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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
決戦
175/221

戦うエンジニア

2025年4月3日 20:10 大分県 日出生台演習場


航空自衛隊の攻撃に先立ち、陸上自衛隊による地対艦ミサイル攻撃が実施された。

攻撃を担当したのは、第5地対艦ミサイル連隊第1中隊。

彼等は昨年先行配備が始まったばかりの、12式能力向上型を装備していた。

日出生台演習場に展開していた彼等は、射程距離900キロという長射程にもかかわらず、これまで攻撃を実施していない。それは出動時点で新装備につきものの、初期不良に襲われていたからだった。


展開を始めて、待機状態に入った所で判明した、射撃統制装置とランチャー4台のソフトのバグにより、彼等は射程900キロを誇っていながら、一連の上陸阻止攻撃に加わることが出来ていない。


三菱重工のエンジニアが日出生台に駆けつけて、現場のデータを持ち帰り、不眠不休でソフトを改修。陸自が差し出したオスプレイで再び日出生台に乗り付けて、システムのアップデートを行った。

これにより、何度試してもエラーになっていた、最大射程付近での発射準備処理がようやく通った。

しかし、先島に展開した12式部隊と連携しての、一斉攻撃という当初計画には間に合わなかったのだ。


ようやく本来の機能を取り戻した彼等は早速、上海に向かう敵船団に対して、2斉射32発の対艦ミサイルを撃ち込んだ。


苦労の末行われた攻撃だったが、期待されたほどの戦果は得られなかった。

第1波は、船団の上空直掩についていた、J10、J11の混成編隊に探知され、次々と彼等の装備する中射程、短射程の空対空ミサイルで迎撃されたのだ。


だが、船団上空の直掩部隊は、12式能力向上型を少しでも遠距離で迎撃しようとしたために、船団の防空圏内から出たところを航空自衛隊のエリアスイーパーに捕捉される。

303飛行隊に先行して飛来した302飛行隊のF35Aが彼等を捕捉。壊滅的な損害を与えて、上海方面へ撃退してしまったのだ。


だが、それでも直掩の迎撃を突破した12式能力向上型は20発に満たず、全弾が残存する防空艦からの対空ミサイルで迎撃された。



2025年4月3日 21:32 九州沖


12式の攻撃から1時間半後、さらに303飛行隊によるJSM攻撃が実施された。

この攻撃は12式能力向上型に対する迎撃で、殆どの対空ミサイルを撃ち尽くしていた船団を効果的に打撃し、大型でレーダー反射の大きい075型強襲揚陸艦2隻、055型1隻、その他を撃沈することに成功する。


さらにその20分後、今度は第8飛行隊による攻撃が行われた。

HHQ-9Aに対しては、射程不足とされていたASM-2Bだったが、中国側はもはや対空ミサイルを全て撃ち尽くしており、F2の低空飽和突撃を阻止する手段は残されていなかったのだ。


それでも中国側の各艦は、ミサイルが残っていないのを承知の上で、超低空から接近してくるF2にロックオンをかけて妨害を試みる。

だが、第8飛行隊のパイロット達は、ヘルメットに鳴り響く警報に構わず距離を詰めて行き、60発のASM-2Bを発射した。


ASM-2Bは次々と船団に命中。最終的には実に40発以上が命中したのだった。

今までの中国側による迎撃率を考えれば、嘘のような高い命中率だ。

長、中射程の艦対空ミサイルを撃ち尽くしたことで、急激かつ、極端に船団の迎撃能力が低下した結果だった。

この攻撃によって船団はついに致命傷を負った。実に10隻以上の艦艇が撃沈破されていたのだ。


アメリカのシンクタンク、CSISが2年前に行ったシミュレーションの分析は、現実によって証明されたのだ。

高性能のレーダーと長射程の対空ミサイルを多数装備した防空艦が多数配備されていたとしても、対艦ミサイルの波状攻撃にさらされた艦隊は、対空ミサイルを急速に消耗することで、防空能力に急ブレーキがかかる瞬間が訪れるのだ。

その後も敵の攻撃が継続するなら、次に訪れるのは破局ということだった。


止めを刺したのは、例によって斉州島を経由してストライクパッケージを組んで来た、在韓米軍のF22とF35Aだった。

彼等は、船団からの救援要請を受けて海軍司令部が空軍に要請し、胡がスクランブを命じたJ11Bの編隊2個旅団と遭遇したものの、一方的に蹴散らした。

その後に、約40発のJSMを発射。船団の残存艦をほぼ殲滅したのだ。


生き残ったのは、船団主力から遅れていた与那国島の揚陸部隊だけだった。

彼等は直前の戦闘で生じた溺者の救助と、急遽行ったヘリボーン作戦の影響で、大きく落伍していた。

だが、そのことが皮肉にも彼等を救う形となったのだ。

彼等は主力の壊滅した海域に急行すると、再び溺者救助を行い、上海に辿りつくことが出来たのだった。


一方、先島諸島に上陸、あるいは降下した中国軍は完全に孤立した。

そして彼等は、手持ちの弾薬を急速に消耗しつつある。

第3船団の輸送船と増援部隊、補給物資は上海に存在する。

だが、もはや彼等を護衛するべき艦艇が壊滅した現状では、送り届ける方法が存在しないのだ。


少なくとも、4月3日の夜半の時点で、先島諸島における地上戦は、事実上決着したと言って良かった。


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