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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
老嬢、最後の煌めき
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艦載機乗り

2025年4月2日 2:00 グアム沖


予想される米機動部隊との会敵が、数時間後にせまっていた。


米軍の電波妨害のためか、衛星が破壊されたためなのか、あるいはその両方のためか、中国機動艦隊は本国の司令部との衛星連絡も、北斗からもたらされる位置情報も途絶えている。

艦隊は突如として情報を自ら集める他無くなり、孤立していると言って良かった。


万一このような状況に陥った場合の、頼みの綱になるはずだった、空軍のWZ8無人偵察機も飛来しない。

だが、「ニミッツ」CSGの位置は概略ではあるが、先行している原潜がなんとか捉えている。


困難な状況に陥ったと言えたが、機動部隊の士官達で撤退を進言する者はいなかった。

孤立状態でも勝てると信じる者と、空母機動部隊の面子を重視する者との割合は、半々と言ったところだった。空母航空団を構成するパイロット達は、当然前者だ。

(秦ですら、米艦隊に打撃を与えられることには確信を持っている。)


「福建」に各飛行隊長と大隊長がヘリを使って集合し、作戦会議を開いた。今回の会議は最新の敵情を受けた、具体的かつ、詳細な航空作戦の詰めについてだった。

作戦を決定するのは航空参謀と指令長官だったが、隊長達がおかまいなく、次々と発言して会議を主導していった。


「幸い、我々の獲物「ニミッツ」はまだ、誰のものにもなっていません。潜水艦にも、対艦弾道弾にもね。」

「問題は敵の空母に1個飛行隊、10機搭載されているはずのF35Cです。」

「我が方にはステルス機が無い以上、数的優位を生かす他無いと考えます。F35が、制空任務で出てくるか、艦隊直掩で出てくるかは分かりません。しかし、F35さえどうにかできれば、敵の主力のF18に対して、我々はPL15の長射程をもって互角以上に戦えます。」


彼等が問題にしているF35Cとは、米軍の主力ステルス機F35の艦載機バージョンのC型のことだった。空母に搭載できるステルス機はF35Cと、垂直離着陸が可能なF35B以外には存在しない。これにくらべたら、F15やF16と同世代の機体である、F18はまだマシな相手なのだ。


「そこで、もっとも練度の高い「山東」の飛行隊から、最精鋭の部隊を抽出して、24機の強力な制空隊を編成します。これに2機のJ17を随伴させて電子的に援護します。」

「制空隊は8機ずつ、三つの大隊に分かれます。

ここで先頭の大隊のみ、これみよがしにレーダーを作動させ、F35をおびき出すのです。

F35がレーダーを作動させたら、正面からいったん会敵。

その後J17と共に電子戦を行いながら、チャフ散布及び回避運動を行うことで、F35の攻撃を引き付けます。」


「敵のミサイルはAIM120であれば、ウクライナで採れた最新の脅威信号データがありますから、ある程度妨害できるはずです。噂の新型ミサイルAIM260は、そんなに数が無いはずです。」

「それでも先頭大隊は大きな損害を受けるでしょうが、F35Cは稼働率も低いですし、おそらく1機あたりで4発しか搭載していないミサイルは、先頭大隊への攻撃で大半を撃ち尽くすでしょう。」


「そのスキに、後続の2個大隊は全速で距離を詰め、F35をIRSTで捕捉します。」

「レーダーで探知できなくとも、IRSTで相手の発する赤外線を捕捉さえできれば、接近戦に持ち込めます。

そうなれば速度、運動性で我々が圧倒的に有利です。ステルス性能は、目視と赤外線誘導ミサイルには無意味ですからね。

それにF35Cは接近戦用のミサイルを装備していませんから、J15が16機でかかれば鈍重なF35Cの10機程度、逃がしはしません。後方の早期警戒機の、E2Dまで喰うのは難しいかもしれませんが。」


そこまで聞いて秦艦長が口を挟む。

「「勝てる」では無く、「逃がさない」なのだな?」

山東飛行隊長の呉中佐が答えた。

「ええ勿論。相手がどこの誰だろうが、勝つのは我々ですからね。あ、それと先頭大隊の指揮官は私がやります。」

勝利への自信に満ち溢れ、事も無げに危険な任務を引き受けることを宣言した彼に、秦は苦笑した。うん。戦闘機乗りとはこうでなくては。


彼は会議前の呉中佐との個人的な会話を思い出した。

呉中佐は秦にとって、かつての部下であり、後輩だ。付き合いが長く、共に海軍艦載機部隊を育て上げて来た仲でもある。

呉は他人事のように秦の憂鬱を論評していた。

(そりゃ、今上海に居るかつての艦隊司令部と、現在の艦隊司令部とでは、考え方がガラっと変わるってこともあるんじゃないですか?

前任者の方針を踏襲してるだけなら、せっかく空母3隻持っているのに、面白くない仕事になりますからね。自分は司令部に賛成かなあ。

あの「ニミッツ」と陸軍と空軍に邪魔されずに戦えるんです。ワクワクしませんか?

我々だけで「ニミッツ」を沈めることが出来れば、世界は中国の時代になったことを認めるでしょう!)


呉中佐の発言は続く

「「遼寧」の12機は艦隊防空です。敵攻撃隊はF18がおそらく12機程度で、撃ってくる対艦ミサイルは24発です。その程度なら、PL15で数を減らしておいて、あとは艦隊防空システムに任せておけば、艦隊に被害は出ないはずです。


「福建」飛行隊は攻撃隊です。16機が対艦ミサイルを装備。12機で直掩。2機は電子戦機です。

史上初めて米軍の原子力空母を、空母で撃沈する栄光は秦上佐!あなたのものですよ!

遼寧最後の4機は、早期警戒機KJ600の護衛です。」


彼らの明快な態度に、指令長官も政治士官もホクホク顔だった。

各空母航空隊の隊長達による、実力に裏打ちされた前向きな発言に秦も勇気づけられた。

相手が米軍だからといって、悲観的になっていたかもしれない。

それにしても、と思う。

言ってることは同じなのに、相手が偉いさんと部下とでは、こうまで自分の受け止め方が異なるものか。


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