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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
上陸
139/221

エスカレート

2025年4月3日 9:30 北京


張は北京に居た。相変わらず中央軍事委員会は、上海と北京の通信を認めていなかったからだ。

おまけに1日に3回は、北京市内で居場所を変更しているらしかった。


中央軍事委員会は、本土の空軍基地を攻撃されたことへの報復として、北朝鮮に押し付けていた在日米軍基地およびグアムに対する弾道弾攻撃を実行することを命じていた。

それだけならば、北京から連絡士官を寄越せば事足りる話だったが、張にも中央軍事員会に用があったのだ。


既に想定外の損害が出ている。軍だけで無く特に、宇宙空間の資産を利用した通信サービスがブラックアウトしたため、位置情報サービスや衛星電話が一切使用出来なくなるなど、民間にも影響が出ていた。

戦況は中央軍事委員会が当初思い描いていたような、楽観的な展開からは程遠く、張は委員会から詰問され続けた。


張は知らなかったが、戦略支援部隊の誰かが先走って、グアム沖の海戦の戦況がはっきりしない段階で「ニミッツ撃沈」というフェイクニュースをCG付で流したらしかった。

当初は世界に衝撃を与え、欧米と日台の親中・親露派を歓喜させたが、精緻なCGにもかかわらず、民間によるOSINT活動の結果、画像はCGであることがあっさり証明された。


逆に中国が手塩にかけて建造してきた機動艦隊が、壊滅したらしいことが徐々に明らかになりつつあり、中国はこの件で面子を潰され恰好だった。

第3次台湾海峡危機の屈辱を晴らしたと、中国民間レベルでの歓喜の輪は広まりつつあったが、追いかけるように誤報であるとの情報も広まりつつあった。


張はこの件における顛末の説明までも求められた。

(知らないよ。そんなこと)

というのが張の本音だったが、もちろん口に出さなかった。


委員のうち数人は顔色が青ざめていた。実際の戦況がどんなものか、その顔を見れば分かる。しばらく詰問されたが、張は大人しく適当に釈明を続けた。

肝心の国家主席は、割と不満そうでも無いように見える。


一通り委員に喋らせておいてから、張はようやく発言の機会を得た。

「軍は党と人民の期待に応えるため、一層の努力を致します。さらなる犠牲も覚悟しています。予定通りに台湾本島への上陸は行いますが・・・。」

やや言葉を濁す。


「上陸をより確実に行うために、金門島、馬祖島、澎湖島の3つの島を、早期に制圧する必要があります。

・・このためにも金門島他の地下陣地に対して、化学兵器を使用することをご許可願います。

また万一、化学兵器が隣接する泉州等の市街地に漏れる事態に備え、沿岸部に居住する人民の一時避難を命じて頂きたいのです。」

会議室がさすがにざわつく。化学兵器の使用が米軍に知られたら、事態のエスカレーションをコントロール出来なくなる危険があった。


国家主席が口を開いた。そういえば、彼自身の言葉を直接聞くのは、久しぶりな気がした。

「よろしいでしょう。ただし、迅速、確実に勝利を実現してください。化学兵器の使用は、住民の避難完了を待つ必要はありません。」


化学兵器使用は石中将からの要請だった。中央軍事委員会に化学兵器使用に許可を得るために、わざわざ張は北京にやってきたのだ。それが張の本音だった。

そうでなければ、今更意味の無い中央軍事委員会の小言を聞くために、北京に出向いたりしない。


ただ、張にはあっさりと化学兵器使用の許可が下りた割には、相変わらず胡から要請のあった、空軍の戦力移動の要請だけが却下されたのが不可解に思われた。

時間が惜しかったので、北京からヘリで移動しながら指揮と連絡を続けている。

「石中将。貴官の要請は通ったぞ。責任は私がとるから、遠慮なくやるといい。」


秘匿回線を切った張は、ヘリの爆音の中でため息をついた。

(これで戦争犯罪者だ。最悪の場合に、西側に亡命することも難しくなったな。)


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