↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
修道院パラダイス  作者: 羊宮 玲(旧 羊)
第五章 神獣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/64

相談

 二人に急かされ、玉を握ってホープを呼んだ。ホープは出てきたけど、今日はもうあんまり力がないから、少ししか出ていられないと言う。


「ジョナサンが薄くなって消えてしまったの。どういうことか分かる?」


「僕の結界に捕まっている彼のこと? 僕の結界が緩み始めているのだと思うよ。だから少しずつ解放されているんだろうね」


「彼はどうなっていくの。体に意識が戻るの? 危険なことは起こらないの?」


 ホープは、うーん、と唸って考えている。


「どうかなあ。人間が長く捕まっていたのは始めてだから、わからないよ」


「じゃあ、どうなったら、彼が完全に体に戻るの?」


「それはわかる。僕が完全に実体化して、この玉に縛られなくなった時だよ。今はこの玉が僕を守っているけど、そうなったらただの休憩場所になる」


 じゃあ、早く完全に実体化させなくては。ノロノロやっていたら、良くない影響が出そうで怖い。


「もう一つ、彼は消えてしまったけど、今までのように出てこれるの?」


 それはわからないと言われてしまった。それなら気軽に呼び出したら駄目だろう。変な風になったら困るもの。 

 ケイトは半分に分離したりしないわよね、と怖いことを言う。

 本来ならば、ホープが全てわかっているはずなのに、子供になって記憶を失っているので、皆目わからないのだ。


 私はこれからどうしようかと、必死で考えていた。そこにケイトとダリアが、一気に愛情バロメーターを上げて、一気に体に戻しましょうと迫ってきた。


「でも、どうやって」


「トーマス様とデートしましょう」


「それより、ファーストキスは、インパクトあるわよ。一気にユニコーンが実体化すると思う」


 ええーとのけぞった。私がトーマス様と、どうにかなる話ばかりじゃないの。


「ジョナサンの命に関わるのよ」


「だけど、私はまだトーマス様のことを、よく知らないのよ」


 本当にほとんど知らない。修道院に来る途中で話したのが、初めてなのだ。

 愛の告白は嬉しかったけど、だからどうしたい、とまで考えてはいない。


 そう二人に話した。

 すると、彼の方は結婚を申し込んでいる。あなたはそれに答えを出さないといけない、とケイトに至極まともな事を言われてしまった。

 

 困った。

 どさくさ紛れに言われたことだし、知らん顔でやり過ごそうと思っていた。それなのに、トーマス様はいつの間にか、お父様やロイと一緒に行動している。

 知らない内に、外堀を埋められている気がする。

 

「それにリディアだって、トーマス様のこと好きでしょ」


「そんなのわからないわよ。考えたことないもの」


「私たちにはそうとしか見えないんだけど。自覚無しかあ」


 ダリアがじゃあね、ちょっとだけ考えてみてね、と前置きした。


「リディアが大切にしているハンカチは、トーマス様からもらったものでしょ」


 初めて話した時に渡された物を、引き出しに仕舞っている。匂いもそのまま残っていて、お父様の使っているのとは違う香りがする。

 次第に薄れていく香りを、時々嗅いでみたりする。とても良い香りだから。


「時々取り出して、眺めたり匂いを嗅いだりしているわよね。それは彼がくれた物だからでしょ」


「いい香りだからよ。それだけ」


「香りが好みって、その人を男性として好ましく思うってことよ」


「好みなのは香水の香りで、トーマス様は関係ないわよ」


 ケイトが首を傾げた。


「香水は、付けた人によって香りが変わるのよ。だから移り香は持ち主特有の香りになるのよ。知らなかったの?」


 ユーリ様が香水を嫌うので、私はつけた事が無い。お母様がいないのもあってそういう話は家でも出なかった。


 つまり、私はトーマス様の香りが好きで、クンクンしているって思われていたのね。そうと知って、恥ずかしくて顔に血が昇った。


 ホープが、力が流れ込んでくるよ、と言う。これは二人の言葉に従う方がよさそうだ。そして私はもしかしたら、トーマス様のことが好きなのかもしれない。


「どうしたらいいと思う?」


「そうね。伯爵様たちに相談したほうがいいでしょうね」


 次の朝、外部棟には三人で向かった。

 ベラさんは先に来ていたようで、二人の間で話が弾んでいる。ジョナサンが体に戻れるかもしれないと伝えたのだろう。


 私達もそこに加わった。

 そして、ロイとトーマス様も、この場に呼んでもらった。

 彼らは毎日証拠品や書類の裏付け調査で忙しく走り回っている。そのため顔を合わせるのは久しぶりだった。


 昨日の話を思い出すと、私はトーマス様を見ることができなくて、俯いたままボソボソと挨拶をした。その様子をロイが不思議そうに見ていたが、有難い事に何も言われなかった。


 私はまず、みんなの前にホープを呼び出して見せた。


「これは神獣かな。普通の生き物ではないな。どうやって呼び出した」


 水色の玉を摘んでみんなに見せた。


「元はあの干からびた種のようなチャームよ。この子馬はこの中にいるの。私と繋がっていて、私から力を補充して、実体化しようとしているの。ユニコーンじゃないかと思っているのよ」


 ユニコーン、と男性たちがつぶやいた。

 ホープはダリア達女性の側にピタッと張り付いて、撫で回されている。


「乙女にしか懐かないという神獣か。そんな感じだな。とても小さいのは子供だからなのかな」


 お父様の問いに私は答えた。


「彼が言うには、復活したばかりだからだそうよ。力が戻ればもっと大きくなるらしいわ」


「どうやって力を戻すんだ。リディアからどうやって力を補充する」


 私は説明をためらった。非常に言いにくい。

 すると私に代わって、ケイトが説明を始めた。


「この子はリディアが愛情を感じたり、愛で感動した力を受け取っているみたいです。一番初めは、私たちに対する愛、つまり友情がこの子に力を与えたようです。その時初めてジョナサンが現れました」


 ケイトに感謝した。当たり障りなく、うまい説明だ。だけど、続きはリディアから、と私に振られてしまった。


「昨夜、この子が出て来た後、ジョナサンが透明になっていって消えてしまったの。彼は少し頭がぼんやりするだけだと言っていたわ。私が透けていると教えるまで、気付いていなかったもの」


 ベラさんが驚いている。お父様も。


「この子に聞いてみたけど、どういった状態なのか分からないそうよ。ただ力が十分貯まって、この子が完全に実体化したら、彼は体に戻れるって」


 私はホープを呼んで、新しく思い出したことはないか尋ねた。ジョナサンが結界内にいるのは感じられる、と言う。


「この子の結界内に、ジョナサンは今も居るそうよ。だけど、この先少しずつ結界が緩んでいくと、ジョナサンがどういう状態になるか不安なの」 


 お父様が、それで? というように眉を上げてこちらを見た。私は先を続けるのをためらい、口ごもった。


「リディアの愛情ゲージを一気に上げて、一気にジョナサンを解放するのが一番安全だと思うんです。違いますか?」


 ケイトが代わって話してくれた。


「そのためにはリディアがトーマス様と婚約……」


 私はケイトの口を塞いだ。


「デートでお願いします」


 目を瞑って、ひとおもいに叫んだ。シンとしているので、片目を開けてみると、目の前にトーマス様が跪いていた。そして私の手を取って、うっとりと見つめている。


 お父様は真っ赤になっているが、怒っているというより困っている?

 ベラさんはお腹のあたりで両手を握り合わせ、私をキラキラと見つめている。強制はしないけど、期待している感じ。なんだか重たい状況だわ。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。