包囲される台湾
中国にとっての本命の台湾への作戦は、損害に構わず継続されていた。
一方、宮古島に退避した台湾空軍機は、米軍が搬入していた燃料と武装を補給してから、応急修理が出来た台湾に飛行場に一部が復帰。反撃を継続したものの、数的に不利な状況は相変わらずで、こちらの損害は増も続けている。
台湾本島は中国海軍に包囲されつつあり、西岸では台湾側の対艦ミサイルと、中国艦艇の巡航ミサイルの撃ち合いが続いていた。
中国海軍主力は、台湾とフィリピンの間に広がるバシー海峡を突破して、南から台湾東岸に進出しようとしている。
金門島、馬祖島、澎湖島は絶え間ない砲爆撃に叩かれている。その周囲は中台双方が散布した機雷に取り囲まれ、歩いて双方を渡れるのではないかと思われるほどだった。
中国軍は台湾側の機雷を処理するため、多数のUSVや無人の退役済フリゲートや駆逐艦、民間の廃船を遠隔操作で突入させていた。さらに強引に機雷を処理すると共に、台湾側の対艦ミサイルを引き付けようとしている。
台湾の三つの離島への上陸作戦の指揮官は、西部戦区から派遣された石陸軍中将だ。
西部戦区勤務は中国陸軍では、出世コースとされていた。ちなみに張は公言こそしないが、西部戦区がエリートコースという陸軍の現実について、心底侮蔑している。彼にしてみれば、父の古巣は少数民族を虐めているだけのことが、評価され、出世できる不可解な組織というわけなのだった。
だが、その非情さが今は役に立っているとも思っている。
敵にも味方にも、無論、少数民族にも冷酷な石中将は、期待通りに強引な着上陸作戦を成功させつつあった。
台湾守備隊の必死の防御射撃にもかかわらず、ヘリや舟艇、ホバークラフトが往復して歩兵大隊を次々と送り込んで行く。損害は大きかったが、2日12時までには、3つの島に、それぞれ5千から1万の上陸部隊が取りつくことに成功していた。