買い物に行こう
おかしいなぁ。本当はほのぼのした物語を書こうと思っていたのに、方向性がずれてしまった。
ふらいんぐうぃっちを見かけて、そうだ! これだ! って思ったのに、どちらかと云うと、化物語の阿良々木君になりつつある。
……今更、方向習性は難しそうです。(笑)
いゃぁ、無事に、なんとか幸穣君の部屋に、入れてもらうことが出来ましたよ……。危ない危ない。
……でも、問題は、山積み何ですよね。
なにせ、現在、私は住まいが無いのですから。
消し炭になってしまいましたから……私のアパート。
……ほら、いわゆる炭火焼きってヤツですよ。
もっとも、火事の原因は、どっかの誰かが、ファイヤーボールでお手玉して、取りこぼしたかららしいですけどね。ヤレヤレ。
……とはいえ、部屋が無いのは、現在進行形で困っています。
私は、ちょっとお願いをしてみる事にしてみました。
そう、こんな私ですが、少しだけ住まわせてもらえないか、と云う相談です。
「あのぅ、幸穣君に、お願いがあるのですが……」
「お願い?」
幸穣君の背後に、怒った虎が見えます。
ありゃりゃ……めちゃくちゃ機嫌の悪そうな顔で、こちらを見てますよ。
さっき、少しからかい過ぎましたかね?
……まっ、それはそれ。過ぎた事は気にしない!
「実は私、この部屋を出ようと思っているのですが、アパートを借りるお金が無いんですよ」
「……そういえば、全部燃えてしまったんだっけかな……」
「そうなんですよ。おょょょ……。で、そこで相談なのですが、お金が溜まるまで、居候させてもらえませんか?」
「……あのなぁ、そういうのは、俺じゃなくて、高校の友達とか頼れよ」
「高校の友達は、皆実家暮らしでして……。私としても、流石に親御さんには、迷惑は掛けられませんから、その辺は自重しているんですよ」
「まぁ、言わんとしていることは、分かるけど……。でも、一人暮らし始めたのが、一人くらいは居るだろう」
「……まぁ、一人なら」
「じゃあ、そいつに頼めよ」
私は、窓の外を眺める。
そして、遠い目をしながら、窓の柵に手を掛ける。
「いえ確かに、居るには居るのですが、その人、男のヒトなんですよ」
「ん? 何を言う。今と、変わらないじゃないか」
「いぇ、その人ピ---な趣味をお持ちでして、私、朝になったら色々開拓されているかも知れません。うっうっうっ……」
両手で顔を塞ぐ。
「……そうか。でも、考え方を変えれば、新世界が見られて素敵じゃないか?」
「なっ、なに言っているのですか。私は、どこぞの海賊ではありませんので、新世界など目指していません。そもそも、あの男に開拓されると思うと、虫酸が走ります」
「……因みに、俺がその男と同じ事をしたらどうなるんだ?」
「……そりゃぁ、一生幸穣君について行きますよ。ぽっ」
げしぃ!
本日初の幸穣君チョップが炸裂する。
「何、顔を赤らめているんだ。そもそもお前にそういう趣味が有るとはな……」
私は首を傾げる。
「えっ、そういう趣味って何ですか?」
「だから、放送禁止用語みたいなやつだろう?」
「放送禁止用語になるプレイって、何ですか?」
「だから、鞭とか三角木馬とか……」
ニヤニヤ。
私は我慢しきれなくなって、笑みをこぼす。
「幸穣君は、変態ですね~。そんな事考えていたのですね」
「って、違うのかよ! さっきピーーーとか言ってたろ」
「……あぁ、あれですか? あれは鞭とかじゃないですよ。二つ目の穴の開拓ですよ。分かりませんでしたか?」
「分かんねーよ! 穴の開拓だなて。…………でも、まっ、案外気持ちいかもしれないぞ」
「えっ、気持ちいい? 幸穣君は、何を想像しているのですか? 私は、井戸を掘る話をしているんですよ」
「してねーだろ、井戸って単語、今初めて出て来たわ!」
「まったく、そんなに興奮してぇ~可愛いんだから。ちゅ!」
私は、投げKISSを幸穣君にプレゼントした。
がすっ!
「なっ、投げKISSくらいでチョップしないで下さいよ」
「……ん? まぁ、そうだな。確かに、投げKISSくらいでチョップは可哀そうか……」
幸穣君が少し、しおらしくなった。
チャンスだ。
「いてて……。あ~痛い、う~痛い、お~痛い」
「……悪かったよ。少しやりすぎた」
「……こほん……では、罰として、幸穣君には、ディープKISSを要求します」
「被告人の意見は否決されました!」
「にょ、なぜ私は被告人? しかも即決裁判!」
「だってお前、犯罪者だろう」
「違います。失礼な!」
「不同意ワイセツの罪だ」
「私の、どこが不同意ワイセツですか!」
「……そうだな。じゃぁ、訊くが、お前の、どこに汚れていない部分が有る? 心から外見まで汚れっぱなしだろう!」
「なっ、何を言う。汚れていない部分くらいありますよ! そう……そうですね……」
……ヤバイ、何も思い付かない……。
「えーと……えーと……。ほらっ、髪とか、爪とかぁ……かな?」
「…………なんか、伸びたら、切って捨てるやつばかりだなぁ……。つまり、お前の清純は、絶えず切り捨てていると言うわけだ」
「ちゃうで、ちゃうで。ちゃんと見てみぃ、この艶やかな髪を!」
私は、幸穣君の顔の前で、まるでシャンプーのCMの様に、ファサっと髪をかき上げた。
此でもう、彼は私にメロメロ……。
「……あっ、うん。それは、いいんだけど……なんだ、その……」
何ですか、その含みのある言い回しは?
「アノな、非常に言いにくいのだが……お前、汗臭いな」
「ぎゃーー! 失礼な! だって昨晩からお風呂入っていないし! 今から入って来る!」
「いゃ、だから、言いにくいって……って、お前、何してる!」
私は、幸穣君の言葉を無視して、その場で服を脱ぎ始める。
「まて、ワンルームの部屋には脱衣所なんて場所は無いけれど、いきなりここで脱ぐな!」
だがそんな話は聞かない! 私は、裸になると、シャワー室へ飛び込んだ。
ううぅ……最悪だ。
臭いと思われてしまうと、今後の計画に支障が出る。
今のところ順調なんだから、こんな所でしくじってたまるか!
まずはシャンプーで、髪と頭皮をしっかり洗う。
そして、コンディショナーで潤している間に体を……って、あれ?
無い?
「幸穣君、タオルがありません。体を洗うタオルを下さい」
「そりゃぁ、見切り発車でシャワー室に飛び込んだからなぁ。……それにしても、体を見られる恥ずかしさとか、お前には無いのか?」
「そんなもの、汗臭いと感じられるよりましです!」
「そうか? そういうものか?」
「……それに」
「それに?」
「どうせ近いうちに見せる体ですからぁ! ぽっ」
「見せんじゃねぇ!」
シャワー室のアコーディオン扉が勢いよく開いたかと思うと、私の顔面に、フェイスタオルが投げつけられた。
「べふっ!」
「それでも使ってろ!」
「あうぅ……。タオルはこれでいいんですけど、バスタオルと、私が着る服を貸して下さい」
「……そう言ってもなぁ。服はなんとかなるけど、女性用の下着なんてないぞ」
「まっ、下着はこの後買いに行きますから、取り合えず、服だけ貸して下さい」
「わかった、わかった。じゃぁ、シャワー出た先にある、洗濯機の上に置いておく」
幸穣君はそういうと、シャワー室の前から姿を消した。
● ● ●
「じゃーん、どうです?」
「どうって?」
「幸穣君のTシャツに、パーカー。そしてチノパンスタイルですよ」
「まぁ、ちょっとぶかっとしているけど、着れているんじゃないか?」
「そうですか? 嬉しいです。……でも、さっきチノパンのチャックを上げる時に、毛が絡まってしまって……、ちょっと痛かったんですよ」
「いちいち言うな!」
「もし、チノパンを幸穣君に返した時、チャックに縮れた毛がはさまっていたら、私のですからね」
幸穣君が、顔を赤らめながら、拳を頭上に上げている。
「……叩いていいか?」
「いゃいゃ、ダメですよ。それより、さっさと買い物に行きましょう! 店閉まっちゃいますからね。ねっ」
「へいへい」
幸穣君は、気だるそうに返事をするも、私と一緒に買い物へと付き合ってくれる事を了承してくれた。
うんうん、やっぱり幸穣君は優しいね。
そんな訳で、とりあえず私たちは、近くのショッピングモールへと、歩いて行く事にしたのだ。
「……ノエル」
「なんですか? 幸穣君」
「腕に絡みつかないでくれますか?」
「……なんでです?」
「いゃ、知り合いとかに見つかると、彼女と間違われるだろう」
「良いじゃないですか。彼女と思われたって」
「いゃ、巡り巡って、彼女の耳に入ったら、俺殺されるぞ」
「おゃ、幸穣君、彼女いるんですか?」
「いるよ!」
「じゃぁ、なおさら離れられませんね」
「……確信犯かよ……、でも、本当に離れてくれませんかねぇ。困るんですよ」
「えっ、もしかして、ノーブラの感触で、興奮しちゃうんですか? いゃぁ、幸穣君はいやらしいですねぇ~。もしかして、私の柔らかさで感じちゃってます? まぁ、確かに。こんな公共の場で勃起ちゃう訳には、いきませんしね」
がすぅ!
幸穣君のチョップが炸裂した。
「あうぅぅ。痛い」
「当たり前だ。なに、公共の場で口走ってんだ。変態と思われるだろう!」
「うぅぅ痛い。変態ってなんですか? 大体、幸穣君は、私にノーパンで歩かせている変態プレイを、既に楽しんでいるじゃないですか」
「……楽しんでいるとは、人聞きが悪い。俺の品格を、貶める発言は控えてもらいたい」
「何を今更……」
「今更って、俺が常習的に、変態プレイをしている様な発言は止めてもらえますかねぇ?」
「あらっ、失礼!」
私は、澄ました顔で受け流す。
「それに、ノーパンなのは、お前がそれで出かけるって言ったからだろう!」
「あら、そうでしたっけ?」
「そうだ! それに、だからこそ、今から、ズボンの中に履くのを買いにいくんだろう」
「またまたぁ~、そんな事言ってぇ。照れ隠ししなくて良いんですよ」
「いゃ、別に照れ隠しなんてしてねぇし」
「そうですか? 本当は、現在の私の状況を想像して、勃起ちゃてるんでしょ? ちょっとそこの公衆トイレで、1発抜いときますか?」
がすぅぅぅ!
「いだぃ」
幸穣君は私をおいて、スタスタと先に歩いて行ってしまった。
やばぃ、ちょっと、からかいすぎた。怒っているのかなぁ……?
「うぅぅ~、冗談ですよぉ~、置いて行かないでくださいよ~」
私は、慌てて幸穣君の後を追いかけるのだった。
この二人、全然話が進まないなぁ。
つーか、会話文しかない。(笑)
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