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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
静かすぎた夏-兆候
25/221

新年早々

2025年1月1日 10:15 那覇


運命の2025年が明けた。


南西方面に配属されていた自衛官達の一部は、今年が今までとは違う年になりそうなことを肌感覚で感じている。


その空気の中にあって、204飛行隊は年末に304飛行隊とアラート任務を交代して、常時6機のF15JSIを即応体制で待機させていた。


日本の領空に接近する国籍不明機に対して緊急発進を行い、必要に応じて対領空侵犯措置を行うことは、航空自衛隊の主要な任務だったが、中国との最前線である那覇においては特に頻度が多い。

必然、アラートに就くパイロットや整備員の負担は大きくなり、那覇での勤務は過酷なものだった。


橋本はパイロットの待機場所であるアラートパッドの外で、タバコを吸っていた。

10時間程前に日付が変わるとほぼ同時に、中国からの新年の挨拶とばかりに不明機が接近。スクランブルがかかった。


対領空侵犯措置を無事完了し、ナイトフライトから帰投した橋本は機体の点検と報告、ローテの調整、トイレ、ウェザーブリーフィング、食事、再びアラート待機、諸々を済ませてようやく一服している所だった。

今回のアラート任務で割り当てられた、F15の機付長の吉良2曹が一緒だ。ちなみに航空自衛隊にはパイロットの「愛機」という概念は無い。

整備員の機付長は担当の機体を持っているので、整備員にとっては「愛機」が存在する。


吉良が橋本に話かける「ハッチさん。なんか去年の夏くらいから、段々とキナ臭くなっているって思いません?中国さん、新年早々気合入りすぎじゃないですか?」

彼は元から多い那覇基地における、対中国機のスクランブルが急増していることを言っていた。

「ハッチ」は橋本のTACタックネームだった。飛行中の無線交信で、お互いを呼びやすいように、パイロットはTACネーム(要はあだ名)を持っている。

普段からTACネームで呼び合う習慣になっているため、パイロット同士だと、お互いの本名が直ぐに出てこないことも良くある話だった。


「そうかもな。なんか聞いてるか?」

タバコを吹かしながら、お互いに最近見聞きした情報を交換する。


このところ、航空自衛隊のRC2電波収集機が頻繁に那覇へ飛来していた。

嘉手納にも情勢がキナ臭くなると現れる、米軍のRC135やRC12が飛来しているらしい。両方とも米軍の電波収集機だった。

電波収集機の活動は機密だから、彼等が何を探っているのかは二人には分からない。

だが、同じ那覇基地に居る海上自衛隊第5航空群のP1クルーの話だと、これまで見かけなかった中国漁船をあちこちで見かけるようになったとのことだった。

彼等によれば漁船は、中国の海上民兵の可能性があるので、電波収集機はこれらと中国海洋警察、海軍との交信内容を傍受しようとしているのでは?と話していた。


隣の那覇駐屯地の陸自の隊員が、市内で陸上自衛隊特殊作戦群や、米軍の特殊部隊デルタフォースやシールズが報道の格好をして市内をうろついてるのを見かけた、という噂もあった。

(特殊部隊の動きがこんなに簡単に露見するわけはないから、これは眉唾ものだと橋本は思った。)


上空から見える那覇駐屯地の物資は徐々に増え、最近ではさらに先島諸島に移送されているらしい。

那覇で収まらない物資は、嘉手納基地に間借りしてまで集積してるらしかった。


吉良が軽く愚痴る。

「中国さん、何だかじわじわこっちの機材と人員に負担かけてきてません?

無人機と有人機が代わる代わるやって来て。年末からこうもスクランブルが続いたら、ウチら整備も予備部品が心配です。

通常国会はどうせ空転するし、こんな時に本当に戦争にでもなったら防衛出動命令も出せないってことになって、手も足も出ないんじゃないですか?」

「俺たちは上がどうだろうと、ドンパチになったら敵を墜すだけだよ。」


その時警報が鳴り響き、二人はアラートパッド内のF15に駆け寄った。

コクピットに飛び乗った橋本は、体に染みついた動作でエンジンやシステムを作動させ、チェックを済ませていく。

最後に吉良と敬礼を交わすと橋本は、搭乗してからわずか3分で離陸を開始。僚機も出遅れることなく続いてきた。

タキシーアウトしながら橋本は空を見つめる。早朝のウェザーブリーフィング通り、上空1000メートル付近から厚い層雲が垂れ込めている。


地上から情報が入る。上海南の岱山基地を発進した無人機が先島諸島に接近中だった。


橋本達は薄暗い雲の中へと突っ込んで行く。

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