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スカウト

スカウト

小悪党を(内田が)とっ捕まえた後、俺たちは街の中をブラブラしていた。



街のイメージはなんとなく産業革命後の華やかな欧州の都市を想像すればいい。


(産業革命後は、一部では発達する産業に衛生などの設備や保障が追いつかなく、苦しい生活を強いられていたそうだが、そこは今回はおいておく)



特に祭りでもやってる訳ではないが、

街は活気に溢れ、通りでは屋台なんかもいくつか並んでいる。



そのうちの一つを覗いてみると、

丸っこい穀物を蒸して、牛だか羊だか家畜の乳製品を乗っけた物が売っていた。



モロじゃがバターだ。



まさかこんな所でお目にかかれるとは...!



俺はじゃがバターが大好物だ。



祭りに行けば真っ先に屋台で買う。そして帰り際にももう一度買う。

それくらい好きだ。



屋台に手作りの札が置いてあり、「ラ・ジャッカ 200フィート」と書かれてある。



まさかの異世界的な場所で日本語表記。


200フィートって日本円でいくらなのだろうか...?



「なんだ兄ちゃん、買ってみるかい?」


屋台のおっちゃんが声をかけてきた。


食い入るように商品を見つめてたからだろう。

少し恥ずかしい。



見た目は似ているが味は違うだろう。


日本じゃ食べられないかもしれない。


食べてみたい。



が。



この世界で使う金がない...!



まあ、さっき突然来たから当たり前なのだけど。



しょうがない、諦めるか...


「す...」


やっぱり名残惜しい。だが無銭飲食なんてとんでもない。



「す...み...まぜ...んん...お金...ないので...また...今度...ぉ!」



「え、あ...うん」


気さくなおっちゃんすらドン引きしている。



ここにいても辛いだけだ。早めに離れるとしよう...!



去ろうと回れ右して気が付いた。



内田どこ行った...!?



いつの間にかコツゼンと姿を消している。



まさか...拉致監禁⁉︎


いや、内田に限ってそれはないか...?



「たけつきー、どこ行ってたんだよ」



内田だ!生きてた‼︎



...ん?


「お前、その手にあるのは...!?」


内田が右手になにやら食べ物を持っている。



「ああ、これか?さっきの店の人がお礼にって」



アイスクリームだ...!


なんとなく雰囲気がアイスクリームだ...この野郎...!!!



「強盗に店の金持ってかれそうだったみたいでよ、アイスなんて安いもんだぜって言ってた」


ほれ、と見せつけてからソフトクリーム型のアイスにかぶりつき始めた。



くそう...なんか腹立つ...



あと(ビルダーは特に)ちゃんと栄養バランス考えといた方がいいぞ...



だか助けたのは内田だ。ならばお礼を受け取るのも内田だ。



そう自分に言い聞かせながら通りを足早に抜けると、視界が一気に開けた。



大きな通りの向こうに巨大な建物が誇らしげに立っている。



街の役所だろうか。

人通りも増えて、さらに賑やかだ。



さて、これからどうすればいいのだろうか。



美しくも威圧も感じる石造りの建物を前に立ち尽くしていると、1人の兵士が声をかけてきた。



「そこの2人、少しいいか」



身動きの取りやすそうな、やや軽めの防具を装備し、腰にサーベルを下げている。

兜をつけていて顔はよくわからない。



「なんでしょうか?」



俺と内田はちょっと周りを見て、ほかに2人組がいない事を確認しながら応える。



「右の君、先ほどの活躍、見ていたぞ。咄嗟の出来事に対しての反応の速さ、君には戦闘の才があるかもしれん」



兵士は内田を指差して褒め称える。



「ありがとうございます...?」



内田は嬉しさよりもいまいちピンとこないという思いのようだ。



「そして左の君。彼と同じような体格で力強い印象を受ける。君たちは旅でもしているのかな?」



おお、一応褒めてもらえた。社交辞令でも嬉しい。



「まあそんな者です」


まさか異世界からきましたー、なんて言えないよな...



「どこかを目指している訳でもないのなら、付いて来てもらっていいか?大事な事がある」



「これは...もしかして」



話を聞いた内田が震えている。



「スカウトってヤツかっ⁉︎」


スカウト...?

「スカウトってやつなのか...!?」



内田は衝撃に身を震わせている。



こいつ二回言った。



もとからそういうのに興味があったのだろうか、驚きながらも少し嬉しそうで、声色からも興奮している様子が伺える。



いやでも...スカウトって決まった訳じゃないよな?



来て欲しいって言っただけだし...



指摘しようか迷ったが、内田の珍しいカブト虫を見つけた時の虫捕り少年のような表情を見ると、言う気にはなれなかった。



「あの、大事な用っていうのは...?」


民衆のために働く兵士とは言えど、流石に内容も知らずについて行くには少し抵抗がある。



「スカウトであってるよ。何のスカウトかは...着いてからのお楽しみ」



スカウトで合ってた。


兵士の顔の上半部は見えないが、口元には子供のように無邪気な笑顔を浮かべている。



それにしても仕事内容はすぐには教えてくれないのか...少し不安なところはあるけど...



「どこっすか⁉︎いきましょいきましょ!」



この男、完全に乗り気だ。



こうなった内田を止めるのは容易ではない。



ほんと子供みたいな性格してるなあ...



まあ、内田がいるなら大丈夫か...



「俺も大丈夫です」



同意を求めるようにこっちを見ている内田に頷きながら、俺も応えた。



「よし、着いて来なさい」



先導する兵士の後ろを歩きながら、俺もこれから何を見る事になるのかという好奇心が湧き、わずかな不安とともに入り混じっていた。

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