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裏切り

 パンパカパーン!

 私達は無事に、ショッピングモール・アレオに到着しました。

 そして、お目当てのランジェリーショップに到着です。

 うん、かわいい下着が沢山並んでいます。気分上々ですね。


「ところで、幸穣君。幸穣君は、どんな下着が好みですか?」

「……なぜ、俺に訊く?」

「なぜって……ほら、どうせなら服を脱がした時に、そそるやつがよく無いですか?」

「ちょっと待ってくれ。誰が誰の服を脱がして、誰がそそるんだい?」

「ん? そんなの、幸穣君が、私の服を脱がして、幸穣君がそそるんですよ」


 ……あぁ、幸穣君が、頭を抱えてしまった。


「幸穣君、頭痛ですか?」

「おぅ、頭痛だ。悪いが、俺はそこのフードコートで安静にしているから、下着は自分で選んでくれ」

「そうですか……それじゃぁ、仕方が無いですね。この店では、幸穣君が、喜びそうなのを私が見繕(みつくろう)う事にしますよ。でも、ここでは売っていない下着もあるので、後でそっちの店に行った時は、幸穣君も一緒に選んでくださいね」


 幸穣君が、腕を組んだまま、首を(かし)げる。


「ん? ここでは売っていない下着? 寄せて上げて、無理やり谷間を作る、各社特許を持っていそうな下着の事か?」


 ……あぁ、そうですよね。幼児体型の私では、そういった、ブラを買うと思いますよね。

 でもね幸穣君、実は違うのです。

 私はですね、胸に関しては、既にあきらめているのよ。

 私が望む下着は、別にあるのです!

 

「いぇいぇ、違いますよ。谷間なんて、とっくのとうに諦めています」

「……ん? じゃぁ、どんな下着をご所望だ?」

「そりゃぁ、あそこに当たる部分が、数珠みたいな球になっていて、歩く度に感じられるショーツですよ。あとは、ショーツを脱がさなくても刺せる様に、あそこに、穴が開いているやつとかですかね」


 幸穣君の顔が曇った。

 

「おぃ、ノエル。それって、何処に売っているんだ? ネットじゃなくて、そんな怪しい物を取り揃えている店ってあるのか?」

「もちろんです。ラブショップですよ。知らないんですか?」

「……すまない。俺には縁が無かったので、知らないらしい。そんな訳で、大変申し訳ないのだが、その店へは一人で行ってもらえないだろうか?」


 私は、幸穣君の裾を引っ張る。


「何でですか? 一緒に行きましょうよ。亀甲縛りのロープとか、猿ぐつわとかを買いましょうよぉ」

「買わんわ! もし、そんな所を、彼女にバレたら、俺は殺される気がする」

「大丈夫ですよ。もし彼女に見つかっても、決め顔で『お前の為に、買いに来たんだぜ!』とか言えば誤魔化せますよ」

「……いゃ、それはそれで、彼女にドン引きされると思うが……」

「う~ん、そうですね。もし私の彼氏が、その様な変な下着とか、コスプレグッズを買って来たら、ドン引きしますね」

「……だろうよ。じゃぁ、俺がその店に行くのは無理だな」

「いぇいぇ、私のを選ぶのだから問題ありませんよ」

「あのな……そもそも、俺がお前のコスプレグッズを選んだとして、そのコスプレはいつ、どこで使うんだ?」

「そんなの、決まっているじゃないですか。()()、幸穣君の()()で使うんですよ」


 あぁ、幸穣君が、再び頭を抱えてしまった……。


「……ノエル……百歩譲ってだ、もし買ったとしても、今夜俺の部屋で使うのはアウトだ」

「えー、何でですかぁ……? ハッスルした夜にしましょうよぉ……」

「しません!」

「はぁ……残念です……」


 私は、肩をガックリと落とす。

 

「やれやれ……それでは仕方がないですね。諦めますよ……」

「おっ……諦めてくれるのか?」


 なんか、少し嬉しそうなのがシャクです。

 

「えぇ。……まさか幸穣君は、()から、()()で使うことをご所望とは……。そんな明るいとこでやるなんて、私も初めての経験なので、緊張してしまいます……ですから、優しく可愛がって下さいね。……モジモジ」


 ピシッ!


 あっ、幸穣君の顔が引きつった。

 

「お~~っとノエルさん? 俺の言葉を、勝手に逆説で解釈しないでくれよぉ。警察に捕まるのは、お前一人で十分だ」

「えっ……だって、だって、さっき言ってたじゃないですか。ハッスルした昼にするって……」

「そうは言ってないぞ……」

「でも、勘違いさせる様な発言をしたら、責任は取らないといけないと思うのですよ」

「……いゃ、ノエルが拡大解釈して、勝手に勘違いしただけだろう……」


 私は、しおらしく、首を下に折る。

 

「そんな……私の事を勘違いさせて、その気にさせておいて、責任取らないんですかぁぁぁああああ! シクシク」


 すると、周囲の買い物客がざわつき始める。

 

「ヒソヒソ。なにあれ、別れ話?」

「男の方、最低じゃない?」

「結婚詐欺かしら……」

 

「お~っと、ノエルさん。ショッピングモールで、怪しい言葉を大声で叫ぶのは止めて頂けませんかね。お買い物客の視線が痛いのですが……」

「あらぁ、幸穣君って人気者なんですね」

「えぇ、今しがた、ノエルさんのお蔭で、大スターになれたんですよ」

「そうですか、それはおめでとうございます」

「めでたくなんて、ないわ! それより、俺から離れろ!」


 私は、そう言われると、更にくっつきたく成る性分だ。

 引き離そうとする幸穣君の腕に、強引に絡みつく。

 

「そんな事言わないで……私と一緒に、シーツの波間で、愛に溺れましょうよぉ」

「勝手に溺れていろ!」

「そんな事言わずに……ほら、あそこのアベックも中良さそうですし」


 私は、男に絡み付ながら歩いているカップルを指差す。


「ほら、女の方からチューを迫って。うわぁ、こんなショッピングモールでもう見せ付けますね…………って、あれ? もしも~し、幸穣君。聞こえていますか?」

 

 幸穣君を覗き込むと、なんと、血の気が無くなっているのか、蒼白な頬をしていた。

 ただ、わなわなと震え動く唇と、トルコ土産のメディーサの目の様に、丸々と見開いた眼がフルフルと震えていた。


「さっ、沙美那(さみな)……その男は……いったい……」


 さみな? もしかして、幸穣君の彼女さん?

 でも、他の男にチューしてましたから、これって、浮気ですかね?

 あららぁぁぁ、浮気の現場見ちゃいましたか? 発見しちゃいましたか?


 幸穣君は、私が止める間もなく、沙美那さんの前まで、つかつかと歩いて行く。


 あぁ、これはマズいですよ。修羅場ですよ。

 私なんて関係ないのに、毛穴が広がりまくりですよ。

 さて、どうなりますか?

 テレビなら、ここでCMを挟むところです。


「なぁ、沙美那。その男だれ?」


 お~っと、幸穣投手、直球ストレートを投げました。

 さぁ、バッター沙美那さん、この玉をどう打ち返す?


「あぁ~~~、幸穣いたんだ。こっちの男は、私の彼氏だけど、何か問題でも?」


 お~っと、甘く入ったストレートを、沙美那選手、芯で捉えました。

 これは大きい!

 伸びる、伸びる!


「そっ、そうなんだ……」


 お~っと、外野が下がります! しかし、フェンスまで下がり切ってしまった!

 これ以上は下がれません!


「そっ、私の彼氏! 何か問題でも?」


 追い風が吹いたか、ボールは全く落ちる気配を見せません!


「……そうか、じゃっ、お幸せに……」


 なんと、外野は見送ったぁぁああ!

 入りましたぁぁあああ~~~!

 ホームランです。

 幸穣選手、マウンドで崩れ落ちます。


「あのぉ、幸穣君?」

「ノエル、行くぞ」


 幸穣君が、私の手を引いて、モールの外へ向かいます。


「幸穣君、痛いです。痛いです!」


 しかし、私の声は幸穣君には届きません。


「こうじょうくん! いたいです!」


 ビクン!


 幸穣君の手が大きく脈動するのを、握られた手首が感じる。


「あぁ、すまない。つい、周りが見えてなくて……」

「……はぁぁ。まぁいいですよ。これしきの傷簡単に治りますし、それに若い時は、異性に騙される事なんて、多々ありますからね」

「……そうか、そう云うものなのか……」

「そうですね。幸穣君の様に純情というか、真面目な子は特に騙されやすいですよね。相手を疑うって事を知りませんから」


 幸穣君が、うつむく。

 言葉も発せずに、ただただ、地面を凝視している。

 しかし、その両手の拳は強く握られており、爪が皮膚に食い込んでいるのは、爪を見なくても分かる。

 幸穣君にとっては、初失恋なのでしょうかね……。

 いゃ、初裏切りの方が、言葉選びとしては正しいですかね。

 いずれにせよ、幸穣君の心が深く傷ついた事には変わりません。


「幸穣君、家に帰りましょう」

「…………くっ!」

「ねっ。……ここに居ても、何も解決しませんし……」

「そうだな」


 幸穣君は小さくつぶやくと、一人で歩き始めた。


「幸穣君……」

「悪い、ノエル。少し一人にさせてもらえないか…………。ちゃんと家には帰るから……な。……これ、鍵……渡して置く。先に帰っていてくれ」


 私は、幸穣君から、部屋の鍵を受け取る。

 すると、それを合図だったかの様に、幸穣君は、とぼとぼとバス停の方へと向かった。


「幸穣君……ちゃんと帰って来るのですよ……私は待っていますからね。……今日買った下着を付けて!」


 私は幸穣君の背中に、声を掛けるが、彼に届いていたのかどうかは定かではない。

第一章、これにて簡潔です。

長い間応援していただきまして、誠にありがとうございました。

ヨイ先生の次回を、ご期待ください。


一度この言葉書いてみたかった。フフフ

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