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とある快楽殺人鬼の旅路  作者: 猫好き。
3/3

旧型飛行機改良と操縦方法の理解

 人生において、落胆することは当然あることだけど、その中でも特に落胆するパターンとはいったい何だろうか?

 そう、あげて落とされるパターンである。

「動かないな」

 飛行機を見つけた僕たちは、とりあえず乗って部品をいろいろといじっている。

 ルーに本屋さんで買ってきてもらった本によればおかしなところはないし、旧型なので、特に何もしないでも敵が乗っ取れるような飛行機だから、飛べるはずなのである。

 が、飛べないのである。

「なんで動かないんだろうな、この飛行機」

 ルーは何十回もこれを言いながら、パンを食べている。

「うるさい、お前もパン食ってる暇があるなら考えろ」

 自分が頑張ってるときに他人がのんびりしながら眺めてるのは一番ってほどではないけど普通にヤダ。

 例えると、自分が難しい問題を解いている時に隣にいる人がゲームしながら俺に適当な同情の言葉を投げかけているような、そんなめちゃめちゃムカつく状態だ。

 イライラしていると、ルーが声をかけてきた。

「俺、それ読んでも理解できなかったから」

 そう言って、本を指さすルー。

 いや、めちゃくちゃ簡単だったろ。そう思いながら本に目を通す。

 そこには、旧型の飛行機の各部分の名称やそれのついている意味、操縦方法などが記されている。

「いや、このページ読んで一個ずつ確認してけばいい話だろ。今回は動かないんだから、動力源のこれとか、それのオンオフを操る回路とかを調べてけばいつかはいけるだろ」

 それくらい楽勝だろ、と思いながら言うと、ルーは言った。

「いや、それだけで何個あるの? ってか、説明文が難解で理解が出来ないんだけど?」

 怒り気味に返された。ルーが怒ったのってずいぶん久しぶりだな。

「そうか、ならいい」

 ていうか、とても気まずい空気になった。こういう空気、そんなに好きじゃないんだよな。

 そして、この飛行機はいつまでたっても動かないし、なんか集中力切れてきたな。もう改造出来たら一番いいんだけどな。そう思って、僕は専門書に目を通す。

 いや、のってるんだけども、方法。これ、頑張ればこの飛行機にも適用できそうじゃないか? 今も昔も、飛行機の構造や仕組み自体はあまり変わらない。効率のいいように燃料とか回路とかを変えてきただけで、大本はそんなに変わってない。新型はこれに効率がいいようにとか、新機能とかをつけて複雑になってる。旧型はこの大本をその時代の素材に合うようにいろいろ回りくどくした結果がこれだし、絶対いけると思うんだよな。大本だけ理解して、それを変えないようにしながら新型に回路を寄せていくか?

 いや、自分で一から回路を組もう! こういうのって、パズルみたいで好きなんだよな。

「ルー、これから専門書を読み漁って操縦方法をアバウトに覚えろ。俺は今から回路をカスタマイズしていく」

「えっそれって、つまり・・・・・・」

「あぁ、最新版よりも性能がいいくらいにコイツを改良してやる」

 そう言って僕はルーの方を真顔で見る。

「いや、キメ顔するってことはできるのかよ⁉ いやそうじゃなくて、まずはノアがこれを直すってことなのか? 専門書とかも少し読んでるくらいなのになんでわかるんだよ! いや、ノアが天才ってことは知ってたけど、さすがにそこまでとは誰も予想できないと思うんだけども!」

「語尾が感嘆符と疑問符で埋まっているな」

 なぜこんなに!と?を使うことができるのだろう。シンプルに疑問だ。

「そこは何も言わなくていいんだ! ていうか、俺は君を信じる。今からそれよみあさるから投げてよこせよ」

「ほいほい」

 僕はルーをニヤニヤと笑いながら専門書を軽く放る。

「サンキュ」


 ずっとずっと、パラパラという本をめくる音と、カチャカチャという機械をいじくる音しか聞こえない。その音しかしないおかげで、僕はこの飛行機に集中できる。

 より合理的に、より効率よく、より多機能にそう考えてずっといじっている。正直つかれた、けどやらねば。

 空島は、基本的に孤立している(当たり前)ため、独自の文化、技術の発展が進んでいる。つまり、そこでしか見れない面白いものがたくさんということである。

 行くっきゃない。本、文化、技術、見て見て見て見て見つくしたい。そう、重箱の隅をほじくるように。


「できた――――――!」

「完全に理解した!」

 そう言うのが、ルーと同時だった。

「サンキュ、ノア」

「あぁ、あと、理解サンキュ」

「ノアの頼みといわれりゃもちろん!協力!しますよ!」

 ドヤ顔で言うルー。

「つい半日前まで協力態度を見せなかったものとは思えない言葉だ」

 そう、今は夜更けである。ミッドナイトである。

「さすがに眠くなってきたな」

「おこちゃまなルーはよい子の九時就寝だからな。俺には考えられない」

「はぁ! なんだと!」

「いや何も」

 かくいう僕も、結構疲れてて、目が開けない。というか瞼が重い。

「ルー、すまん」

 そう言って、僕の今日の活動は停止した。


 隣ですやすやと眠るノアを盗み見る。

 隣で、というか、俺に全体重を預け、頭を俺の肩にコテンと置いている。とてつもなくかわいいと思ってしまっている自分がちょっと悔しい。正直こいつの顔寝てるときは女子みてぇな顔してんだよな。

「もう少し、安心して寝てろ、ノア」

 そう言って俺は寝ようとする、がそしたらノアもろとも倒れるなと思い、やめておく。


 次の日、オールをしてとてつもなくすごいクマを作り、ノアに心配されることもつゆ知らず、ルーはノアの寝顔を見つめているのであった。

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