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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
老嬢、最後の煌めき
113/221

深海からの一撃と高少佐の意地

2025年4月2日 09:22 グアム沖


「山東」の艦載機は補給を終えて、発進を始めていたが、「福建」の方はまだだった。

訓練不足で帰投したJ15の受け入れにも、その補給にも時間がかかっているのだ。

「山東」は8機を発進させつつ、母艦が着艦不能に陥った「遼寧」のCAPを臨時に受け入れて、ローテーションさせてもいた。


「山東」のクルーの働きに艦隊司令部は満足している。

だが、彼等は「山東」のクルーを、遥かに上回るノウハウを保持する米空母クルー達が、既に彼等の「ニミッツ」艦載機の補給を完了し、第2次攻撃隊を発進させていることに気づいていない。


その時、艦隊最後尾に位置していた054級フリゲートに水柱が立った。続いて爆炎が生じる。

より艦隊の内側に位置していた、055級、052D級にも次々と水柱と爆炎が生じていく。

司令長官は叫んだ。

「潜水艦か?哨戒ヘリとフリゲートは何をしている!?」


護衛についていた最新鋭原潜095級1隻と、1隻ずつの052D型、055型、054型が瞬く間に撃沈されてしまっていた。

095級は航行中に不定期に回頭を行う運動を繰り返し、後方に米軍の原潜が存在しないか、チェックしながら慎重に行動してはいた。

だが、シーウルフ級の驚異的な静粛性の前では、探知することができずにいたのだ。


シーウルフ級ネームシップ「シーウルフ」は残る2隻の095級潜水艦や、対潜ヘリコプターの追撃を引き付けるように、離脱を図る。

もう1隻潜んでいたシーウルフ級「コネチカット」は、しばらく大人しくしていた。

だが、僚艦のおかげで自らは探知されていないことを確認すると、魚雷を再装填して「山東」を攻撃。今度こそ離脱した。


「山東」には「コネチカット」から放たれた4発の魚雷が命中。艦の底に4つの大穴が開いた山東は、中国の威信と共に、被弾からわずか3分で沈没した。

(なんてことだ・・・!)

指令長官は青ざめた。中国海軍の誇る最精鋭の空母「山東」が、こんなにあっさり撃沈されるとは。

艦隊の規模と攻撃力は急拡大したが、対潜能力は追い付いていないことを自覚してはいた。だが、ここまでも脆いとは考えてもいなかった。


(いやそれより、艦隊に残った攻撃力だ。)

補給艦と、「遼寧」、LRASAMを被弾して落伍した2隻の護衛にも戦力を割いていたから、残存の駆逐艦とフリゲート艦は055級2隻、052D級1隻、054級1隻まで減ってしまった上、撃沈された艦の乗員が千名以上は漂流しており、救助が必要だった。

さすがにこれだけの将兵を見殺しにして進撃は出来ない。敵潜水艦のさらなる攻撃も予想される。

(打撃グループによる攻撃を中止するべきか?しかし、我々はまだ確実な戦果を挙げていない。)

彼の葛藤はわずかな時間だったが、それもCICの防空担当士官の悲鳴のような警告に断ち切られた。

「上空警戒中のJ15の反応が8機とも消えました!これはいったい!?」


米軍第2次攻撃隊の制空隊はF35Cの稼働機の全力、22機だった。損害と不調により、3分の2近くまで稼働機が減っている。

彼らはエリアスイーパーだったが、予想空域で会敵しなかったため、そのままさらに進出して中国艦隊の迎撃ラインに潜り込み、上空でCAP中だったJ15編隊を一方的に撃滅したのだ。


攻撃隊は今度も12機のF18に直掩された、攻撃担当のF18が12機だった。

彼等は「ドク」の手柄により、全く損害を受けていない。

再び24発のLRASAMを射程500キロで発射すると、離脱していった。

前回の攻撃よりは慎重に、より遠距離から発射している。

KJ600は彼らを探知したが、打つ手が無かった。それどころか、内懐にF35Cが出現したことに気付くと、レーダーを切って低空に逃げ込んだ。

仕方の無いことだった。もはや、空中に味方戦闘機は存在しないのだから。


シーウルフ級2隻の攻撃で、艦隊陣形が乱れていた中国艦隊は、それでも20発の迎撃に成功した。

なまじ隊形が乱れていたため、「福建」に向かったミサイルは無かったものの、さらに護衛艦3隻が被弾し、沈没はしなかったが戦闘力を失った。

そして、より悪いことには、F35Cに艦隊の状況が正確に偵察されてしまったのだ。


F35Cからの情報を分析した米艦隊司令部は、中国艦隊が既に「福建」と、052D級が1隻しか戦闘力を保っていない事実に、半信半疑となりながらも第3次攻撃隊の準備にとりかかった。


再び無傷で離脱するかに見えた米攻撃隊だったが、今度は上手くいかなかった。

「福建」を緊急発進していた高少佐が、猛烈な追撃を行ったからだ。


彼は発進準備が間に合った、周中尉機だけを連れて発進した。

そのまま超低空飛行で米軍のレーダーを避けつつ、KJ600の最後のレーダー情報を頼りに、米攻撃隊の迎撃に向かう。米軍戦闘機の手強さを肌身で教育されたばかりの彼は、そのまま超低空飛行で接近。LRASAMの発射にはとても間に合わなかったものの、F18編隊の追撃に移った。


米軍の編隊は圧倒的多数。彼らは僅かに2機。自殺行為も同然だったか、高少佐に迷いは無い。


F18編隊のリーダーは、油断しきっていた。

せっかく500キロの彼方から攻撃したのに、そのまま離脱しなかったのだ。彼は攻撃隊を先に帰すと、自らも含む直掩隊には、中国軍機が出現することを期待して空域に留まらせた。

E2の管制官が帰投を促しても、適当な返事をして粘る。彼は敵機を撃墜するチャンスをモノにしたかったのだ。

だが結局、中国機は現れる気配がない。撃墜マークをゲットできず、しぶしぶと帰投しようとする。


高度3000メートルで飛行する敵に、海面付近から急上昇した2機のJ15の武装は、それぞれPL10が2発と機銃だけだった。

高は重武装はあきらめ、代わりにバディ給油無しで、燃料を積めるだけ積んで発進していたのだ。


だがそれでも、E2DがF18編隊の後方低空に、突然出現した脅威に気付いて警告を発した時には、1機ずつのF18が高と周に喰われてしまっていた。レーダー無しで、500キロ先の敵機を補足したのだ。

高は視力は抜群だったものの、KJ600が最後に捉えた位置から、米軍編隊が大きく動いていなかったことが致命傷になった。


米編隊は小癪な追撃を受けたとはいえ、反撃を行わず、そのまま退避することを選択した。

今度こそE2だけでなく、母艦からも即時帰投を厳命されたのだ。おかげで、たった2機の高少佐達は、そのまま低空に離脱することに成功した。


だが、そこからが綱渡りだった。

最低限の武装と、ギリギリの燃料で彼方のF18への追撃を成功させたのはいいが、燃料はどう考えても「福建」に辿り着くには不足していたからだ。


だが、高は今F35Cに狙われたらお終いだと思いつつも、緊急発進後に追躡させるように母艦に要求しておいた、バディ給油役のJ15との会合に辛くも成功し、燃料を補給した。

高は気づいていなかったが、この数時間の間に彼の頭髪は一気に白髪が、顔面には皺が増えていた。

この数時間で、彼が九死に一生というべき瞬間を何度も乗り越えてきた結果だった。


それでも高は、最後まで自分を信じて付いてくれた僚機の周への感謝を忘れなかった。

「よくやったぞ周。お前が後ろを守ってくれたおかげで、敵にひと泡吹かせることができた。」

そう言うとキャノピー越しに、後方を飛ぶ周に向かって米軍のようにサムアップしてみせる。

高の態度に周中尉は感激する。ただでさえ絶望的な戦況で、ここまで戦える高を尊敬していた。

その上での部下への気遣いに心服したのだった。

(いつか俺も彼のように、強く、優しいパイロットになりたい!)


針の穴を通すような追撃と、帰還を成功させたはずの高と周だったが、彼等が帰投した時には母艦「福建」は炎上していた。


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