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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
掃討
181/221

昔馴染み

2025年4月4日 6:47 宮古島


宮古戦闘団司令は、宮古警備隊司令の大畑一佐が努めていた。

彼は夜明け前に移動を完了したばかりの指揮所に、増援として到着した第一空挺団第2大隊の隊長、増田2佐を迎え入れたところだった。


二人は防衛大学校では先輩後輩の関係だった。増田が1学年だった時の部屋長が大畑だ。

在学中から成績優秀。任官後も指揮幕僚過程(CGS)を終了して、同期の中でも出世頭の大畑だったが、増田の方はCGSを終了していない。

大畑にとっては世話の焼ける体力馬鹿だった増田が、幹部レンジャーを終了したと聞いた時は、我が事のように嬉しかった。

そして増田は、今では日本屈指の精鋭部隊の大隊長様だ。(もっとも一般的な意味では増田は全く「馬鹿」では無い。大畑が優秀過ぎるのだ。)


増田の大隊は深夜に、沖縄本島から夜間低空飛行を敢行した第一ヘリ団によって、宮古島に空輸されてきたばかりだった。

指揮所に飛び込むように現れた増田2佐は大畑に敬礼しながら、

「部屋長!お待たせしました!助けにきましたよ!」

と元気に挨拶をした。大畑も応じる。

「おう!増田!良く来てくれたな!待ってたぞ。事故が無くて何よりだ。」


そこから、戦闘団本部の2科長が戦況を説明する。


昨日までは相当に厳しかったです。

ええ、本当に。空自と併せてSSMを大量に打ち込んだのに、全部叩き落とされて、中国さんの上陸船団が無傷で現れた時は正直言って、こりゃアカンと思いました。


それでも手持ちの重火器で、思いの他、敵の着上陸部隊を防御陣地手前で減衰させることは出来ましたが、そこからが大変でした。

敵の砲爆撃で、割と深く押し込まれまして。

下地島の第3連隊は第1線を突破されました。なので、下地島空港に侵入された時点で、滑走路は爆破しています。


そこからはアメちゃんも交えて、殴り合いになりました。

伊良部大橋も破壊されまして、下地島への増援も補給も連絡も困難になりました。まあ、あらかじめ織り込み済の事態ではありましたが・・・。

そこからは接近戦が続いて、中国さんも艦艇から火力支援を慎重に行ったこと、空爆が途絶えたこと、何より敵上陸部隊が弾薬を急速に消耗したらしいことで、戦況は安定しました。


第10連隊の方は、当初は下地島より幾分マシでした。

宮古空港周辺に配置した特科と機甲科を効果的に運用できましたので。

中国さんも戦車を持ち込んできましたが、既に全て撃破しています。


しかし、ご存知の通り、3連隊も10連隊も即機連ですから、予備部隊が最小限です。

下地島の方は海兵隊が補強してくれたので、むしろ打たれ強くなっていました。

現状ではむしろ10連隊の方がしんどいです。敵の正面で戦った第1中隊が3割の損害を受けても、補充には慎重にならざるを得ませんでした。


予備は施設科と、元からの宮古警備隊の普通科、それに水陸機動団のレンジャー小隊で編成していました。

これを、そろそろ投入しようかという時に、中国さんの増援が後方に空挺降下してご破算です。

予備はそちらの対処に回すしかありませんでした。


まさかあの状況で、中国さんが輸送機を突っ込ませて、無茶苦茶な空挺作戦を仕掛けて来るとは思いませんでしたから、意表を突かれたことは確かです。

恥ずかしながら相当慌てましたが、たまたま居合わせた、特戦と米軍の特殊部隊が上手いこと周辺の後方部隊をまとめて、携帯火器とドローンだけで敵の出鼻を派手に挫いてくれました。


厳密に言うと、彼等の行為は越権行為もいいところですが、結果オーライです。


夜になっても夜戦が続いていまして。

敵は弾薬が乏しくなっても、ゲリラ的な戦法を駆使して来ました。

数少ないドローン、スナイパー、スカウトです。こちらのスナイパー、スカウトがカウンターで損害を出しただけでなく、連中は、こちらの幹部、火力誘導班をうまいこと見つけ出して狙ってきました。


そんな状況でしたので、中国さんが息切れしたとは言え、我々には反撃したくても余力に不安がありました。

ですから、空挺の増援には大いに期待するところです!

沿岸部の敵は夜明けと共に、空自や火力支援で慎重に叩きますが、敵の空挺の生き残りがまだまだ島の東部の家屋に潜んでいます。

クリアリングに力を貸して貰えると、助かります!

何せ民間人が取り残されている地域ですから、非常に困難な状況に変わりはないのです。


一通り聞き終えたところで、増田は一番気になっていることを聞く。

「沖縄本島では確かな情報を得られなかったが、民間人の犠牲はどの程度出ているんだ?」

「・・・それ、聞いちゃいますか・・」


それまで軽めの口調で話していた2科長が口調を改めた。できれば話したくなかったのだ。

「我々に入っている報告と、警察、自治体からの連絡を集計した結果、現時点で未確認ではありますが、民間人の死傷者は500人以上と判断しております。まだ増える見込みです。」

「・・・。そうか。」


「これは個人的な感覚であり、意見ですが、我々はこのままいけば勝てます。

ですが中国さんも、孤立していることくらい理解しているだろうに、頑強です。

あなた方、空挺の増援を得たとは言え、これ以上犠牲を出したくありません。

・・かつて島嶼で孤立しているのに、最後まで抵抗した日本陸軍や海軍陸戦隊に対して、米軍もそう思ったでしょうか?」


2科長が最後に漏らした感想を聞いた、大畑が苦言を呈す。

「2科長!相変わらず、思ったことを考えずに口走る時があるな。

いつも言っているだろう。それは余計なトラブルの元だぞ。

それに、祖国を最後まで信じて散華した英霊を、そんな風に言うものではない。」

「はっ。申し訳ありません。」


「いや、部屋長、そちらの2科長の気持ちは分かりますよ。

私だって勝ちの見えた戦いで、部下を無闇に失うのは願い下げです。

とにかく慎重にいきましょう。ウチの火力誘導班をお貸します。

我々は東部の掃討戦にあたります。この状況では、火力誘導班を連れて行っても、重火器の使用はご法度ですからね。重火力を使えば、家屋もろとも民間人を巻き込みかねない。

ところで、その特戦の隊員達とは引き続き連携したいので、直接打ち合わせできますか?」


その後、戦闘団から指定された場所に出向いた増田は、特戦の隊員らしき人物が2人歩いてくるのを認めた。

装備と空気が他の隊員と違う。と、その二人が思わぬことを口走った。

「あれ!?もしかして増田2尉ですか?」

「あ!石橋と白神じゃないか!そうか、例の特戦ってのは、お前らのことだったのか!」


増田は石橋と白神が空挺団に居た頃、二人の小隊長だったのだ。


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