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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
1年前 まだ日常と言えた頃
7/221

交通事故 

2024年4月1日 08:05 東京


花を沖縄に送り出した真紀子は、10年以上ぶりに一人暮らしをしている。

何かと理由をつけて花に電話をしたり、チャットでメッセージを送るが、たちまち鬱陶しがられてしまった。


寂しくはあったが、いつかは来ることだと自分に言い聞かせ、前向きに考えるようにする。


花が生まれて以来、真紀子は自分のためには殆ど金を使わずに来た。しかし花が卒業して就職してくれれば、多少は自分のために使える金も出てくるはずだ。

そうなったら人並に旅行やイベントに出かけることもできるだろうし、ペットを飼うのも良いかもしれない。

おそらく、花の奨学金は肩代わりすることになるだろうけど。


花のためにと、ずっと頑張ってきた。その花が側にいないことを真紀子は頭では理解しつつも、気持ちの面でまだ受け入れられないのだ。

いたたまれなくなった彼女はテレビをつける。


朝のニュース番組が事故の、いやひき逃げ事件のニュースを流していた。

被害にあったのは男性2名で、即死。

逃げた車は見つかっていないらしい。


被害者の一人は、ウクライナ戦争が始まって以来、テレビで見かけるようになった軍事専門家だった。

柔らかい物腰で難しい情勢を独特のユーモアを織り交ぜることで、真紀子でも分かり易く説明してくれるため、彼女はその顔と名前を憶えていた。

もう一人は、一般人の軍事マニアだった。

マニアとしては有名らしく、有名なアカウント名でSNSに軍事関連の投稿をしていた。この手のアカウントとしては最もフォロワーが多かったらしいが、真紀子は興味が無いので知らなかった。


二人は昔からの友人で、昨夜都内で酒を飲んだ帰りに被害にあったらしい。

二人共に最近SNSで殺害予告をされていたこともあり、確信犯による犯行説まで出ているらしかった。


いきなりひき逃げのニュースで気が滅入る。しかもしばらく引っ張りそうだ。

もう少し気楽に見れる番組は無いかとチャンネルを変えるが、これといった番組も無い。若い頃は興味のあった芸能関連のニュースも、他人のキラキラした人生を見せつけられるようで苦痛だった。

結局彼女はつけたばかりのTVを直ぐに消してしまった。


少し早いが出勤してしまおうと決心する。隣の席に座る上司の施設長は会社や他人の批判ばかりしてるような人間で、正直苦手だ。だが、子育てに苦労していると愚痴を言ってみせれば機嫌は良くなるはずだった。

そんな人間の相手など普通は面倒しか感じない。しかしそれでも、今の真紀子にとっては花のいない自宅で過ごすよりはマシなのだ。


支度を終えた真紀子はスマホを取り出して待ち受け画面を眺める。花と彼女が並んで映っていた。

先月沖縄に花の引っ越しを手伝いに行った時、花の下宿に泊まり込んで1日だけ母娘で沖縄旅行をしてみたのだ。

その時の記念写真だった。


彼女は、これが花との最後の思い出になるとは思っていない。


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