台湾からの支援攻撃
中国側の2回目の弾道弾攻撃が行われる一方、米軍は残弾が残り少なくなった、LRHWダークイーグルを断続的に発射し続けていた。
既に攻撃を行い、一度破壊した滑走路を継続的に打撃するだけでなく、新たに、H6K、Nの拠点である安慶、耒陽、邵東の各基地に打撃を加えたのだ。
これによって既に大損害を受けている、中国軍の重爆撃機部隊の出撃が不可能になった。
B52、タイフォン等の地上発射機による巡航ミサイル攻撃も加わる。今や攻撃の対象となる航空基地は、東部戦区だけでなく、中部、南部戦駆の基地にまで広がりつつあった。
相変わらず中国側にとっては、自らの弾道弾攻撃による戦果を確認する手段が、日本の報道や、ネットによる断片的な情報しか無かったため、日米の航空作戦能力をどれだけ削いだかは不明だった。
だが、胡中将は、先島への新たな空爆と空挺作戦を決行した。
2025年4月3日 15:10 台湾 宜蘭沖
台湾軍は保有する地上発射型のハープーンのいくつかを、与那国沖の中国艦隊に向けて発射した。
彼等は、まず沖縄方面の戦況が安定しなければ、日米が台湾に安定した支援を行うことが困難であることをよく理解していた。
だからこそ、本来台湾東岸の封鎖を図る敵艦隊や、西岸を行き来する敵船団に向けるべき貴重な地対艦ミサイルを、敢えて与那国沖の敵に指向したのだった。
現状で与那国を援護することは、自らを援護することでもある。
宜蘭市周辺に展開した1個大隊分のランチャー16基から、64発のハープーンミサイルが発射された。
さらに生き残っていた、沱江級コルベットも攻撃に加わり、雄風2および3ミサイルを16発撃ち込む。
その射撃諸元は、与那国の海兵隊から密かに送られている。
与那国沖の中国艦隊は、既に上海方面へ帰投を始めていた。
警戒を緩めてはいなかったが、このタイミングで台湾からの攻撃は意表をつかれた。しかも宜蘭からの距離は100キロでしかない。
対空ミサイルも殆ど使い果たし、対応時間も短かったため、055級、052D級は本来の防空能力を発揮できなかった。
その結果、台湾にも最も近い位置にいた052D級が真っ先に被弾、撃沈された。
その奥に位置していた055級もまた、HHQ-9BとHHQ-16を撃ち尽くして打つ手が無くなり、次々と対艦ミサイルを被弾するに至って、これも撃沈される。
さらにハープーンの群は揚陸艦群の盾になろうと、前に出てきた054A級1隻をも撃沈した。
こうして護衛艦を突破したハープーンは、その時点で20発が残存していた。
揚陸艦も近接防御火器や、HHQ-10対空ミサイルを放つなどして応戦したが、限界があった。
その結果、ついに071級揚陸艦1隻が被弾・撃沈され、075級強襲揚陸1隻が大破した。
生き残った071級と、054A級は溺者救助を開始する。
彼等は上海方面への帰投する上陸船団への集合に大幅に遅れることになったが、生存者を見捨てるわけにはいけなかったのだ。
だが、この判断は数時間後に彼等を救うことになる。




