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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
南の島に降り注ぐモノ
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その頃の大阪

2025年4月2日 04:15 大阪 上本町


フリーランスのプログラマーである谷啓二は、この朝Jアラートに叩き起こされた大勢の日本人の一人だった。


彼はクライアントから昨日、急ぎで発注された案件(発注書の納期は先月の31日だが、先方の予算消化の都合ために、年度を超えてるのに発注され、しかも書類上では30日に発注されて、翌日31日に納品扱いという、アレな案件。実際の納期は「なる早」。

無茶苦茶以前に、コンプラ的にあり得ない納期を除けば、ドル箱案件だったので受けた)を在宅でのわずか3日の突貫作業で目途を付け、数時間前に仮眠をしたばかりだった。

(ちなみに、彼が成し遂げたのは、平均的なプロジェクト・リーダーが14~21日は必要とするボリュームだった。それだけ尻に火が付いたクライアントが谷に依頼してきたのだ。)


案件の内容が内容ということもあって、とりあえずの品質は度外視しても良いとのことだったので、谷の体感で6割の完成度まで持って行ったところで、ひとまず安心していた。


Jアラートの指示に従って、近くの地下鉄谷町九丁目駅に避難しようかと思っていると、電源をつけっぱなしでスリープ状態だった作業用PCが、赤い光を放っていることに気付いた。

何気なく目をやると、モニター一杯に中国の国旗「五星紅旗」が映し出されていた。

「これマ?サイバー攻撃ってヤツ?」

つぶやいた谷はPCを触るが、うんともすんとも言わない。再起動しても「五星紅旗」を映すばかりだった。


彼のPCは中国製だった。中国製PCにはウイルスが仕込んであるという話は、都市伝説だと思っていたが、どうやら本当だったらしい。

「まあ、サイバー攻撃なら不可効力だよな・・・。納期遅らせてくれるかなあ。ってか、復旧できんのかよコレ?」

とはいうものの、クラウド(AWSのS3)に退避しておいた成果物を早めに回収しようと考えている。

外付けの記憶装置も中国製だったから、自宅のバックアップも信用できない。


この時点で時間とともに、日本全国に中国側のサイバー攻撃による、システム障害の波は広がりつつあった。


谷がTVをつけると、那覇空港が炎上していた。

「嘘やん・・・。こら逃げなアカンかあ?」


外に出ると早朝なのに人通りが多い。皆駅の方向へ向かっていた。


大阪メトロ谷町九丁目駅の入口では警察と駅員が入口を開放して、「入って!入って!」「中に避難して下さい!」とスピーカーで叫んでいた。


構内に入った谷は、スマホで情報を得ようとしながら、箕面の実家と連絡をつけようとするが繋がらない。電話は通じないし、メッセージアプリも反応が無い。SNSもパンク気味だ。


こんな時だというのに、しっかりと某球団の縦縞キャップを被った(全然知らない)おっさんが話かけてきた。

「兄ちゃん電話繋がらんやろ?えらいこっちゃやで。こんなん阪神淡路の時以来や。あの地震も、もう30年も昔の話になってもうたなあ。」


28歳の谷にはイマイチ共感できず、愛想笑いを浮かべて(変なん捕まってもうた、と思いながらも)某球団の開幕スタートダッシュに話題を切り替えた。大阪では大抵の場合、初対面の人間相手の会話でも某球団の話題でなんとかなる。


会話をしながら朝イチで日本橋に走って、中古でいいからPCを確保しようと考えていた。多分、中国の部品を使っていないPCの争奪戦が起きるはずだ。PC難民になったら仕事にならない。無論そもそもの話として、生きていればの話だとは思う。


ネット上では北や中国から、核や化学弾頭を撃たれる可能性も広がりつつあったのだ。

(頼むぜ・・。)

谷は普段意識してこなかった、自衛隊に心の内で初めてエールを送った。

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