飛びたい僕ら宛差出人不明の・・・(迷惑なツタ付き)
しばらく森を探索してみると、少し開けたところに、ツタの塊があった。
なんだこれ。とりあえず、中をのぞいてみるか。
しばらくガサガサやっていると、ルーがやってきた。
「なにしてんの」
第一声が、それ。
ま、そりゃそうだろうな。僕はツタに絡まって、身動きが取れない状態な大の字型である。逆さの。
そりゃ言いたくもなるだろうな。
「絡まった、動けない、頭に血が上ってる、やばいかも」
僕は、良くも悪くも非力である。つまり、このぶっといツタはほどけないのである。
「それにしても、どうしてこんな状態になったんだ?」
ごもっともなご意見である。ボクだってわからない。どうやってさかさまになったのか、しばられたのか。なんかちょっと考え事しながらほどいてたらいつの間にかこんな状態になってた気がする。
ん?ちょっとまって、ボクはたしか、考え事をしながら、ツタをほどいていた。その中の何かを取り出すために。つまり、ツタを振り払っていたはず。だけど、ツタは腕に絡みついているんどあ。・・・・・・これ、まずくないか?
「ル、ルー! 早くここから離れろ!」
「は?いや、え?な、なんでだよ」
めっちゃ動揺しているがこれは不可抗力だ。
腕は、非力である。だが、足は?
ボクの足は、無敵である。ボクは腕力こそないが、蹴る力はすさまじい。ならばどうするか?こうするしかないだろ!
ボクは力を振り絞って、ルーの方に一発どでかい蹴りをお見舞いしてやる。
すると、ツタは、ボクの力に引っ張られた。ツタがルーの体をぶっとばした。ルーは受け身の体制をとっていた。
これが、最適解。
そう思った瞬間ボクの体が悲鳴を上げ始めた。
やはり、魔植物!
魔植物とは、世界各地に自生する植物で、魔力というどんな生き物も必ず持っているエネルギーをたくさん含んでいる植物だ。その生態についてはわかっていないことも多いが、危険なものが多い。だが、一部例外として、治癒能力をもつものもあるから、厄介だ。
まさかこのツタがそうだったなんて!
「うっわ、こいつって魔植物だったのかよ!」
そう言ってルーもこっちに駆け寄ってくる。が、
「だめだ! 近づくな!ルー」
ボクはそれを止める。
「なんでだよ! これ一人じゃどうにもできないだろ!」
「いや、魔植物は悪質な魔力を含む霧、瘴気を普通の植物が浴びることで生まれる。こいつだって例外じゃないはずだ。だが、今までツタの魔植物は見つかっていないから対策のしようがない。だから、まずは離れて何かを当ててみてくれ、魔法とか、石とか、何でもいい! そこからこいつと直接接触しているボクが反応を見て弱点を見つけ出す!」
「わかった! 物理攻撃から行くぞ!」
そう言ってルーは手近な小石を拾ってこっちに投げつけてくる。すると、魔植物が動く。こいつ、物理攻撃がダメなのか?
そう考えていると、体に衝撃が走った。感触からして、ルーがさっき投げた小石だ。
「ルー! こいつはおそらく、一度に複数の獲物を襲うタイプだ! まず油断している一匹を捕まえて、それを盾にしながら、後の獲物を片づける。十分離れて、こいつが油断したときに攻撃しろ! それか、こいつを上回る速さで動いて、攻撃をしろ!」
そう叫ぶと同時に、体がまた悲鳴を上げ始める。こいつ、ボクを食べてからルーを一気に仕留めるつもりなのか?
「うぐぅっ」
ボクがうめき声をあげると、それに気づいたルーが焦って攻撃を繰り出した!
とっさに防御魔法を発動して自分の身を守る。あいつの攻撃を食らったら、こっちだって危ない。
「すまん!」
「わかったから焦るな! ボクの体はまだ大丈夫っ。ぐっ。だから、はやっ・・・・・・くしろ!」
そう言ってボクは魔法をツタに打ち込んだ。草には強い炎の魔法だ。
ツタは燃え上がったことにより、痛みを感じるのか、のたうち回る。そして、ボクの拘束を少し緩めるが、抜け出せない。だが、体が少しは楽になった。
でもこれ、普通に酔う。三半規管弱いのに・・・・・・。
「おまえっ!」
ルーは何かを言いかける。
「なんだ?何か気づいたのか?」
こいつに異変が起き始めたんだったらまずい。対処の方法がわからない。
ていうか普通に戻しそうなんだが。
「そんなにしゃべれて魔法打てるってことはまだ余裕あるじゃねぇか!」
「うせろ! このポンコツ大食いコミュ力ばか!」
ルーが大真面目な顔と声でそう言ってくるので、ボクも大真面目に悪口を返してしまった。
「こんなバカなことやってないで早く仕留めるぞ!こいつの弱点はおそらく火炎魔法だ! ルーは火炎魔法をとにかく打て! ボクは防御魔法で自分のところに来るのは受け流す!」
そう言うと同時に、ボクはルーの魔法にぎりぎり負けそうな防御魔方陣を展開する。
「おうよっ!」
そう言ってルーはありとあらゆる方向から火炎魔法を打ち込んでくる。ボクはそれをきれいに流してツタ本体に当てていく。ボクの緻密な魔力制御をとくとみよ!
「ルー爆破魔法を打て!」
「了解!」
僕らのチームワークを甘く見てもらったんじゃ困る。これくらいならボクはツタに爆破魔法が当たる前に抜け出せる。最後まで油断させておいて、一気に仕留める!
と思ったんだが、普通に抜け出せない。もうルーの爆破魔法は迫ってきているのに・・・・・・! こいつ、ボクを道連れにする気なのかよ。
いつもより爆破魔法は遅めだが、ボクはそれがここに当たるまでに抜け出せない。
もうだめだ! 目をつぶる。耳をふさぐ。体を丸める。反射的に、正しい行動がとれたけど、たぶんこれはダメだな。ルーにお別れをしよう。
目を開けた時、目の前に、手があった気がする。結構鍛えられた、いつも、寝るときは握っていた、安心する手。
ルー?
そう思った直後、後ろで爆発音がした。ボクの視線はいつもよりも下の方で、誰かに背中と足を支えてもらっている。
「ルー?」
ボクを抱えてくれたのは、ルーだった。お姫様抱っこで、ボクは爆発したところよりも遠い方、ルーは近い方だった。かばわれた?
「危機一髪だったな!」
そう言ってニカッと笑ういつものルー。それに安心して、お姫様抱っこされたまま、ルーに抱きついた。
「よかった」
そう言うと、安心感があふれ出したのか、一滴涙が零れ落ちた気がするけど、ルーには内緒にしよう。
「下りてくんね? さすがに手がだるい」
そう言われるまで、ボクは抱きついたままだったが、そう言われたとたん、ルーに平手打ちをして、離れた。
そして、そっぽを向いてこういった。
「ふざるな、ルー。お前はツタと一緒にデリカシーも木っ端みじんにしたのか?」
そっぽを向いていなかったら気がついたかもしれない。ルーの真っ赤な顔に。
すぐに気持ちを切り替えたボクは、大人の余裕で言ってやった。
「ま、これを見ろよ。そんなに怒ってないからさ」
ボクが指さした先にあったのは、二機の飛行機。まだ新品同然みたいで(本当は絶対にそんなことはないけど)、ペンキが落ちていない。ピッカピカのおさがりだ。
「ここに墜落した人に感謝しよう、旧型だけど、改造すればもっと便利になるぞ」
「あぁ、これが、俺らの足なんだな」
僕らは嬉しくって声も出なかったが、少したってから、ルーがハグしてきた。
まぁ、嬉しいことだから、少しだけ付き合ってやるか。
僕らは、嬉しいことに、二機の旧型で新品同然で、包装が迷惑なツタの、新しい飛行機を手に入れた。