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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
戦後の日々
211/221

機動強襲揚陸艦「あかぎ」「かつらぎ」建造

季節は冬になった。


自衛隊が受けた装備の損失を補填するため、新たな国家防衛戦略の第一弾となる、補正予算が成立していた。

その中でも象徴的だったのが、撃沈された「ひゅうが」の代替艦となる艦だ。

満載排水量5万トン。F35Bを20機以上と、水陸機動団1個連隊を同時に搭載可能、かつ30ノットの高速を発揮する機動強襲揚陸艦で、のちに1番艦が「あかぎ」2番艦が「かつらぎ」と名付けられることになる。

「あかぎ」「かつらぎ」の建造は、降りかかる火の粉はためらわずに払う国へと変わりつつある日本から、中国へのメッセージだった。


「あかぎ」型は、海洋国家連合海軍の主力となる「ライトニング空母」のモデルケースとなる艦でもあった。

「あかぎ」型をベースとする艦は、仕様を調整しながら国内外で量産され、日本で建造して国外に輸出された艦も多数出現する傑作艦となっていく。

ほんの数年前の日本では、考えられない状況だった。


当然ながら、建造に必要な予算は莫大となったが、現実に脅威が存在することが明らかになったことで、日本国内の議論と予算の使い方には明確に1本の芯が通り、かえって健全化が図られつつある。


澤崎が指摘した通り、福祉・環境・人権・男女共同参画系予算の使い方の腐敗ぶりが、段階的に明らかになりつつあり、その予算は大幅に見直されつつあったのだ。

その影響は政府だけでなく、地方自治体の予算にも大きく波及していた。

今の日本には、いや、本来は以前からも、バカげた予算の使い方を許す余裕は無いのだ。


この結果、この仕組みを推進してきた旧野党勢力は、更なる窮地に立たされただけでなく、与党内のリベラル勢力、そして与党そのものも長年この状況を放置した責任を問われ、思わぬ劣勢に立たされている。


だが、沖縄担当大臣の事務所で働きながらも、真紀子はそういったことに関心があまり無い。

しかた無いことかもしれなかった。花を失った悲しみと向き合いつつ、里奈を引き取り、仕事も新しく始め、目まぐるしい日々を送っていたからだ。

だが、そのおかげで悲しみと花の犯した罪について、ただ考えてどうしようも無く日々を過ごす、ということにはならずに済んでいた。


沖縄には最初の慰霊式典以来行っていない。

正確には、下地家の墓参りに盆の時期に、一度宮古島に訪れたが空港で引き返していた。

大臣他、事務所の人間に同行する形で宮古島を訪れた時、東京での暮らしにすっかり慣れて、落ち着いて生活していたはずの里奈の様子が不穏になったのだ。

空港の建物から出て、宮古島の空気に触れたとたん、里奈は大きな声で泣き出し、真紀子に抱き着いてその場から動こうとしなくなった。


真紀子は困惑した。

「これって・・?里奈ちゃん、どうしたの?どこか痛いの?」

私設秘書が里奈の様子を見て言った。

「信じられないけど、里奈ちゃんは、ここで起きた出来事を無意識に覚えているんじゃ・・・?トラウマになってて、何かが刺激されているってことなのかも?」

「そんな・・・。まさか・・・。お隣で生活していた時も、情緒が不安定だったことは無かったって、聞いていたのに・・。今になって?」

防衛大臣が即決する。

「いいわ。八木さん。あなた達は空港に戻って、そのまま東京に戻った方が良いみたい。その方が里奈ちゃんも落ち着くでしょう。」

「・・・でも。皆さんに迷惑が。」

墓参りだけでなく、里奈が最初に引き取ってもらっていた(お隣の)家族に、挨拶しに行く予定だったのだ。普段は下地家の墓まで見てくれている。

さらに石橋の案内で、花が亡くなった場所に訪れる予定だった。

「いいのいいの。里奈ちゃんが一番よ。こんなに怖がっているのに無理はできないわ。そうでしょう?皆さん、事情を説明すればきっと分かって頂けるわ。あとのことは、私達がやるから、八木さんは東京に先に戻ってゆっくりしていなさいな。」


それ以来、里奈が沖縄に訪れる機会は無かった。


ひときわ寒い冬のある日、事務所に教村が訪れると、2通の手紙を真紀子に渡した。

澤崎と中村から預かったものだった。


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