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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
緊急展開-自衛隊に託される希望
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緊急記者会見

2025年3月27日 07:00 東京


異例の時間帯に総理の記者会見が行われた。


時間帯も異例ながら、これまでの会見と異なる点があった。

首相は、いつも記者会見では淡々と原稿に目を落としながら、機械的に読み上げるだけだった。

だが、今回は一切原稿を見ずに、自分の言葉だけでしゃべっていたからだ。

口調も今までになく毅然としていた。目にも力がある。

これだけでも、ただごとではないと予感した者は多かった。


会見は朝鮮学校生徒殺害事件に端を発した、北朝鮮の攻撃予告への対応から始まった。

警察が全力で捜査を進めているが、犯人は捕まらず、手がかりもなく、真相究明には時間がかかること。このため北朝鮮に猶予と対話を求めているが、拒否されていることを説明した。

さらに北朝鮮と連携するかのように、台湾海峡の中国軍に不穏な動きが見られることも説明した。


そして、一連の状況を慎重に検討した結果

「最悪の場合に備えた行動が必要になったとの判断に至った」

と語る。ここで一呼吸置いて、次の言葉を紡ぐ。


「ここで言う最悪の事態とは、現状では北朝鮮によるミサイル攻撃と同時に、中国軍による台湾と沖縄に対する武力攻撃を想定しております。

今、我が国が置かれている状況は、まさに存立危機事態であります。」

記者会見場に詰めている記者達が一気にざわめく。悲鳴に近いものもあった。


「ことここに至り。私は日本国総理大臣として、自衛隊に防衛出動命令を命じました。

断固として、日本国民の生命、財産を守れと。既に自衛隊の各部隊は行動を開始しております。」

TVではすかさずテロップが入る。

「首相。自衛隊に防衛出動命令」

そして首相は、米軍からの情報も総合的に判断した結果、上海方面に集結している中国軍上陸部隊は、台湾ではなく、沖縄のいずれかの地域、特に先島諸島への上陸を企図している可能性が高いと、はっきり述べた。

同時に緊急速報が、あらゆるメディアを駆使して日本中を駆け巡っていった。


続いて、沖縄地域、台湾、中国への渡航は自粛。

南西諸島への弾道弾と巡航ミサイル攻撃を迎撃し、同時に予想される上陸作戦から防御するため、直ちに自衛隊を南西方面に増派。これらの部隊を南西方面集団司令の指揮下の南西方面統合任務部隊とする。

同じく、全国の重要目標と人口密集地を防護するため、陸自、空自の高射部隊、空自の戦闘機部隊、海自のイージス艦、それらの護衛部隊とが展開。これを統合防衛任務部隊として、統合作戦司令官が指揮することが発表される。


さらに先島諸島の住民に対する、沖縄本島か本土への避難の呼びかけが行われた。


国民全般に冷静に対応し、買い占め等を行わないこと、特に在日朝鮮人、中国人に対する不当な迫害を決して行わないことを呼びかけ、さらに詳細な国民に対する説明は官房長官に代わると説明し、最後に付け加えた。

「先ほど米国大統領と緊急に電話会談を行いました。私は日米安保に基づいた、米軍の支援を要請したものであります。米国は全面的な支援を約束してくれました。」


2025年3月27日 08:00 東京駅前


号外が配られていた。

「号外!号外!防衛出動命令です!」

「沖縄や中国に関係者が居る人は受け取って下さい!」

出勤途中の足を止めて号外を読む人々は、大きなヘリコプターの音に顔を上げた。

約10機のCH47ヘリが、木更津から南へと向かっていく途中だった。

普段の東京では目にすることの無い光景だ。

ざわめきが広がった。

「うそ・・・。本当に戦争になるの?」

「仕事行ってる場合?日本から逃げないとやばくない?」

「取引先にミサイル当たってくれないかなあ・・・。」

「もしもし、俺だ。ウチのサービスのバックアップはどうなってる?クラウドの東京と大阪のリージョン?やっぱそうだよな。

いいか、今から言うことを録音しとけよ。

バックアップを北米とオーストラリアのリージョンにも拡大するんだ。

直ぐにやれ。予算稟議は今から俺が通す!急げ、下手すりゃ大阪と東京のクラウドセンターも北のミサイルにやられるぞ!」


出勤中の民間OSINT勢の中の数人は、通勤電車の中で、思ったよりも自衛隊と米軍の動きが早まったことに安堵を覚えて、普段通りに仕事に向かった。


一方、彼等とは逆に、政府の決断に怒りを覚える集団も居る。



2025年3月27日 09:30 那覇



花は澤崎が流したチャットメッセージにより、「いんでぺんでんと・沖縄」の事務所に呼び出され、先に来ていた人間と総理記者会見の話で持ち切りになった。

誰もが「とんでもない話」と言っており、肯定的に受け止めた者は皆無だ。

人数が集まると、久米が演説を始めた。


「皆さん!朝早くからお呼びだてして申し訳ありません。ですが!大変なことになりつつあります!朝の記者会見はご覧になりましたね?

政府は日本が悪いのに、北朝鮮を悪者にして、何故かこの沖縄に自衛隊を大量に送り込むことを決めました。このままでは沖縄戦の悲劇が再現されます!

全力で阻止するための行動を起こしましょう!

報道で発表された自衛隊の派遣先に先回りし、抗議と妨害をし、その様子をマスコミと連携して世論に訴えかけるのです!

今、私達が戦わなければ、歴史は誤った方向に進んでしまいます!

こんなことが二度とおきないよう。我々は日本とアメリカと決別します!今日を沖縄独立の記念日にしましょう!」

拍手と歓声が事務所を包んだ。事務所に入りきらない人間は外から賛意を叫ぶ。



澤崎は冷めた気持ちでその中に居た。彼は中心人物の一人ではあるが、あくまで中国に弱みを握られてここまで来てしまったに過ぎない。

(なんでこんなことになっちまったんだろう?)

隣に居た花を見る。ギョッとした。彼女は感動しているらしく、涙を流していた。

(クソっ。このバカ女。俺と違っていくらでも逃げるチャンスはあっただろうに・・・。)


だが、澤崎は花に、内心とは全く逆のことを話す。

「八木さん。君の行動力を発揮する時だよ。SONはいまから総力戦で先島諸島に渡って行動する。

宮古島にゲストハウスを借りたから、先に行って後続の仲間を受け入れて。

後の指示はSNSやチャットでするから。飛行機のチケットは今手配してる。いつでも動けるように、荷物をパッキングしてたよね?」

「はい!任せて下さい!澤崎さんは?」

「僕はしばらく那覇に残る。宮古島班、石垣島班、与那国班に指示出しだ。いざという時は僕も行く。」



2025年3月27日 10:52 那覇空港


タクシーで空港に乗り付けた花は、宮古島行きの便に間に合いそうでホッとした。

空港の様子はいつもと違う。自衛隊や米軍の輸送機やヘリコプターの姿と音が格段に増えている。

「今に見てなさい!あなたたちの好きになんかさせない!私達がかならず止めてみせる!」

花はつぶやくと、バックパックを背負って出発ロビーに駆け出した。


花を降ろしたタクシーは客待ちの列の最後尾についた。

ラジオは物騒なニュースを流し続けている。運転手はどうしたものか思案しながら、客待ちを続けた。

30分程で新たな客を乗せることができた。彼はバックミラーで客を見ると、既視感を感じた。

顔立ちがさっきの若い女性客に似ている気がしたからだ。


真紀子だった。

彼女は大学生向けの下宿が多い地区を指定した。

「これから娘に会いにいくんです」と声を弾ませている。


彼は暢気な声で「そりゃいいですねえ」と合いの手を入れた。


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