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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
緊急展開-自衛隊に託される希望
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石垣港事件

2025年4月1日 08:30 黒島


久米が企画し、SONに依頼して来たのは、フェイク動画の撮影だった。

まず、「いんでぺんでんと・おきなわ」が保有している中古のプレジャーボートで抗議活動を装って、自衛隊の艦船に故意に衝突させる。

その上で、撮影した動画を編集加工し、自衛隊の艦船が抗議船に横暴にも体当たりをしたように見せかけるのだ。


「いんでぺんでんと・おきなわ」は環境保護活動に使う名目で、中古のプレジャーボート2隻を石垣島に保有していたが、肝心の船舶免許を持っている人間が居なかった。


そこで購入資金を提供した中国側は、澤崎に指示を出した。澤崎は小田をおだてて、船舶免許を去年取らせたのだ。

小田としては、沖縄でのクルージングをしてみたがっていた青池の気を引くつもりだったのだが、その後で青池は自分でも免許をとって、一人でクルージングを楽しむようになっていた。


プレジャーボートはレンタル業者を使えば非常に高価で、学生の出来るようなレジャーではなかった。

だが、「いんでぺんでんと・おきなわ」は先を見越して、二人に燃料代まで負担して自由にボートを使わせてきた。

二日前に教えられた花は知らなかったが、この行動自体は以前から計画されていたのだったのだ。


2隻のプレジャーボートは、普段は石垣港第2堤防付近の波止場に係留されている。

そこから出航しようとすると、石垣海上保安部の前を通過する形となって、簡単に目をつけられてしまう。

そこで、那覇から移動してきた石垣班のうち、小田と青池は別行動をとった。石垣島に到着後すぐに港へ向かってプレジャーボートに乗り込むと、石垣島南西10キロの黒島に移動していたのだ。


黒島の北にある桟橋に到着した2隻は、そこで待機した。船舶位置情報システムAISは、小型船舶のため設置義務は無い。


青池と二人きりになるチャンスに、小田は色めき立った。しかし、澤崎は容赦なく「間違いが無いように」と青池には民宿を手配し、小田には船に残っての見張りを指示していた。

小田は酷くがっかりした。


青池が上陸した後はやることが無い。仕方なく、八つ当たりとして親露派、親中派アカウントとしてネットでの活動を延々と行い、ウクライナと日本に対する罵倒と侮辱を繰り返していた。

宝石のようなビーチの上に浮かぶボートでの過ごし方としては、あまりにも勿体ないと言える。


充電しながらSNSを触ってばかりいた小田だったが、石垣港から連絡があった。

石垣港に入っていた海上自衛隊の「輸送艇2号」に出航の兆候があるらしい。

連絡を寄越したのは、昔から自衛隊や米軍の活動を「監視」する活動を行ってきた「市民」団体だった。

青池がしばらくすると、プレジャーボートで運んできた自転車を走らせてやってきた。

「おはよう!小田っち眠れた?」

「・・・ええ。青池さんは?」

「眠れたけど、民宿の人が避難しちゃったの。宿は使っていいって言ってくれたけど、悪い気したなあ。」

「悪いのは政府ですよ。じゃあ、行きましょうか!」

「うん!小田っち、大変だけど頑張ってね!」


小田が体当たりを実行し、青池がその様子を撮影する。素人目には民間フェリーと見分け難いPFI船や、海保の船ではインパクトが弱い。灰色の海上自衛隊の船に「当たる」必要があった。

かと言って、護衛艦は沖合を高速で動き回っていて、見つけるのも接近するのも難しい。

そこへ石垣に横須賀から「輸送艇2号」が移動してきて、石垣港を拠点に離島間の輸送を始めたのだ。

時速にして22キロしか出ない「輸送艇2号」なら、港の出入りをする瞬間を狙い易い。彼等は目標を決めた。


澤崎経由で計画実行を久米が指示して来た時、ちょうど「輸送艇2号」は、早朝に鳩間島からの避難民を石垣港に移送してきた所だった。

給油をしていた「輸送艇2号」のエンジンが始動したとの連絡を受け、たった二人の石垣班別動隊は行動を開始した。


普段2隻が係留されている波止場は、港内への出入りを封鎖されているらしい。

2人は読み通りだと思って喜んだ。前もって黒島に移動しておいたかいがあったからだ。

だが、二人の喜びは長続きしなかった。

竹富島にさしかかったところで、海上保安庁のAW139ヘリコプターにあっさり見つかったのだ。

海保は離島からの避難というわけでもなさそうな2隻の様子を警戒していた。


2025年4月1日 09:45 石垣港


ヘリから連絡を受けた海上保安庁は、ボートを展開させて待ち構えていた。

2人は計画通りに新港地区の旅客船ターミナルと沖港防波堤の間を強引に突破しようとしたが、そこで前後を海保のボートに取り囲まれて、身動きできなくなってしまった。

ボートの指揮を執っているらしい巡視艇が、スピーカーで係留地に戻るように言ってきた。


青池にいいところを見せようと小田は張り切っていたが、既に自衛隊の船は港から出て行っていた。青池がスマホで連絡してくる。

「しかたないよ。小田っち。諦めて帰ろ。私はダメ元でこの人達と交渉してみる。」

(交渉ってなんのだよ・・・。)と思いつつ、がっかりしながらも小田は諦めて帰ろうとしていた。


その様子を旅客船ターミナルに配置した、部下のライブ画像で見ていた李はつぶやいた。

「うーん。日本軍の輸送船の方が良かったが、仕方あるまい。準備はいいか?巡視艇とボートが画面に入っている瞬間を逃すな。チャンスは一度しかないぞ。青池がいい位置で止まって突っ立っている。ついでにやれ。」


李から命令を受けた部下は、遠隔で小田のプレジャーボートのエンジンルームに隠してあった、C4爆薬を遠隔で起爆した。爆薬類は以前に反社の漁船を使って密輸してきたものだった。


何か打つ手はないかと、海保のボートに乗る保安官達との交渉を試みた青池は、後からの轟音と衝撃に振り向いた。

煙と水柱が見えたが、小田のボートの姿は見えなくなっていた。

何かが自分の周りに降ってきて、ぽちゃぽちゃと、小さな水柱をたてている。


「え?何?何?小田っち、どこ行ったの?」

青池は何が何だか分からなかった。

海保の隊員も、呆然としている。一瞬の静寂が訪れた。


その時、虫の羽音のような音がしたと思ったら、周りで何かが弾けた。一度、二度。

青池は戸惑うばかりで立っていた。まさか銃撃を受けていると思わず、伏せたり身を隠そうなどとは思わないでいる。


次の瞬間、青池は強い衝撃に襲われ、彼女は何かが体を通り抜けたと思った。

その箇所に強烈な熱さを感じるのと同時に、体から力が抜けた。港を見ていたはずが、空を見ている。

空を見ていた目も、あっという間に暗闇に閉ざされ、何も分からなくなっていく。


二発をわざと外させたあと、青池を狙撃させた。彼女がボート上に仰向けに倒れるのを確認した李は、部下に離脱を指示した。

海保側が状況を理解する前に、李の部下の乗り込んだワンボックスはサザンゲートブリッジを通って石垣市街に逃げ込んだ。

県警はサザンゲートブリッジを封鎖したが、後の祭りだった。


「いい画が撮れたぞ。30分で加工して、久米に送りつけてやれ。」

バイアスがかかっている人間には、海保が2隻の抗議船のうち、1隻を巡視船で撃沈し、もう1隻は乗り込んでいた若い女性を、保安官が銃殺したように見えるはずだった。


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