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ぱちっと目を開けると、少し離れた正面に金髪の男の子がいた。
「おい!なんとか言ったらどうだ、マリース・ハーマン!この、権力を笠に着た高慢女め!」
大声で怒鳴られてびくっと体が硬直した。条件反射で口に手を当て……と思ったら唇に当たったのは、何これ?ん?扇子……扇子?
「俺がこんな風に強く言えば、お前はその二倍三倍の大声で罵倒する!もうその繰り返しにはうんざりだ!お前がダマヤを虐げた証拠なぞ山ほどあるぞ、そんな性格の悪い女が俺の婚約者など務まるはずもない。婚約破棄だ!」
ざわりと周りが揺れる。え、周り?デスクもないぴかぴかの床?
「コワイ、こっちを睨んでますっ、ユン様ぁ」
「大丈夫だ、ダマヤ。俺がいる」
金髪の男の子が、横にいる派手なピンク髪の小柄な女子を抱きしめる。何その綺麗なドレス。素敵。
「さあミカエル!この傲慢女に証拠を突きつけてやれ!」
そして後ろにいる青い髪の男の子を振り返った。青い髪の子はずいぶんと青い顔色で、やせ気味の肩を揺らして前に出る。
と、私は磨き上げられた床にうっすら映る自分に気づいた。
透き通るような白い肌、糸のように輝く銀色の長い髪。吊り上がった目尻に炎に似た揺れる瞳。薄い唇には酷薄な笑みがいつも……あれ。マリース。マリースじゃない。どうしたのあなた。
あれ、私もドレス?え、なんで。これ何。いま、私、会社にいて、……あれ、違うな?んん?マリース、マリースって、私?
「……マリース嬢。ではこの証拠に対しての反論がありましたら、」
「あのっ」
あ、ごめんねごめんね。青い髪に青い目の男の子の言葉をさえぎってしまった。慌てて扇子を指替わりに、ごめんと顔の前に立てる。
青い子は目を丸くして、ぽかんと口を開けた。顔色悪いな。ご、ごめんね。でもね、あのね、わ
「うるさいっ!お前が何を言おうと、婚約破棄だああっ!!」
金髪くんの叫びにびくーんと肩が揺れた。もう反射だ、どうしようもない。パワハラ上司に大声で詰められ続けた私の体は、怒鳴られたら反射でこうなっちゃう。
金髪くんはおまけに、「どんっ」と床を革靴で蹴った。
「……ふえ」
限界まで我慢していたのに、情けない声が出てしまう。そのままぽろり、と最初のしずくが落ちたら、もうだめだ。
「……う、ぐす、ううっ……」
ぼろぼろと泣き出した私は、扇子を両手でぎゅっと握ってぺこりと頭を下げた。
「……そちらの件は承知いたしました、し、失礼、ぐす、しましゅ」
「は」
金髪くんの間の抜けたような声が聞こえるが、にじんだ視界にもうその姿は見えない。私はくるりと背を向けて、目線で出口を探した。
「ぐしゅ、うっく、あ、ずみま、ぜん、道を開けて、あ、どうも」
いつのまにか、周りはしんと静まり返っている。
広い広いきらびやかな王宮ホールは私が泣きながら歩くたびに人垣が割れ、自然に出口へと導いてくれた。すみませんはい、前を通りますよ。
ぐしゅぐしゅと鼻を鳴らしながらホールを出て、赤い絨毯を進んで内柱の玄関をくぐる。そこまで歩いてくると、混乱した頭ながらも記憶やもろもろの状況が濁流のように注ぎ込まれ、ようやく自分の今の姿の意味がわかった。
「……マリースう、私、マリースになっちゃったよ……」
そしてマリースは私になったのだ。異世界の平凡な、情けない私に。
とにかく、家に帰ろう。帰って整理しよう。色々と。
控えている王宮兵士や侍女たちが驚きで停止している間を目を擦りつつ抜けて、ようやく車止めが見えた。ひやりとした外気に頬を撫でられて涙が引っ込む。
「あの、マリース嬢」
侯爵家の馬車を呼び出してもらおうとする背中に、苦しそうな声がかかった。
振り返るとさっきの青い髪の男の子。走って来たのか、額にかかる横髪が乱れて青い目がきらきらしている。白い頬にわずかに赤みがさしていた。
「あの、ま、マリース嬢、大丈夫ですか。突然どうし……いやその前に擦ってはいけません。目元が真っ赤だ」
綺麗なハンカチを差し出されて、お礼を言って受け取る。肌触りの良いそれを目に当てると、涙が心地よく吸い取られた。
「ありがとうございましゅ。ハンカチ、新しいのを買ってお返ししますね」
「は、いや、あの、え?」
呆然としている彼を見上げてハンカチを握りしめた。
「ではさようなら。ドンタルト公爵ご子息ミカエル様」
馬車が背後に滑り込んでくる。
迎え出たマリースの侍女と護衛が大慌てで私を囲み、馬車に押し込まれる直前。私は振り返って言った。
「ミカエル様、ちゃんと寝てくださいね。成長期の子は寝なきゃだめです」
動き出す瞬間に小窓から見た彼の顔はあまりにも呆けていて、私は鼻をすすりながらちょっと笑ってしまった。
私とマリースは、十年前から夢の中で会う知り合いだった。
いやおかしなこと言っている自覚はある。でもそうとしか説明のしようがない。
十年間、夢の中で会って、暇に飽かして一晩中おしゃべりしていた。毎晩。すごいでしょう?一晩中を毎晩。
私は学生の頃にマリースと出会って、卒業して就職して、パワハラ上司に心と体を壊されて退職届を出す寸前まで。マリースは7歳の頃夢の中で異世界の変な女と出会い、貴族の通う学園に入学して17歳になり。その間私たちは、ずっとしゃべり続けた。
夜から朝まで息つく間もないおしゃべりを十年間、そりゃあお互いのことは詳しくなる。お互いの世界の文化や歴史、マナーはもちろん、周囲の人の名前や性格や人間関係、性癖まで。私、マリースのお父さんの好きなお酒を定期的に届けに来る卸しの配達屋さんの奥さんの実家の庭に咲いている花まで知ってるわ。もう詳しいのレベルを超えてる。
十年、語り尽くして知り尽くして、そうして私たちは、お互いの世界のことをすみずみまで覚えた。
「マリース」
「なあに」
夜の闇にふたりきり。唯一息のつける場所で、疲弊した体が沼に落ちるように沈む。
お互いの肩に寄りかかり合って、お互いの息遣いまで感じる距離で手をつないで、お互いの声だけを聴き語り合う。ここだけが私の大切な場所で、マリースにとてもそうだったらいいななんて思っていた。マリース、そういうこと言う性格じゃないけど。
十年たっていた。
十年たったいまの私は。
気弱で相手に気を遣い過ぎて、そしてパワハラで追い詰められて、限界寸前だった。ご飯も喉を通らず眠れず、心身の疲労で命が削られているのが自分でも感じられた。ちなみにマリースも自身に危機が迫っていた。「色々やらかして」その証拠を握られ、婚約破棄の上に国外追放寸前だって。邸からも追い出されるって。
え?よくある冤罪の乙女ゲームのざまあ?と聞いたら、
「いえ?ほんとにあれこれやったから冤罪ではないわよ?」
と言っていた。マリース、ほんとあなた、マリース。
「今日も泣いたの?どんどん痩せてきてるわ」
「うん」
「目の下が真っ黒ね」
心が壊れてしまった私は涙腺も壊れたらしく、大声を浴びると勝手に涙が出てしまう。それを上司は疎み、さらに罵ってくる。
マリースに言わせると、マリースの世界で涙を見せるのは、赤ん坊のみ。それも産まれた直後、一瞬の時期らしい。大人は泣かないそう。絶対に泣かないと。
そう、マリースの世界。
私の世界から見ると、異世界。もちろんマリースから見たらこちらが異世界。
文化、歴史、科学技術に医療技術、陸路に海路に貿易に戦争に和平に人口人種常識非常識……私たちは、3万時間を超える夜の中で、無我夢中でお互いの世界を語り想像した。比較して並べて、驚愕して爆笑して悲嘆して、そしてふたつの世界のすべてを味わったのだ。
しかしそのいくつもの差異の中、どうしてもお互いが理解できないことがあった。
それが、「泣く」である。
「わたくしの世界ではね、泣くのは生まれた直後の赤ん坊だけなの。少しでも成長し、言葉が理解できるようになると……いえ、言葉は理解できなくても、もう泣かなくなるわ」
マリースの説明に私は首を傾げる。
「それは、『泣いたらダメ』ということ?それとも『泣けなくなる』という意味かしら」
マナー、儀礼的な問題で、「泣く」を禁止されるということだろうか。
それとも、身体的な問題で、そもそも「泣く」ことが不可能である、ということ?
私の質問に、マリースはうーんと唸って沈黙する。これは珍しいことだ。マリースはいつでもどこでもきっぱりはっきり一刀両断。悩み考えることがまず少ない。
「うーん……うーん。難しいわね。身に沁みついている、疑ったことも考えたこともない「世の常識」を、言葉で説明するのがこんなに困難だとは……恐るべし異世界交流だこと」
マリースは輝く糸のような銀色の髪を肩から払って、宝石に似た朱い目を細める。
「……儀礼的問題ではないわ。例え公衆の面前で成人が泣いたとしても、それが罪になることはないもの。でも、過去に公衆の面前で泣いた成人は皆無、という事実もあるわ」
「じゃあ罪になるかならないかも実例すらないじゃない」
「まあそうだけど。でも法典にも条例にも泣くことが罪なんて記載ないもの。泣く人がいないから法にない。泣くのはマナー違反でも法令違反でも犯罪でもないわ、ただ誰も泣かない」
……わ、わからない。混乱する私に、マリースは続ける。
「そして、身体的問題でもないわ。異世界と言っても、人間の体の機能は同じだと思うわ。この十年間あなたの話を聞いていて、体内臓器や精神構造が異なると感じたことないもの。わたくしの世界の赤ん坊ではない成人だって、普通に泣けるはず。でも、絶対に泣かない。涙が出ないの」
「ま、マリースも?涙は出ない?」
「まったく。出る気配もないわ。出し方がわからないとも言えるわね、泣くという感覚が想像できない」
「へ、へえ……」
私はとにかく口を開けて呆けるしかなかった。
「じゃ、じゃあさ。わ、私、よく泣いてしまうのだけど」
「非常によく知ってるわ」
マリースの鋭い視線におどおどとさらなる質問を乗せる。
「もしね、もしもよ?私が、マリース、あなたの世界で、ここにいるように日常的に泣いてしまったとしたら。……そ、それは一体、どうなるの?見た人たちはどんな感じになるの?」
「……」
「ま、まさか……刑罰対象にはならない、と言うけども。対象ではないだけで、た、例えば、見た人の感覚では……ここで言う、突然服を脱いで裸で踊り出した人を見る感覚とか……?」
恐る恐る尋ねると、マリースは何かを考える顔で、それでもきっぱりと首を横に振った。
「それは、ないわね。こちらでも裸で踊り出したらみな逃げるし、憲兵呼ばれて縛られて、街中にさらされて大笑いの種よ」
よかった、涙はそれと同等の変態扱いではないのね。ほっとして、では泣く成人はどんな扱いになるん
だ、とますます混迷深まる。
「じゃあどんな感覚なの?泣く大人を見て、みんなどう思うの?」
「……」
マリースは黙った。
気になる。すごく気になる。
「マリースの世界では、泣くという行為について成長過程で学んだりすることはないの?涙の成分とか知ってる?悲しいことがあったらどういう行動に出るの?泣き方がわからないって、どんな感覚?」
マリースの世界のマリース以外の人は、本当のところ、どう思うのか?泣く人を見たことのない人々の、泣くに対しての感じ方は?そもそも、そちらの世界の、泣くとは。
私は好奇心が抑えられず、矢継ぎ早に聞いてしまう。
マリースは、実に、かなり珍しく、実際十年で初めてでは?と思うほど真剣に、「……」と何か重大な物事を考える表情をしていた。
「ねえマリ、」
「大丈夫よ。なんにせよ、まずいことにはならないわ」
突然私の質問攻撃を遮って、マリースは笑った。炎に似た瞳で。
その、朱色の宝石が闇で発光するかのような、鮮やかな笑み。
「そうねえ。泣くことに対する一番近い答えは……純粋でいたいけな赤ん坊を見るような感覚……違うわね。哀れな小動物を愛しむ感じ……いえ、それも違うわね。絶対的にか弱く可憐な存在を本能で守ってあげたくなる気持ち……これもしっくり来ない。ああ本当に、この感覚を言葉で言い表すことのなんと難しいこと」
でもね、と真っ赤な唇が横に広がる。
「ねえ、想像してみて。生まれて初めて見る、弱弱しく美しく、消えそうに儚いものを目の前にして……あなたなら、どう思う?」
美しく、儚いもの?でも、初めて見るんでしょ?ど、どうって……
「尊い。よ。あなたの世界の言葉で、尊い。きっと、そう表現するのが合ってると思うの」
尊い。
……とうとい?
「恥ずかしいとか、みじめだ、とかじゃなく?」
「だって今まで見たことないのよ?初見のものに、恥ずかしいって思う?未知のものに対して、みじめさを感じるかしら」
「確かに」
尊い。
それが正解かどうかはわからないけど、マリースの感覚では、尊い。
でも確かに、と内心ふむふむ頷く。初見のものに対して、まったく予備知識がない状態で、恥やみじめさは感じない。衝撃はあるだろうけど。……でも、やっぱり飲み込めない感覚の差が私を混乱させる。
……泣かない異世界の人たち。
泣く異世界の私。
本能で守りたくなる?
いたいけな、可憐な、美しく儚げな、初めて見る生き物?
「尊い……」
いまだに飲み込めない不可思議さに小さく呟く私を、なぜかじっと見つめるマリース。
ふと落ちた沈黙のあと、ひそやかなため息が聞こえた。
そして、楽しそうに……実に楽しそうに笑う声も。
「そうね。それがいいわ」
きらめく瞳。宝石の瞬く夜。
闇に沈む私に、一条の光をともす、彼女の銀色の糸。いや、銀の髪。
「交換できたら、私の体であなたが泣く……。くくっ、ギャップの嵐に翻弄される奴らの姿が目に浮かぶわ」
隣に座ったマリースは悪い顔で笑っていた。自分は貴族令嬢に向いていない、とにかく向いていないと付け加えて。迫力の吊り目がたわんで美貌に凄みが増していた。
「な、何か企んでる?マリース、なに笑ってるの?」
「ほほほほほ。結果を楽しみにしていてね」
「え、マリース、なに?」
「ほほほほほほ」
そんな会話をしたのが昨夜。だった気がする。ふたりで、真っ暗ないつもの夢空間で、お互いの肩に寄りかかって、膝を抱えて座って。
私の頬を、ゆっくりと白く長い指が撫でていた。
私は着替えもせずに眠りについたからか、よれよれの襟つきシャツに黒のパンツスーツだった。彼女はうっとりするほど綺麗なレースにパールの散らばる光沢のあるドレスだった。
最後の夜だった。
……マリース。
あなた、ほんとに何かやったわね……?
光沢のあるドレスの裾、パールが編みこまれた美しいレースをぎゅっと握る。脳内をめぐるさまざまな記憶を怒涛の勢いで消費して、必死に言葉を紡ぐ。
「私、私……婚約破棄されてしまって、皆様に大変なご迷惑をおかけすることになって……か、帰ってきてしまいました、ぐすっ」
泣きながら帰宅した私に、邸中の人間が仰天して大騒動になった。なにせあのマリースが、自分以外のありとあらゆる生命体はすべてゴミだと思っていると言われる傲慢高飛車マリースがぐずぐず泣いたのだ。
この、誰も泣かない世界で。
そう。
ギャップの嵐は吹き荒れた。強く。
「マリースは今まで殿下の婚約者として虚勢を張り続けていたのだ。舐められないよう、貶められないよう、必死に仮面をかぶっていたのだ。本当はこんなにもか弱く可憐な子なのに」
何年も会話すらしなかった父親は、目の前の震える娘に拳を握った(初対面で緊張して上目遣いになった私を見下ろして、ふるふるしてた)。
「こ、こんなにはかなげな表情をするとは、いや、これが本来のマリースか。早くに亡くなった妻アメリにそっくりではないか!」
そう、マリースのお母様はお若くして亡くなっているのよね。社交界の百合と称えられた華人だったとか。ちなみにマリースは目が潰れるほどの美しさと派手さを称えられ表では真っ赤なバラ、裏ではショクダイオオコンニャクって言われてた。何年も前にふたりで私のスマホでショクダイオオコンニャクを検索して、名付けた人の博識ぶりに感心したわ。懐かしい。
「おと、お父様、私の国外追放は」
「こんなに震えて!マリース、僕は勘違いしていた。傲慢で高圧的で親を親とも思っていない態度のお前は追放がふさわしいと以前告げてしまったが、それも演技だったのだな。僕が愛するお前を追放なんてするわけないだろう!」
ぎゅっと抱きしめられた。でもマリース、ほんとに親を親とも思ってなかったです。父親のことなんか、しゃべる台車くらいにしか思ってませんでした。
「マリース様……ずっと我慢されてたなんて、おかわいそうに」
「ご、ごめんね、ケイト。護衛のみなさん方。マリ、私、あなたたちにひどいことしていたわ。許してね」
「そんな!謝るなんて、あのマリース様が頭を下げ……っ!これからはわたくしどもが!お守りします、マリース様!」
みんなに囲まれて励まされた。マリースが動く箒に動く火かき棒としか思ってなかったみんな……ありがとう……。
ぐっと唇の裏側で歯を食いしばる。そしてそっと決意する。
マリース。マリース。
とにかく、私はなんとかこの世界で生きてみるわ。あなたのなんらかの企みが終わって、もとに戻るまで。
戻るまでは、私に任せて。
……マリース。
うん、と頷いて、ゆっくりと唇をほどいた。
「……ありがとう」
初対面なのに初対面じゃない気がする皆さんに向かって、はにかんで小さく笑う。
だって、推しの兵士団員に髪の毛を入れ込んだ刺繍ハンカチを渡そうとして周りに止められたり(ケイト)、お酒飲み過ぎてお腹がゆるくなってこっそり布オムツを下着の中に仕込んできりっとした顔で出仕したり(お父様)、内緒で賭博場に行って全員大負けして半裸で丸一日お皿洗いをさせられたり(護衛の皆さん)したことも知っている。とても初対面とは思えない。
そしてあの青い彼に貸してもらったハンカチを手に丸め、丁寧に告げた。
「……これからも、よろしくお願いします」
「……っ」
全員が口に手を当てて硬直している。
「か、かわ……目が赤くて鼻をすすりながら笑うとか……!」
「な、ななななな涙!涙!!!」
「うちのお嬢様は天使……!」
ギャップの嵐は未だおさまらず。
「と、尊い……!」
ハーマン侯爵家に吹き荒れた暴風は、一時観測可能な風速を越えた。




