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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
決戦
166/221

「アメリカ」「かが」参戦

2025年4月3日 13:30 中国 桂林


南部戦区の桂林基地には北部戦区の四平基地から、空軍第31旅団がはるばる移動してきていた。彼等は、中央軍事委員会が長征作戦に認めた数少ない増援だった。


装備は萊山基地からの第14旅団と併せて、JH7B戦闘爆撃機48機。

決して無力では無く、巡航ミサイルや対レーダーミサイルの運用能力を持つものの、JH7Bは第3世代機であって、第4世代機や第5世代機が当たり前になった中国軍機の中では見劣りがする。


彼等はあまりにも急に移動を命じられた挙句、出撃までに整備要員や機材、補充用の弾薬の到着を待つ間も無かった。

そう、桂林に到着すると、簡単な戦況説明のみで、先島諸島への爆撃を命じられたのだ。


彼等の地上支援部隊は、輸送機の数が空挺作戦に拘束されているため、広大な中国大陸での陸送の途上にあって、到着がいつになるか分からない状況だった。

高速道路が整備されたとは言え、中国は広すぎるのだ。

米軍なら地上支援部隊も一緒に空輸するところだが、中国空軍には輸送機はまだまだ不足している。


それにもかかわらず攻撃が命じられたことは、2個旅団のパイロット達に不安をもたらした。

SNS等で噂になっているように(原則閲覧は禁止、投稿は罰則とされている)、上層部の発表とは裏腹に、戦況は中国有利ではないらしい。


彼等はわずかな休息と燃料補給のみを与えられると、四平と萊山から抱えて来たレーザー誘導爆弾、通常爆弾、対レーダーミサイルをそのまま装備して、出撃する。(滑空誘導爆弾LS6も持って来ていたが、桂林基地で「衛星誘導がアテにならない」と言われて、大半の大隊が取り外していた。)


武夷山基地上空で空中給油を受けるが、基地は上空から見ても、滑走路に大穴が複数箇所に空いたままで補修作業中だった。基地施設にも被害がある。

彼等は自分達が強引な攻撃を命じられた理由を理解した。

しばらく武夷山基地上空に留ると、護衛戦闘機隊と合流。進攻を開始する。


護衛は上海浦東空港を離陸したJ11B、15機だった。彼等は応急修理した補修箇所を迷路のように伝って、やはり応急修理が出来た、1本の滑走路から苦労して離陸していた。

さらに何とか応急修理が出来た空軍基地の滑走路から、J10、J16装備の大隊がかき集められて、25機が31、14旅団を主力とする戦爆連合に加わった。


地上からのGCIの支援は無かった。

彼等の目となるレーダーサイトが、米軍の巡航ミサイルで軒並み破壊されているからだ。

KJ2000や、500の支援も、移動警戒レーダーの情報も、内陸での防空支援を優先されているため、海上に出るとすぐに途切れる。


この状況では、いつ敵機の奇襲を受けるか分からない。

両旅団の指揮官は、目視による対空警戒を厳重に行わせた。この点、複座のJH7は単座機よりも目視による警戒は行い易い。だが、安心材料と言えるのはその程度だった。

海上に出た戦爆連合は、台湾よりのコースをとって、低空飛行で先島諸島に接近する。

台湾軍の迎撃を受ける可能性はあったが、日米の戦闘機に迎撃されるよりはマシだった。


胡中将は、投入できる機数が激減したこともあり、これまでのような、沖縄本島、与那国、石垣、宮古への同時爆撃をやめ、沖縄本島から最も遠い与那国に集中攻撃を行うことにしていた。

彼には「またしても弾道弾攻撃が、期待外れに終わっているではないか?」という懸念があったのだ。与那国なら沖縄から最も遠く、敵の迎撃が間に合わないことも期待出来た。


胡中将と彼の司令部の判断にはそれなりの合理性があったが、海軍と陸軍は宮古島の奪取に比重を置いていたから、いささか空軍とは連携がとれていない。


2個旅団を主力とする爆撃隊は海上に出るとすぐに、敵のE2Dと思われるレーダーに捕捉された。だが、それでも低空飛行は継続する。

台湾からの対空ミサイルに捕捉されるのを避けるためだった。


新たな弾道ミサイル攻撃で沖縄の空軍基地が破壊されているなら、迎撃はそもそも無いはずだった。

与那国の対空ミサイルも、かなり損害を受けているはずだ。

2人の旅団指揮官は、普段は空軍の予算を削っていくロケット軍を疎ましく思っていたが、この時ばかりは、彼等が真価を発揮してくれていることを心の底から願っていた。


2025年4月3日 15:17 与那国島


JH7装備の第31旅団は、与那国にあと50キロまでせまったところで、突然至近距離から未知の空対空レーダーを浴びた。

彼等はそれがF35Bのものとは知らない。

前方を飛行していたJ11Bの反応が、持ち前の高い機動性を見せつけるように、鋭い緊急回避機動を始めるが、それにもかかわらず次々と反応が消えていく。


31旅団長は自分の部下に達も回避を始めるように命じる。

だが、J11を蹴散らした日米の12機のF35Bによって、必中距離から放たれた24発のAIM120Cにより、わずか45秒で旅団長以下20機が撃墜された。

F35Bは全弾を撃ち尽くし、「アメリカ」「かが」へと帰投していく。

「アメリカ」所属の4機だけは、ミサイルを撃ち尽くしたにもかかわらず、戦場に留まっている。


そう。今まで対艦弾道弾や長射程の対艦ミサイル、中国海軍の追撃といった脅威から、ひたすら逃げ回っていただけだった「アメリカ」「かが」を主力とするLCGが、ついに戦場に姿を現したのだった。


残存する約50機の攻撃機は、なおも与那国への攻撃をあきらめなかった。

だが、今度は250キロ彼方から飛翔してきたSM6が上空から降ってきたのだ。

アメリカLCGを構成する日米の4隻のイージス艦は、SM6を40発発射した。

SM6は、なおも戦場に留まるF35Bからのデータで、中間誘導を行った。

さらに飛距離を稼ぐために行っていた中高度飛行をやめて急降下に入る。そして、終末段階で自らのシーカーでロックオンを行って、攻撃隊に襲い掛かったのだ。


爆撃隊には同時に与那国から、陸自最後の対空ミサイルによる迎撃も行われた。

守備隊からはCH47による、各種ミサイルの補充要請が何度もなされていたが、島の南北で交戦中かつ、沖合に055級や052D級が居座っているため、補給のヘリが日中に接近することは出来なかったのだ。


このため、ヘリの運用は日没を待っている状況で、この時、与那国から放たれたのは03式が6発、11式が2発、81式が8発。それぞれ最後のミサイルだった。

海兵隊の対空アセットは攻撃しなかった。彼等は与那国防空最後の切り札として、温存策が取られたのだ。


一連の対空ミサイルによる迎撃で、さらに30機以上が撃墜されたが、爆撃隊はなおも突撃を続け、最終的にJH7が8機、J16は6機が爆撃に成功した。

J16は割り切って、無誘導爆弾を大量に与那国の二つの山に投下した。

JH7は、生き残っていた陸戦隊の火力誘導班が照射したレーザーに向けて、10発のレーザー誘導爆弾を投下する。


これらの爆撃はそれなりの被害を日米の守備隊に与えた。

完全な航空優勢を中国側に握られていた場合、いかなる事態になっていたのか、想像するのも恐ろしい結果だ。

わずか1個飛行隊分でも、狭い島に集中的に爆弾を投下されれば、どうしても命中弾は発生してしまうのだった。


日米の防空網の脅威が骨身に染みているJ16のパイロット達は、一撃全弾投下を行うと直ちに離脱した。だが、これが初めての実戦であるJH7のパイロット達は、レーザー誘導爆弾を1発、1発と順番に投下したため、離脱が遅れた。そこをSM6の第2波に攻撃されたのだ。

このため、JH7で生き残っていた8機のうち、4機がさらに撃墜された。


結局、100機近くが出撃したにもかかわらず帰還できたのは護衛のJ11Bを含めて、10機でしかなかった。


想定外にF35Bが出現し、新手のイージス艦隊の迎撃があったとはいえ、新着の2個旅団の実に9割が未帰還という現実は、中国側にJ20を伴わない攻撃を躊躇わせるに十分だった。

しかも、いつも自信に満ちている胡中将だったが、ここへ来て「折れて」しまったと言って良かった。

現状で最善と思われた、沖縄本島から最も距離のある与那国への残存戦力の集中投入の結果が、敵軽空母群の出現により惨敗に終わったことは、相当の衝撃だったのだ。


しかもなおも先島沖を遊弋しているであろう、2隻の敵軽空母とその搭載機、さらに護衛艦を排除しなければ、先島諸島の航空優勢を奪えない。

だが、胡中将にはその手が最早見つけられなかった。


「アメリカ」「かが」とその飛行隊は出現と同時に、先島における航空戦の帰趨を日米優位へと鮮やかに決定してのけたのだ。

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