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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
空を駆ける
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暗転

海上からのESSMを首尾よく回避した柳達だったが、回避機動中に今度は地上のPAC2に捕捉されてしまい、さらなる回避機動を強いられた。

柳の大隊は今度も被弾することなく、回避に成功する。

柳は自信を深めた。日米の対空ミサイルをレーダー反射断面積=RCSに気を付ければ、軽々と回避できることが分かったのだ。

ということは、J20ならどんな任務でもこなせるはずだった。


とりあえず、日本軍機は沖縄本島の遥か東に追い払ったし、米軍機は地上撃破されたのか、手を出してこなかったから、もはや任務は果たしたと言える。

第1波の後続、J16やJ10で構成された戦闘爆撃機隊が、沖縄を安全に爆撃出来る状況は作りあげることが出来たのだ。

さきほど柳の邪魔をした日米の艦隊にしたところで、柳達が捕捉し、データリンクで友軍が存在に気づいているはずだ。

第1波のうち対艦ミサイルを搭載した部隊が、対空ミサイルを撃ち尽くした敵艦隊にトドメを刺すはずだった。

(前述の通り、逆探知により攻撃済みだった)


2025年4月2日 04:32 那覇市上空


まだ燃料の残っている制空隊のJ20は、爆撃隊第1波のJ20戦闘機20機および、J11戦闘機90機の護衛と共に、100機ものJ16戦闘爆撃機の大編隊を援護した。

J16はJ11をベースに開発された、強力な戦闘爆撃機だ。


J11のうち12機は、ロシアから購入していたR37M超長距離空対空ミサイルを装備している。

AWACSキラーと西側から呼ばれるこのミサイルは、その名の通りに空中戦域の後方に位置する、AWACSや空中給油機といった、西側戦闘機の戦闘能力や運用の自由度を高める「高価値目標」を攻撃するために開発された。

その射程は、ブースター使用時で実に400キロに達し、下手な巡航ミサイルよりも射程が長い程だった。

ただし、超長射程と引き換えに、空対空ミサイルとしては大型かつ、やや鈍重で、基本的に大型で運動性の低い目標を遠方から攻撃するのに使用される。

中国も、同様の超長射程対空ミサイルPL17の開発を行っていたが、先行量産型が極少数海軍に渡っているだけだ。


12機のJ11は2発ずつ、24発のR37Mを装備していた。

他、J16のうち12機は電子戦機のD型で、妨害電波を放射しつつ対レーダーミサイルを使用して、日米の迎撃ミサイルを制圧するSEAD任務を担当していた。


J16のうち、さらに36機は対艦ミサイルを装備していたから、対空ミサイルを撃ち尽くした日米艦隊に止めを刺すことが出来る。


残り約50機は、沖縄本島上空に進入して、那覇、嘉手納にダメ押しの爆撃と、対空ミサイルと対艦ミサイルを見つけ出して、ランチャーごと破壊する任務を帯びていた。

露払いのJ20旅団が先頭を切り、100機ものJ11に直接援護を受けた攻撃隊は、整然と沖縄に向けて進撃していく。

日米の戦闘機による迎撃は無い。敵艦隊も長射程の対空ミサイルを撃ち尽くし、手が出せないでいる。

「まるで演習だな。」

その様子を無線交信とレーダーと、データリンクで確認していた柳は、作戦が計画通りに進捗していることに安心した。

(攻撃隊が日米の対空ミサイルを沈黙させたら、制空権は完全に我々の物だ!)


柳は中国の偉大な勝利の歴史の先頭に立っていた。

制空隊の隊長である、付上佐がJ20の指揮管制型であるS型の後席から、誇らしげに周辺空域に敵機が存在しないことを宣言していた。

敵レーダーの電波は、生き残っている対空ミサイルの捜索レーダーと、敵艦隊のレーダーらしき反応しか無い。

戦闘機のレーダーらしきものは皆無だ。


今や、残存する日本軍の戦闘機と日米のAWACSは、沖縄の南200キロ付近まで逃げていた。

そのAWACS、自衛隊のE767と米軍のE3を逃がすまいと、J20に続いて爆撃隊の先頭グループを飛行していたJ11、3個中隊がR37Mを一斉に発射した。

(これで我々の勝ちだ!)

柳は勝利を確信した。


だが、R37Mは期待された結果を出さなかった。高価値資産防護戦闘空中哨戒=HAVCAPに付いていた、304飛行隊のF15改8機と、米軍の12機のF22が、大型ミサイルであるR37の探知に成功し、AAM4BとAIM120Dで迎撃。

空対空ミサイルを、空対空ミサイルで迎撃するという離れ業をやってのけ、全て撃墜してしまったからだ。

彼等は、204、304両飛行隊のF15改、JSIが苦戦を続ける状況でも援護には回らず、AWACSの護衛という任務を果たし続けていた。


付上佐はデータリンクを通して、遥か彼方のAWACSらしい反応が消えないのを残念に思った。

しかし、敵はR37Mのさらなる攻撃を警戒して、沖縄からさらに300キロ以上の距離へと逃げ出しつつあるのを確認した。

日米のAWACSのレーダーの探知距離は、350キロから500キロ程度のはずだから、これだけ沖縄から引き離せば、かなりの制約を与えられるはずだった。


2025年4月2日 04:34 那覇市上空


柳少佐はしつこくロックオンを試みてくる、対空ミサイルの照準レーダーを躱しつつ、沖縄から離れすぎないようにしていた。

部下も離れ離れにならないようにしないといけなったから、部隊を維持するのが中々に大変だったが、J20での日米のレーダーの躱し方が、なんとなく掴めてきたように思え、生残への自信も深まってきたところだった。

もう少しで、爆撃隊は沖縄へのダメ押しの攻撃を開始するだろう。


その時、無線が急に騒がしくなった。

妨害電波が放射されているのか、友軍の無線が聞き取りにくい上に錯綜していた。

耳をすますと、悲鳴混じりの途切れがちな無線は爆撃隊からだ。

さらに電子戦パネルに新たな反応。セントラルコンピューターは、米軍のF22のレーダーだと言っていた。今まで現れていなかったF22が味方の悲鳴と共に出現。


柳は瞬時に何が起きているのかを理解し、血の気が引くのを感じた。


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