表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
カウントダウン
63/221

エイプリルフール

2025年4月1日 22:20 東京 首相官邸危機管理センター


首相をはじめ、国家安全保障会議のメンバーは、官邸地下の危機管理センターに入っていた。


モニターには澤崎の記者会見が映っている。

会見を主導したのは官房長官だった。国家公安委員長は、自首してきた澤崎の証言には裏取りが必要と考えたが、時間が無いと考えた首相の判断により会見が行われた形だった。

澤崎の証言もあり、ここ1年の政権の混乱に中国が関与していることが濃厚となった。総理はこれまでの恨みを込めて、思いきりの良い判断を下すようになっている。


既に自衛隊は臨戦態勢と言って良い。宇宙作戦隊はいつでも衛星の退避行動を開始できる。サイバー防衛隊も同様に、サイバー攻撃への警戒態勢に入っている。

海上自衛隊は捕捉している敵性潜水艦に対し、反撃許可を与えられていた。

航空自衛隊のCAPも、敵戦闘機に対する反撃許可を与えられている。

陸上自衛隊の特殊作戦群、海上自衛隊の特別警備隊は、沖縄県内での敵特殊部隊による破壊活動に対して、米軍の特殊部隊と協力して阻止する命令を受け、既に行動を開始している。


「台湾からの難民の流入は?」

「今のところ懸念していた程ではありません。僅かと言って良いです。向こうの総統府が、漁船での避難は海上での交戦に巻き込まれる危険と機雷に触れる危険があるから、軍を信じて台湾に留まるように繰り返しアナウンスしているおかげかもしれません。」

「国内でのテロ活動は?浜名湖橋と石垣港以降何も起きてないぞ。静かすぎないか?」

「公安に加え、米国の諜報機関が以前から秘密裏に調査を進めていたおかげで、九州や本州の活動はかなり抑え込めています。ですが、これから活動が活発化してくる可能性もありますから、予断は禁物です。」

「分かった。沖縄に敵の特殊部隊が上陸してきたのは本当なんだな?」

「間違いありません。かれらは、自爆ドローンの他、ピンポイント爆撃に使うレーザー照準器や、GPSの座標を特定する装置を所持していました。まず間違いなく中国は破壊工作に留まらず、沖縄本島も爆撃してきます。」


そこで防衛大臣に統幕長が相談をしてきた。歯切れが悪い。

「特殊作戦群からの要請です。米軍特殊部隊と共に敵破壊工作員を制圧中ですが、その・・、」

「なんですか?」

「破壊活動を行うグループに日本人が含まれていた場合、彼等を射殺しても宜しいでしょうか?」

彼女は絶句した。「敵」に同胞が含まれるのは想定外だったのだ。

総理が間に入る。

「私が許可する。現場の判断でテロリストと見なして射殺したまえ。

ただし、出来るだけ投降の機会は与えるように。

問答無用の射殺は、余程切迫していない限りは厳禁だ。今の発言は公式記録として、確実に残してくれ。いいな?」


2025年4月1日 22:20 嘉手納町


李達は嘉手納町に移動し、そこで車載のTVで澤崎の会見を見た。

部下達が視線を向けている。李は部下達が言わんとしていることを察して答えた。

「問題無いさ。今更奴が我々のことを暴露したところで、NPOや学生の連中は簡単に事実を認めることは無い。

何割かは脱落するかもしれんが、大半の連中は我々への協力を続けるさ。自分達の間抜けさを今になって世間に認める勇気は、奴らには無いからな。知事が良い例だろ?

それに解放軍が攻撃を仕掛ける大義名分は成立した後だ。我々の任務は成功しているよ。

それより慎重に行動しろ。ここは米軍の警戒が厳しい。」

「了解。」


李の部下は、5人がキャンピングカーで共に行動していたが、うち4人は追加の命令で、これから嘉手納基地の敷地に潜入し、爆撃の誘導をすることになっていた。

レーザー誘導爆弾用のレーザー照射機は、やはり反社を使って密輸したものだった。

照射機は、中国の工作員だけでなく、李達が活動を開始する以前から沖縄に存在していた、筋金入りの反政府系組織にも渡してある。彼等は喜んで協力してきた。

NPOや学生団体と異なり、こちらの真意や正体を隠す必要も無かったほどだった。

中国軍の爆撃機が投下するレーザー誘導式の爆弾は、彼等が目標に向けてレーザーを照射することで、レーザーの反射に向かって吸い込まれるように誘導されることになる。



2025年4月1日 22:45 ホワイトハウス


アメリカでも国家安全保障会議が開かれている。

国家情報長官と、国防長官、統合作戦本部議が大統領に緊急の報告を行っていた。

「大統領。中国軍の協力者から、国家主席による作戦決行の演説があったという報告です。報告は複数の人物から入っています。」

「そうか。いよいよか。避けられないのだな。」


アメリカ側はここ1週間、日本や他の西側諸国と共に、中国の危険な兆候を捉える度に、懸念を表明し続け、特使を派遣して中国側に自制を促してきた。

だが、中国は止まることは無かった。

中国の報道官は言い掛かり、米国の妄想、批判には当たらないと繰り返すだけだった。

むしろ、アメリカ軍の展開を批判している程だ。

アメリカとしても、今更中国が止まるつもりは無いだろうとは考えている。だが、平和的な解決の追求は、可能性がまだあるなら、あきらめるわけにはいかなかった。


一方で、大統領は去年から苦しめられてきたスキャンダルが、中国側の政治工作によるものと判明して以来、復讐の機会を待ってもいた。危うく大統領選で敗北寸前だったのだ。


「大統領。太平洋軍と宇宙軍に作戦開始を命令します。よろしいですね?」

「よろしい。やりたまえ。だたし、繰り返すが相手に先に手を出させるんだ。宇宙軍の戦いは目に見えないから、慎重にな。」

「分かりました。」

「それから作戦名は「太平洋の盾」だったな?」

「その通りです。大統領。」

「作戦名を変更しよう。」

「はあ?」

「新たな作戦名は「エイプリルフール作戦」だ。私には中国の考えている事が、出来の悪い冗談としか思えないんだよ。」


同時刻 宮古島


花と中村はテントの中で澤崎の会見を見た。

「今の、ど、どう思う花ちゃん?」

「嘘!こんなのエイプリルフールだよ。だいたい今の会見、東京だったよね。なんで澤崎さんが東京に居るの?きっと東京政府の連中に、拉致されて無理やり言わされてるんだよ!」

「うん、きっとそうだね。。。」


彼等のチャットのグループでの投稿は、当初は花と同意見ばかりだった。だが、一人が

「ごめん。俺抜ける。最近なんか変だと思ってたんだ。今までありがとう。」

と投稿した途端に、追随する者が続出した。花や中村は説得の投稿や、電話での説得を試みたが流れは止まらない。

「私直接行って、説得してみる!花ちゃんここにいて!一人で無茶したらダメだよ!」

中村はそういうと、テントから出て行こうとする。

花は「うん、お願いね」と言って中村を送り出した。


ここも危ないと思った。裏切った連中が、花と中村の待機場所を通報するかもしれない。

中村だって本当に説得に向かったのか怪しい。花は中村の態度に高校時代に彼女を裏切った(実際は見限った)かつての友人達と同じものを感じていた。

(中村は本当に仲間の説得に向かっていたものの、この後すぐに警察にあっさりと身柄を拘束された。とは言え、中村はSONの活動の変質には気付いていた。

元々は牧歌的な環境保護活動がしたかったのに、反政府活動ばかり熱心に行っていることにハッキリと違和感を感じていたし、メンバーが親子関係を崩壊させることを奨励するかのような方針には、違和感どころか反感を抱いていた。

だが、根っからのお人好の彼女は、一度は仲間と認めたSONと縁を切ることが出来なかった。

同様に、沖縄で出来た最初の友人であり、危なっかしい花を放っておくことも出来ず、付き合っていたに過ぎない。まるで愚かな主君に最後まで忠義を尽くす、中世の忠臣のような気質の持ち主だったのだ)


花は持てるだけの荷物を持つと、場所を変えようと徒歩で移動し始めた。最悪、水とスマホと予備バッテリーさえあれば、何とかなると思う。

(結局、高校の時に私を裏切ったあいつらと皆同じ。だれもかれも私を裏切る。

私は群れてないと何も出来ない連中とは違う。一人になっても、信じることをやるだけなんだから!)


テントの中で、一時冷静になりかけた花だったが、結局は妙な思い込みに支配されている。澤崎の会見も、中村もギリギリのところで信じることが出来なかったのだ。


こうなったら頼みの綱は久米だけだと思った。彼女に電話をしてみたが、繋がらない。

それでも花は止めようとせず、最後の一人になっても、自分に出来ることをするつもりだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ