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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
静かすぎた夏-兆候
31/221

那覇警察署騒乱

2025年3月2日 10:25 那覇市内


澤崎は李に呼び出された。


「何年か前に県警と少年達がもめて、少年達が警察署に押しかけた騒ぎがあっただろ?」

「ああ。覚えている。」

「あれと似た騒ぎを起こすから、君達も警察署に抗議行動を行え。いつも通り、動画を撮影してSNSと動画サイトにアップしろ。」


「おい、まさか。」


「心配するな。少年達は多少怪我をするかもしれんが、あの事案程酷くはないさ。

それにな。」

李は悪趣味な笑みを浮かべつつ、言葉を続ける。

「もう暫くしたら多少の怪我人どころか、死人も気にならなくなるさ。」


2025年3月2日 20:12 那覇市郊外


新垣正人は那覇市内に住む「やんちゃ」な少年だ。

17歳の彼は数日前の昼間に、迷惑系動画撮影者を名乗る男に協力を求められた。

パトカーを暴走族が挑発する動画を撮りたいとのことで、新垣と悪友達が何日か豪遊できるだけの謝礼を前金でくれると言う。さらに動画の撮れ高に応じて謝礼を弾むとまで約束してきた。


新垣は喜んでやることにした。

男は、特に証拠になるようにパトカーのナンバープレートを真っ先に撮影しろと言ってきたが、何故かその点だけはしつこく念を押してきた。



そして約束通りの夜中に、新垣のグループは男に指定されたコースを適当に流していた。新垣自身は友人のバイクの後ろに座り、男に渡されたスマホで動画を撮影するつもりで警察の出現を待ち構えている。


すると、おあつらえ向きにパトカーが彼等の集団の前に出て来た。

回転灯を回しながら、「止まりなさい」「暴走行為を止めなさい」とスピーカーで言ってくる。


新垣は仲間に合図して、パトカーを包囲させた。パトカーを囃し立てて挑発させる。

彼自身は忘れないうちにナンバープレートを撮影しようと、パトカーの後方から接近した。


撮影そのものは簡単な話だったが、ナンバープレートに違和感があった。

(横浜ナンバー?神奈川県の警察が沖縄に?)

とりあえず契約は果たした。後は適当に動画を撮り続けてファイルを渡せば、例の男が適当に編集するのだろう。あとは謝礼で派手に遊べるはずだ。


その時、抑揚の無い口調だったスピーカーが、突然ガチギレした。

「止まれって言ってんだろ!このクソガキども!これだから沖縄は嫌いなんだ!」

同時にパトカーは急停車すると、次の瞬間には後進をかけてきた。

タイヤの悲鳴が響く。


彼らは急ブレーキをかけたが、一台がパトカーの非常識な動きを避けきれずに接触、転倒してしまった。

しかもパトカーはあろうことか、そのまま走り去った。


新垣は相棒にバイクを止めさせると、転倒した仲間に駆け寄った。

幸い無傷に近かったが、新垣はキレ散らかしている。

「ふざけやがって!!警察があおりやんのかよ!!」

そこへ、依頼主が何喰わぬ顔で歩いてきた。李だ。


「うわー。こりゃ災難だったな。

こんなことになるとは思わなかったんだ。ごめんね。

お詫びに約束の謝礼に治療費も付けとくよ。大事にな。斜め上の展開になったが、いい映像になるだろう。ありがとう。

ところで、警察に文句言いに行くんだろ?」

「当たり前だろ!警察だからって、なめたマネしやがって!」

「良ければ、その様子も撮影させてくれないか?

俺も知り合いに今の動画を拡散させて、声をかけて、人手を集めて警察への抗議を手伝おうじゃないか。これも何かの縁だろう。いやー、ヒドい話だあ。」

「好きにしやがれ!平良あ!声かけられるだけ声かけて人集めろ!」

「おうよ!ふざけやがって!」

「あー、君らさえ良ければ、火炎瓶の作り方教えようか?オジサン詳しいんだ。」


勿論パトカーは偽物。

パトカーを運転していた偽物警官も李の部下だった。

偽物パトカーは倒産した自動車整備業者の、小さな車庫で本物そっくりに偽装の上、隠してあった代物だった。

この後車庫に戻してバラバラに分解し、反社の漁船で数回に分けて海に捨てることになる。


2025年3月2日 21:02 那覇市内


久米のNPOは、改名して今では「いんでぺんでんと・おきなわ」名乗っていた。

法律上、NPO法人は政治的な活動を禁止されている。

そのため、相も変わらず表向きには、環境保護活動を活動目的に謳っていた。

だが実態は、名前の通りに反政府・沖縄の分離独立が目的だ。

そういう活動をしたいのならNPO法人格を捨てるのが筋だが、取り締まるべき沖縄県が知事の裁量で放置していたのだ。

沖縄県がこのような態度だったから、WEB上でいくら批判されようと久米には痛くも痒くもない。

だいたい、沖縄県知事からして自分の信じる正義のためなら、裁判所の決定に従わなくても良いと考えるような人物だったから、このような部分から沖縄県の秩序は乱れつつあった。


事務所には日曜日の活動を手伝った花達居て、久米達と談笑している。

花はいつの間にか、活動が無くても「いんでぺんでんと・おきなわ」の事務所に頻繁に入り浸るようになっていた。


「あら?澤崎さんから緊急に見て欲しい動画ですって。何かしら?」

「私にも来ました。なんでしょう?」


「見て、八木さん。この動画。酷いと思わない?沖縄に派遣中の神奈川県警のパトカーが、相手が暴走族とはいえ、この沖縄で県民に無茶苦茶なことをしているわ!」

「沖縄に神奈川の警察が?」

「そうよ!辺野古への抗議活動の妨害とかに、政府の連中は他県の警察から応援まで寄越してるの!酷いでしょ?本土の警察なんて、沖縄の人々を虫けらとしか思っていない証拠だわ。だから私達の活動が必要なのよ!あら?澤崎さんから電話だわ。」

澤崎からの入電を終えた久米は、興奮して花に告げた。


「・・・少年達が警察署に抗議に行くらしいわ。私達も行きましょう!」

そこへ花にも澤崎から電話が入る。

「八木さん。動画見た?久米さん達と一緒に警察署に抗議に向かってくれる?僕もいくよ。動画撮影してSNSにアップして。」

「分かりました!」

「それからアップするときには、タグに「沖縄独立」ってつけてね!」


その夜、那覇市内の警察署は、突如として身に覚えの無い不祥事を理由に、大挙して押し寄せた不良グループ、学生、NPOの抗議活動にさらされた。

火炎瓶まで投げつけられた程だが、県警側は冷静に対応した。


一夜明けて事の顛末を把握した沖縄県警は、辺野古等の警備等で他県の警察官が来援することはあるが、市内の夜間巡回に他県の警察官を動員することはあり得ないと説明した。

神奈川県警側は該当するパトカーは実在するものの、当該時刻に神奈川県に存在していたことを説明したが、騒ぎは収まらなかった。

沖縄県知事が両県警の言い分を殆ど無視し、真相究明と責任者の処分を主張。

事態を鎮静化させようとするどころか、警察相に押しかけた連中の「気持ちは分かる」という姿勢だったからだ。


花達が投下した動画はすさまじい勢いで伸びた。

火炎瓶まで投入された騒乱の様子を撮影した、衝撃的な動画は「沖縄独立」のタグと共に急速に拡散していった。

閲覧数も支持も今までにない勢いだった。それは相変わらず中国側の工作だったが、花が「沖縄独立がアツい!」と無邪気に思い込むには充分だった。


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