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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
空を駆ける
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リンク切れ

だが、柳の悪夢はこれで終わらなかった。


大型戦闘機のJ20は、多少の運動性を犠牲にしてでも莫大な機内搭載燃料を誇っており、その戦闘行動半径は2000キロにも達していた。これは米軍に比べて、空中給油機を揃えていない中国空軍の事情を反映した結果でもある。

米軍機に比べて、やや胴長な印象を受けるJ20だが、それは空中給油機に頼らずとも太平洋に出て長距離、長時間の任務を遂行出来るだけの機内燃料を確保するためだったのだ。

そのかいあって、上海周辺の基地から離陸した柳達は約1000キロを飛行してきたのだが、復路を考えても、沖縄周辺でまだまだ3000キロ分の戦闘行動が可能なはずだった。


だが、柳の大隊は何度もアフターバーナーを使用して、急速に燃料を消費してしまっていたのだ。

F15JSIの追撃。ESSM、PAC2の回避。そして、制空任務の終盤で生じたF22の追撃。

これらの積極的な戦闘行動の繰り返しによって、柳の大隊を含め、先鋒を務めたJ20の各大隊は、想定より遥かに多い燃料を消費している。

約800キロ彼方の上海に帰投するには、燃料が不足していると言って良い状況だった。


しかし、柳はそれほど心配していない。上海と沖縄の中間点付近には、中国空軍虎の子の空中給油機部隊が進出しているはずだったからだ。

中国軍の給油機の機数は全く十分ではなかったが、胡中将はここで使わずしていつ使う?とばかりに、長距離侵攻になる沖縄方面に、保有機の殆ど全てを投入していた。

おかげで柳達が不足する燃料を緊急に補給してもらうには、十分な態勢が整っているはずだった。


この護衛には最新鋭のJ20Aが1個旅団の全力、24機がついている。

さらに沖縄の沖合300キロには、中国国産のKJ500H早期警戒機が進出して滞空していた。

この護衛には人民解放空軍戦闘機隊の中でも最精鋭とされる第9旅団のJ20Aが、やはり予備の1個大隊も加えた全力でつくことになっていた。

J20Aは、待望のWS15にエンジンを換装して、超音速巡航を実現した最新バージョンだ。

給油機にも警戒機に対しても、米軍流の重厚なHAVCAPというわけだった。


生き残ったJ16部隊が、敵艦隊と沖縄への攻撃を開始するのを見届けると、柳は部下を率いて帰投を開始した。爆撃隊の打撃力は低下したものの、それでも充分な攻撃力はあるはずだ。

これで沖縄の日米空軍基地は再起不能になるだろう。もう少し勝利の戦場に留まってその瞬間を見届けたかったが、燃料に不安がある。


不安と言えば、爆撃隊は復讐に燃えているだろうが、やりすぎないだろうか?

少なくとも敵の救難機は、やらない方が良いかもしれない。

日米は普段、偉そうに人道や人権がどうのこうのと中国を非難するのだから、脱出した味方のパイロットをきっちり「人道的」に救助するはずだからだ。


柳はKJ500Hに連絡を取り、空中給油の段取りを要求する。

結局今回は、撃墜戦果を得ることは出来なかったが、まだ戦いは始まったばかりだ。

彼は、思っていたよりも遥かにやっかいな、F22をどうやって撃墜するか、考えを巡らせている。

正直、予算不足で計画されたアップデートが殆ど行われていないことは知られていたから、F35と比較すれば旧式と侮っていた。

実際、F22は米軍の最新鋭のアセットとのデータリンクが出来ず、センサー類や、インターフェースも陳腐化しつつある。

だが、それにもかかわらず、元から有していた高い機動力とステルス性だけで中国軍を翻弄していた。ならば、神出鬼没のF22を自機のセンサーで捉えるには、どういった手段が考えられるか?

柳は前向きな思考をしつつも、センサーと目視で周囲を絶えずモニターし、部隊の監視を怠らない。


その時、KJ500Hからのデータリンクがいきなり切れた。

「妨害電波!?まさかまたF22か?いったいどこから?人民解放空軍最強の第9旅団のJ20Aが、周辺を警戒しているのに?」


柳の予想は当たっていた。バージニアから増援で飛来し、在韓米軍大邸基地から離陸したF22装備の第94戦闘飛行隊は、やはりレーダー未使用、超音速巡航で背後からKJ500Hに接近すると、高高度へいったん上昇してから急降下を開始した。

8機ずつの3個大隊に分かれ、KJ500Hの周囲で円を描くように周回してパトロールするJ20A。

その中心に位置するKJ500Hに対して、F22の先頭フライト4機が逆落としで突っ込むように攻撃の火蓋を切る。

護衛のJ20Aはレーダーを使用していたし、背後からのレーダーにはある程度探知されてしまうから、米軍側は護衛のJ20Aの位置を概ね掴み、彼等のレーダーとセンサーの死角となる真上からの攻撃を行ったのだ。


米軍のリーダーは敢えて、KJ500Hの電子防御能力を過剰な程高く評価していた。

その結果、長距離からのAIM120による攻撃は失中するリスクがあるとして、AIM9Xを使用した一撃離脱を敢行したのだった。


KJ500Hは一撃で撃破された。

攻撃に気が付いたJ20Aのうち、1個大隊はIRST(赤外線捜索追尾システム)でF22を探知することに成功。

追尾に移るが、上方からアフターバーナーを使用しての一撃離脱を行ったF22は、離脱時点でマッハ2近い速度を出していた。

このために、J20Aの搭載する中国最高の戦闘機用エンジンであるWS15の全力でも、F22のF119エンジンにはまだ性能で劣る上、航続距離と引き換えに多すぎる燃料を搭載した重いJ20Aでの追撃は、距離が離れるばかりで難しい状況だった。それでも彼らはあきらめるつもりがない。


柳は無線を通じて、第9旅団が敵機の追撃に移ったことを知って、自分の大隊も現場に急行させた。

危険だと思った。柳は先ほどの実戦で、J20が以前から噂になっていたように、後方のステルス性能はさほどでもないことを実体験として経験済だった。

だが、KJ500Hの護衛部隊のパイロット達は知らない。F22を安易に追撃して、後方に敵の援護機が存在するとしたら、危険なはずだ。

だから第9旅団に対する、さらなるバックアップが必要だと思った。


柳は何度も第9旅団に深追いを止めさせようと、無線で警告を発した。

だが、KJ500Hが撃墜されたことにより、事前に定められた無線交信のルールは崩壊してしまっている。そのため、柳の警告は錯綜する交信にかき消えて、第9旅団には届かなかったのだった。


だが、第9旅団の心配ばかりしていた柳少佐は、途中で考えを変えた。自分自身にとって、より危険な状況に気づいたからだ。

KJ500HをF22が攻撃できたということは、さらに後方にいる、空中給油機も攻撃されるのではないか?


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