないんじゃないですか?

ミカリン:全然違うでしょ。塩が有って海ができたんじゃないの。海で塩が生まれたのよ。まるで海というバカンスに引かれるアホが出会って新しい命が生まれるようにね!

タケジー:いや、上手いこと言えてませんよっ?

ミカリン:まさか、海が出会いの場となったのにそんな理由があったとはぁ!

タケジー:いやいや、そんな理由じゃないですからっ!

ミカリン:そういえば、アンタの彼女って海でナンパしたらしいじゃないの。

タケジー:だだ、誰からその話をっ?

ミカリン:彼女も災難よね、こんなしょっぱい彼氏なんてさ。

タケジー:しょっぱくないよ!


あと半分、頑張りたいものだなー。

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― 新着の感想 ―
[一言] おひさしぶり(?)でございます。 石臼とか懐かしいですね。物語の内容は忘れましたが。 面白く、ためになるお話でした。
[一言] 拝読致しました。 最後はミカリンが最終形態に変化してのマジ解答、恐れ入谷の鬼子母神ですね。 なかなか勉強になるシリーズだなと思いました。 そしてついでに折り返し発言で「あれ、一つお気に…
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