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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
掃討
187/221

投降

先島に放った4機は、全機未帰還だった。


胡は後悔している。王の訴えは切実だったとは言え、自分としたことが情に流されすぎたと思う。

王の部下をいくらか助ける代わりに、自分の部下を失ったのだ。

この3日間の疲労と、制空戦で敗北したという事実の衝撃で、判断力が低下していたかもしれない。


だが、少なくとも宮古島の攻撃に1機は成功したらしい。現地の部隊からは感謝を伝える報告が入っていた。


張は今のところ何も言ってこないが、沖縄方面の攻撃を全面的に中止して良いとは言っていない。

胡は今後はより緻密に計画した、小数機によるゲリラ的な先島に対する攻撃と、同じくドローンによる輸送で、極少量ではあるが先島の地上部隊への補給行うように参謀達に指示を出す。

無理をさせず、多少なりとも米軍機による沖縄、韓国方面から作戦を妨害できれば良い。


皮肉なものだと胡は思う。これではまるで島嶼をめぐる制空権および制海権を失ったにもかかわらず、守備隊に降伏を許さなかった日帝の愚かな軍隊と同じではないか。

連中が苦し紛れに行った、モグラ輸送や、小数機による夜間爆撃と、やっていることは本質的に変わらない。


張は「そんな手があるなら、作戦をさっさと再開しろ」と横柄に言ってきた。

ちょっと前の胡なら激昂していただろうが、今は冷静に受け止めている。


北京に遣わした副官からは、まだ何の連絡も無い。


そうこうしている間にも、台湾の戦況も悪化している。

台湾空軍の動きが再び活性化していた。

東岸から戦力投射を行うはずだった友軍艦隊が壊滅したおかげで、台湾軍にとっての脅威は減少。

残存する防空アセットに護られて、台湾北部や東部の空軍基地や臨時滑走路が、復旧して使用できるようになったらしい。


無論、胡はこの動きを阻止しようとしたが、逆に、フィリピン方面から飛来する米軍機に阻止されていた。

台湾軍機も、J20が引き抜かれたことを察知して、早速、積極的に防空戦闘を展開するようになっている。


米軍機の長距離ステルス対艦ミサイルは弾切れになったらしいが、代わりに台湾軍のF16Vが、山岳地帯から奇襲攻撃でハープーン対艦ミサイルや、SLAM-ERを上陸船団に撃ち込んで来るようになりつつあった。

旧式化したハープーンでも、台湾の山岳を盾にして接近される上に、防空艦の殆どを失った中国海軍には効果的だ。


防空の頼みの綱となるはずだった、揚陸した地対空ミサイル車両は、米台のHIMARSや、しれっと台湾上空に進入してくるF35が放つ、HARM対レーダーミサイルに叩かれている。

そこへ対空ミサイルだけでなく、揚陸した物資、揚陸中の船舶を狙って主にB1Bが、射程が比較的短いJASSM-ERの初期モデルを撃ち込んで来た。

中国本土への攻撃を手控えた米軍の爆撃機だったが、「それならそれで」とばかりに、中国軍の2個集団軍の橋頭保を吹き飛ばす勢いだ。

さらに中国本土の港湾には、F16VがSLAM-ERを撃ち込んで来る。


台南と高雄の市街戦は膠着状態。

両集団軍の先鋒は、輸送船団と橋頭堡に備蓄した物資を叩かれたことで、重砲弾薬、戦闘車両及び電子機器の発電機用燃料の不足に悩まされ、急速に勢いを減じている。

もはや、今更J20の旅団が胡の指揮下に帰ってきても、どうにもならないだろう。


一方、自衛隊の統合司令部と、統幕には希望が見えている。5日には、宮古島の残敵掃討を本格化できる見込みだからだ。


沖縄周辺で船団襲撃を狙っていた中国潜水艦の待ち伏せを受け、護衛艦「すずなみ」が撃沈された。

さらに、石垣島周辺海域に進入した「みくま」が撃沈される損害が出ている。

だが、護衛艦隊と哨戒機の猛反撃で中国潜水艦3隻を撃沈し、以降は潜水艦による攻撃は途絶えた。


そして5日の夜明けと共に、第一輸送隊に輸送された第1水陸機動連隊および水陸機動団戦闘上陸大隊が、下地島に逆上陸を敢行する。

さらに宮古島に第43普通科連隊と、第8師団司令部が揚陸される見込みだった。

第8師団司令部は、宮古戦闘団から宮古島の指揮を引き継ぐことになっている。

師団級の戦力が宮古島に集結するとなると、宮古戦闘団の指揮能力では、手に余る事態が予想されていたからだ。


PFI船のうち、4隻は与那国島に第4師団の第4戦闘偵察大隊と、第40普通科連隊を揚陸する。

さらにそれぞれの島には、12式の予備弾を含めた補給物資が揚陸された。

なお、「すずなみ」「みくま」の撃沈で生じた負傷者は、病院船機能を持った「うらが」型や「いせ」といった艦艇に収容されている。


だが、彼等の計画は思わぬ形で中止される。


防衛省が国民と財務省に説明してきた、「離島防衛」構想通りの展開かと思われた4日の19時。それまで頑強に抵抗していた、宮古島と与那国島の中国軍部隊が投降したからだ。


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