戦闘偵察
反撃に出た最後のJ11中隊2個は、低空で中国軍機を追撃するF22に後上方から、目視視程内での戦闘に入る。
奇襲に成功した彼等は、2機のF22を撃墜する殊勲を挙げたが、F22の反撃で4機を失った。
結局、混成編隊は、F22と対空ミサイルの迎撃で20機中15機を失う。最終的に離脱して基地まで帰投できた中国軍の残存機は合計で、11機でしかなかった。
前日の戦果を過大評価したことにより、F22の要撃と、想定より遥かに多い対空ミサイルの迎撃に遭ったことによる悲劇だ。
昨日に引き続いて攻撃に参加した中国側のパイロットには、昨日あれだけ打撃を与えたはずの日米の防空組織が、早くも補充されているように感じられた。
2025年4月3日 07:32 上海沖
巡航ミサイルを発射したH6K爆撃機の編隊は、直ちに反転した。
だが、斉州島上空からJ20のBARCAPを突破してきた、F22とF35Aに襲い掛かられる。
わずか8機の直掩のJ11は、絶望的な戦況を理解しつつも任務を果たそうと奮闘したが、なす術が無いと言って良かった。
H6K編隊は、護衛もろともAIM260やAIM120による攻撃で、次々と撃墜されていった。
巡航ミサイルを発射して身軽になったとは言え、所詮は基礎設計の古い鈍重な爆撃機でしか無い。米軍の対空ミサイルを躱す手段は残されていないも同然で、文字どおり全滅させられてしまった。
沖縄攻撃隊を上回る悲劇だ。
この惨劇により以後中国軍は、沖縄へのH6系爆撃機による巡航ミサイル攻撃をも控えることになる。
空中給油機と、警戒完管制機の前方展開に続いて、戦略爆撃機の積極的な運用も封じられる形となった。
日本側はCAPの302飛行隊が後続の攻撃に備えていたが、結局沖縄本島に対するそれ以上の攻撃は無かった。
2025年4月3日 07:25 先島諸島沖
先島諸島上空にはE2Dが1機滞空していたが、中国軍の出撃を捉えると退避していった。
超音速巡航で先島諸島空域へ進入した、301飛行隊のF35Aが代わって、中国の戦爆連合を捕捉する。
対する中国側は、自分達が数百キロ彼方から、捜索レーダーに捕捉されていることに気付いていたが、沖縄本島攻撃隊同様に沖縄の基地は無力化した以上、日本本土からの迎撃は間に合わないものと予想していた。
だが、実際には那覇から第9航空団が迎撃に向かっている
先島諸島に向かう100機の内訳は、護衛のJ11が60機。J16、J10、爆装J11が40機だった。
彼等は、昨日の帰投時にF35に奇襲された戦訓から、戦爆連合の東側50キロと後方100キロと離れた位置に、2個大隊ずつのJ11を配置し、盾の役割を果たさせようとしていた。
彼等護衛機は所属する旅団がバラバラだったが、それでもなんとかまとまりを見せていた。
先述したとおり爆撃隊の、東側、後方に加え、真上と正面に、それぞれ2個大隊が護衛に付いている。
そこで、大隊長の一人が識別しやすくするために、正面の隊を「玄武」、東の隊を「青龍」、後方を「朱雀」、上方を「白虎」と、四神の名前で呼称することを提案。他の大隊長達の同意を得ていた。
中国側の予想を裏切り、航空自衛隊は戦場に近づいている。
全くの偶然だったが日中双方は、ほぼ同じタイミングで制空隊や攻撃隊を出撃させていたのだ。
F35Aの1機は、301飛行隊長藤本2佐が操縦していた。
彼は自機のコントロールだけでなく、F35のシステムを最大限活かして、第9航空団の管制まで手伝っていた。
高度にシステム化されたF35だが、それだけパイロットに操縦技術とは別に、システムへの理解を要求する。藤本2佐が行っているのは、新時代の戦闘機における「神業」だった。
F35とF15改、JSIのデータリンクは、E767を中継した形で繋がっている。そのためF15改、JSIはレーダーを切ったまま進攻していた。
藤本機のコクピットディスプレイ上には、日中の航空兵力の位置関係が一目両全に映し出されている。
中国機の接近によりE2Dは退避しつつあり、E767は対レーダーミサイルを警戒し、レーダーの出力を絞って沖縄本島上空に滞空していた。その代わりに藤本機のレーダーが捕捉した情報が、データリンクでE767に共有されている。
つまり、周り道をした形で、藤本機の情報は味方のF15群に共有されていたのだ。
E767の管制士官は藤本機からの情報に基づき、F15部隊にレーダーを使わせること無く、中国編隊のレーダーの死角となる側面から攻撃を仕掛けるように誘導していく。
しかも敵上陸船団の護衛艦が搭載するレーダーからは、索敵範囲外になるように、巧妙に最適なコースとタイミングを算出して誘導を行った。
これは繰り返しアップデートを行ってきた、E767のシステムとそのエンジニアの成果でもあった。