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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
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社会福祉法人「シン・YOU・愛」

堀部という青年の所属する組織は、社会福祉法人「シン・YOU・愛」という。

もともとは1995年の阪神淡路大震災における、被災地域で自然発生した、住民同士の互助組織やNGOの活動から始まっていた。


彼らの活動は復興の進展に伴い、円満に解消されていくはずだったが、そうはならなかった。

たまたま彼等の活動地域は、某政党の勢力が優勢な地域でもあったのだが、活動を円滑に進めようとする過程で双方の関係性が出来上がっていたのだ。

被災地域の支持基盤を強化しようとする某政党の勢力は、彼らを支持母体に育てようとして手放さなかった。

某政党勢力は彼等を支持母体とするだけでなく、活動家や党員を養成する基盤とするために、その活動の永続化と拡大を後押しした。


住民の活動は福祉法人化し、その中核となった初期メンバーは長く活動を続け過ぎていた。つまり、今更他の働き方を模索するのも難しいほどに、活動にのめり込んでいたのだ。


さらに彼らは組織を拡大するために、阪神地域で震災関連以外での、福祉サービスを必要とする人間を発掘する「営業」を行うようになっていく。


別に福祉系の組織が事業としての「旨味」を追求していくことは悪いことでは無い。

そうでなければ事業を継続することも、サービスの絶対量を確保することもできないからだ。

逆に言えば、福祉に関わる事業者は「利益」というものを無闇に毛嫌いする傾向があり、そのためにスタッフの待遇に還元できず、その満足度がおざなりになりがちとなる。

結果的に福祉業界の人手不足と、サービス供給量不足の原因ともなっていた。


そういう意味で「シン・YOU・愛」の方向性は間違ってはいなかった。

問題は某政党勢力と結託し、事業を「利権化」していったことだ。

彼等は某政党の思想に同調する、しないで新規参入事業者の選別を行いった。

そして、同調しないか協力しない事業者に対して、妨害を某政党勢力と結託して行った。

それだけにとどまらず、自治体内の某政党シンパとも関係を築き、自治体からの補助金は「シン・YOU・愛」と関連団体が最優先になるという仕組みを非公然に作り上げてしまったのだ。


こうして震災で家族を失った児童向けの養護施設、同じく独居になってしまった高齢者の老人ホーム1施設ずつから始まった、彼等の事業は急速に拡大していく。


某政党政治家の目論見通りに「シン・YOU・愛」は強固な支持基盤となった。

見返りに某政党の議員は自治体に働きかけ、優先どころか独占的に事業の認可や、補助金を彼等に割り当てる、という構図はますます加速していく。

当時某政党は一時的に与党となっており、握った権力を行使して「モノから人へ」の美名の下、極めて緩い基準で非政府組織に税金が流れ込む仕組みを作ることにも成功していた。

それは本来は、硬直しがちな行政に弾力性を生むはずで、確かにそのような効果もあったが、結果的に新たな利権構造までも生んでいたのだ。


当時はSNSも無く、問題提起をする手段も限られ、新規参入事業者は自分達が理不尽に妨害されていることに気付くことすら難しく、現与党の関係者さえもなかなか気づかなかった。

おまけに、マスコミは某政党関係者にやたらと忖度し、敢えて問題視することも報道することもなかった。


さらに問題だったのは、なまじ某政党との関係が深くなったばかりに、マスコミも自治体の担当部署も、「シン・YOU・愛」関連の施設で起きる事故や虐待といった不祥事すらも、一切放置してきたことだった。定期的に行われる監査も「忖度」が付けられていた。

「シン・YOU・愛」が主に受け入れる利用者は、他に身寄りの居ない者が多く、家族がクレームや裁判を起こす心配も少なかった。

「シン・YOU・愛」の児童養護施設に入所中の未成年が、職員に性的虐待を受けた挙句、自殺をした事件すらも「粛々」と処理されて、明るみに出ることは無かった程だ。


こんな状態が続いたために、「シン・YOU・愛」は自分達でも気づかないうちに、当初の活動目的を見失って自浄能力も失い、利権を求めて腐敗し、利用者の人権を二の次にする姿勢が常態化するという、福祉事業者としてあるまじき組織になり果てていた。


それだけならまだマシだったかもしれない。

個人情報と利用者の人権保護の美名の下に、彼等は施設内部と外部を隔離しつつ、幼い利用者に野党の政治思想を宣伝し、植え付け、国を恨むように仕向けるようになっていく。

(当人達は不幸な子供達に真実を教えているつもりだったが)


児童施設を利用する子供達は、一応は外部の学校に通学するものの、出来るだけ施設で過ごすことを「奨励」されていた。

さらに「自立」に向けた取り組みは意図的に手が抜かれ、施設を出る年齢になったかつての子供達は、何かと「シン・YOU・愛」を頼り、某政党の関係者との接点を持ち続けなければ、生活が出来なくなるような筋道になっていた。

施設から大学に進学したり、まともに就職できた子供は極少数でしかない。


要は「シン・YOU・愛」の施設は、殆どカルト教団施設と化しつつあったのだ。

当事者の「自立」を目指さない福祉事業者としての実態を、まともな福祉関係者が見学したなら、泡を吹いて卒倒しただろう。福祉の理念で重要なのは、当事者主権であって、その自立だからだ。

だが、「シン・YOU・愛」は当事者の主権もへったくれもなく、対外的には綺麗事を言って置きながら、真逆に当事者を洗脳し、食い物にしていた。


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