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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
少年は涙を流し、瓦礫を掴む
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煉獄の島。

沖縄本島には約145万の人々が住んでいる。


この1週間で、不完全な避難計画にも関わらず、数十万の人間が本州に避難している。

とはいえ、離島からの避難者を含めて、未だに約100万人の民間人が逃げ遅れた状態だった。

計画的に本州のフェリーや旅客機を投入すれば、もっと多くの人を避難させることが出来たかもしれない。


だが、その計画の具体化は、事実上1年の準備期間があったはずが、中国側のハイブリッド戦による政局混乱の影響を受け、進んでいなかったのだ。

その状況下、国内の旅客機を政府負担で沖縄と本州各地を往復する便を、大幅に増便する措置が実現したのは奇跡に近かった。

だが、それでも140万人の避難には足りない。(この状況で真紀子と澤崎が、それぞれ本州便の席を得ることが出来たのは、幸運、真紀子にとっては不運以外の何物でもなかった。)


逃げ遅れた人々は、2つのグループに大別出来た。避難する意思はあったが、間に合わなかった人々と、最初から避難する必要を感じ無かった人々だ。


未だに沖縄からの避難を行わない、あるいは行えない人々は、さらに様々なグループに分類することが出来た。

消防、警察、行政の関係者。

そもそも情報を見ても、避難すべきかどうか、自分で判断できない人々。彼等は、知り合いの大部分が避難しはじめたなら、自分もそうしようと考えてしまうような人々で、新垣の両親もそうだった。

離島から直接九州や本州に避難する便が無く、取り敢えず沖縄本島に避難してきた人々(彼等は本島の人々の危機感の無さに驚いた)。

真紀子のように、仕事を優先してしまった人。

逆張り思考の人間。

未だに自国よりも中国を信頼してしまうような思考回路で、絶対に戦争にならないと考えているような人間。

避難しようとしているが、やはり飛行機やフェリーに乗れなかった人々。彼等は妥協案として、沖縄本島北部に疎開を試みていた。

高齢や障害で移動が困難な人。かれらと運命を共にすることを選んだ、その家族。

沖縄県知事に投票してしまうような人々で、やはり中国が攻撃などするはずが無いと、信じ込んでいる人々。

積極的に中国の侵略に手を貸そうとする者。

その他、抱えている事情は様々だったが、中国軍との交戦に伴う付帯被害は、彼等の上に平等に、そして無慈悲に降りかかっていった。


本州への避難が手遅れになり、戦禍が頭上に降りかかってきた以上、彼等はシェルターや地下、頑丈な建物に避難し、あるいは伏せ、可能な限りの遮蔽物を利用して生存確率を上げるべきだっただろう。

だが、そういった行動には、ある程度の周知と訓練が必要だった。訓練無しに急に出来るものでは無い。


それにもかかわらず、沖縄県知事は緊張を煽るだけとして、一貫して国民保護訓練を徹頭徹尾ボイコットし、シェルター建設に許可を与えずに来たのだ。

彼は23年の秋にガザで起きた事態を目にしても、同じように中国軍によって、沖縄の市街が吹き飛ばされる日が来るかもしれないとは想像もしなかった。

ついに中国による沖縄爆撃が現実となった今この時も、彼は政府と米国への不平不満を拗らせた結果として、むやみやたらと中国に好意的かつ、無警戒な態度を頑なに守っている。


その結果、弾道弾攻撃を皮切りに、人口密集地に被害が及び出した時、居室内で立って外の様子をスマホで撮影していたり、屋外を徒歩や車で移動している人が多数居た。

彼等は、自分や家族、友人知人が犠牲になって、初めて政府の言う「国民保護訓練」の意義と重要性を思い知ったのだ。だが、その代償はあまりにも高すぎた。

同時に、あって当たり前に思っていた民族自前の「国家」=「日本」と、「自衛隊」「日米同盟」の有難みを、失いかけた今になって.急速に感じつつある。

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