肉迫
「ニミッツ」の艦載機はLRASMとJASSMを使い果たし、直掩機を残して在日米軍基地あるいは在比米軍基地に移動した。
在日、在韓の米軍機はここ数日の酷使で大きく稼働率を落としている。
だが、在比米空軍は反復して再び攻撃を行った。
「ニミッツ」自身も護衛艦がミサイルを消耗しているため、横須賀に回航を始めている。
対空ミサイルを未だ残している護衛艦については、第7艦隊のグループに編入されて戦闘行動を続行している。
さらに海兵隊はNMESISが台湾に上陸したことに、中国側が気づいていないことを確認すると、再びNMESISを先島から空輸して、ゲリラ的な攻撃を繰り返した。
予備弾はアメリカ本土から、横田にC17輸送機で空輸され、そこからC130に積み替えて岩国に空輸。そこからCH53、47やオスプレイに積み替えて、沖縄本島で給油してから、さらに先島諸島に空輸していた。
中国側は台湾の山脈が邪魔で、米軍ヘリの行動を探知できずにいる。
このため中国側から見ると、台湾側の地対艦ミサイルが公表、あるいは推定されている数を超えて撃ち込まれてくるように見えた。
(一部の指揮官は、ミサイルがステルス性を持っていることから、米軍がNMESISを台湾に持ち込んでいることを疑っていた。)
それだけでなく、先島諸島からは米軍のHIMARSやROGUE-Firesが、次々とATACMASやPrSMを撃ち込んで来る。
こういうことになるから、先島諸島を占領する必要があったのだと、HIMARSとROGUE-Firesの砲撃に曝される第71、72集団の指揮官達は、既に頭では理解していたことを改めて痛感していた。
米軍の攻撃はミサイル攻撃に留まらなかった。
中国側の護衛艦が壊滅したのを見て取った米軍潜水艦が、中国側の潜水艦を慎重に躱すか、撃沈して上陸船団を魚雷で襲撃したのだ。
このため、それまで比較的順調に増援と補給物資を台湾に送り込んでいた中国海軍主力は、早朝の制空戦闘開始から24時間で壊滅的な損害を受けつつあった。
台湾の東側を封鎖していた中国潜水艦隊の一部は、黄海の戦略原潜の護衛任務から外れ、増援に回された潜水艦と共に北上した。
彼等の新たな任務は、海上自衛隊の佐世保から先島に向かう船団の迎撃だった。
だが、既に台湾東側の海域の制空権は日米台のものであり、フィリピンから飛来するP8、鹿屋や岩国から飛来するP1、P3、P8が安全に常時滞空するようになっている。
彼等は効果的に中国潜水艦の動きを封じていた。
だいたい、台湾東岸の中国潜水艦隊は既に、「アメリカ」「ニミッツ」両グループへの索敵攻撃を試み、阻止されて損害を出していたのだ。
これ以上損害が増えると、東側海域の封鎖という最低限の目的も果たせない。
一挙に崩壊しかけた戦況だが、今度は米軍の攻撃がスローダウンしつつあった。
というのも、LRASMやJASSM-ER B-2、それにLRWH「ダークイーグル」といった、スタンドオフ兵器を射耗したからだった。
だが、この間に補給と再編成を終えた海自グループに護衛され、陸自の増援部隊と補給物資の搭載を完了した輸送船団が、先島諸島に肉迫しつつあった。