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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
緊急展開-自衛隊に託される希望
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ゲストハウス

2025年3月30日 21:05 宮古島


SON宮古島班の面々は、ゲストハウスで疲れ切った表情を浮かべていた。


連日、自衛隊や米軍の移動に抗議しようと試みたが、まるで上手くいかず、徒労に終わっていたからだ。

原因は警備にあたる警察が、これまでとは次元の違う、断固とした対応で近寄らせなかったからだった。

SONの若者は血相を変えて、阻止線を張る警察官達に罵声を浴びせたり、「今彼等を止めないと戦争になっちゃうんだよ?わからないの?家族を戦争から守りたくないの?」と説得を試みたが、無駄だった。


せめてドローンで上空から様子を探ろうとしたが、SONが持ち込んだドローン4機は、次々と操縦不能になって帰ってこなかった。

後で知ったが、国会で野党の猛反対にもかかわらず、与党は時限立法を次々と強行採決で成立させていた。

その中には、自衛隊の展開予定地域や移動中の様子をインターネットに投稿することや、付近にドローンを飛行させることを禁止するものがあったのだ。

警察はこれを根拠に彼等を強硬に排除してきたし、機動隊は新たに装備した、三菱重工が開発したばかりの対ドローンレーザーシステムで、ドローンを焼き落としたのだった。


欧米系のSNSも、彼等への支持が薄れ始めているように感じられた。

気落ちするメンバーを花は元気付けていた。ならば中華系SNSで真実を広めれば良い。


宮古島では島民が避難を開始したことで、物資の流通が混乱していた。おかげで食料品が手に入りにくくなっている。

しかも物資の手配は李の担当だったが、なぜか急に連絡が付き難くなっていた。

食料もだったが、失ったドローンを手配する必要もある。


困った宮古島班の面々を代表し、花が澤崎に連絡すると、李は各島に散らばったメンバーへの手配で手いっぱいになっているらしい。

実際には、浜名湖橋爆破事件以降に公安の活動が厳しくなったため、拠点の中華料理屋を撤収し、位置を頻繁に変えつつ電話連絡を控えているためだったが。

澤崎は食料やドローンは、自分が手配すると言った。

「八木さん、お母さんとは仲直りしたの?」

「いえ、まだです。でもこれは母を守るためでもありますから。これが終わったら、母も私達の活動をきっと理解してくれます。そうなったら晴れて里帰りします。」

「そう・・・。仲直り出来るといいね。」

その澤崎の態度に花は違和感を感じた。

(なんだろう。澤崎さんは親離れを奨めていたはずなのに。親離れと、仲直りは別ってことかな?)


澤崎は電話を切る。花達は先島の島々が独立するようなことがあっても、当たり前のように「日本」と行き来できると思っていた。

もう家族と会えないかもしれない、という発想は彼等にはない。

「バカが・・。」

澤崎は顔を押さえる。酷く疲れた気がしていた。


澤崎との電話を終えると、花は出発前に母からの手紙がポストに入っていたのを思いだした。

大事なやり取りは殆どメールやアプリを通して行っていたから、ポストの郵便はたまにしか確認していない。

さらに今時、手紙を出してくる人間が居ると思わなかったから、手紙はしばらくポストに滞留していたようだった。下宿を急いで出発した時、花はポストをチェックすることに辛うじて思い至り、見つけた手紙を一応バックパックに入れてあったのだった。


内容に想像が付く気がして読むのが億劫だったが、今は時間も余っているので読んでみた。

「あ・・・。」

花は怒るかもしれないが、29日から31日まで那覇に来るわね。とあった。

母に待ちぼうけを食らわせたようだ。さすがに悪いことをしたと思う。

前回の電話での大喧嘩も、今から思えば言い過ぎだったし、未だに着信拒否しているのもやり過ぎだと思った。

ここで活動している以上、母に会いに行きようもなかったが、せめて一言でも謝罪の電話を入れて帰らすか、沖縄観光でもさせようかと迷っていると、久米から電話が入った。


「八木さん夜遅くにごめんなさいね。そちらはどう?」

「厳しいですね・・・。」

「こちらもよ。さっきのニュース見た?」

「いえ。何かありました?」

「まずいわよ。自衛隊の出動に抗議する人だけでなく、激励に集まろうとする人が増えてるんですって。

とんでもない話だわ。私達が気づかないうちに、政府の洗脳が進行していたのかしら?

こうなったら、あなた達のような真実に気づいている若者が頼りよ。SONさんも、残念ながら離脱した人がいるみたいだけど?」

「ええ、逃げちゃった人は一杯居ます。けど、半端な人はこっちも願い下げです。」

「えらいわね。とにかく、もう時間が無いから私達も前田先生を立てて、最後の手段に出るわ。」

「いよいよなんですね!」

「そのために、お宅の小田君が石垣島で一肌脱いでくれるわ。あまりやりたくないけど、ボートを使った自作自演ってヤツ。

まあ、右翼や政府はもっと汚いことを山ほどしてるんだから、このくらいバチはあたらないわ!」


久米との電話に続いて、次々とメンバーが話しかけてきたので、花は母への電話のことをすっかり忘れてしまった。


「花ちゃん。花ちゃん。SNSで軍事に詳しい人からアドバイスだよ。」

「どんなー?」

「うーん。移動する自衛隊に近づけないなら、手分けして彼等が移動しそうな場所で、待ち伏せするのがいいんだって。自衛隊って、一カ所に留まらずに、いっつも居場所変えるんだって。」

「なるほどねー。やり方変えてそれで行こうか。」

「あと、こーいう装備の写真をアップしたら深刻さが伝わるってさ。」

「ふーん。82式指揮通信車?あーなるほどね。」

「次はこれ。」

「えーと、でんしせんシステムニュース?アイドルみたいな名前だね。次はさんしきちたいくうゆうどうだん?それから、じゅうにしきちたいかんゆうどうだん?あとは米軍のねめしすたいかんミサイル?」

「要はこいつらがレアキャラで、写真アップされるだけでも、自衛隊には痛いみたい。」


「ふーん。となると、次はどこに来るかだね。」

花はゲストハウスの机に地図を広げる。

「さすが八木さん、こんなおっきな地図用意してたんだ。」

「任せてよ。ちなみに去年の夏、宮古島に来た時に自衛隊が訓練していた場所がここだよ。似たような場所をピックアップして、皆で手分けして網張れば、どっかに引っかかるんじゃないかなあ。」

「なるほど。最悪、野宿とかもすることになるかもね。うーん。きつそー。」

「皆ここは覚悟決めて行こう。僕たちが平和を守るんだ。」

「そうだ!がんばろうぜ!」


勿論「軍事に詳しい人」は、人民解放軍情報支援部隊の人間だった。


彼らは支給された中国製スマホの高性能に感謝していた。

通信を行う際の出力が高く、自分のスマホだと電波が届きにくいような離島地域でも、余裕で通信が出来る。そもそも2年前に構築が開始された、中国版スターリンクとすら契約してあった。


だが、彼等はその意味に気づいていない。


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