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沖縄・台湾侵攻2025 Easy Mode 完全版 Ver2.1  作者: しののめ八雲
老嬢、最後の煌めき
104/221

機動部隊

2025年4月2日 05:00 グアム沖


中国による沖縄・台湾同時侵攻は、広い範囲で同時多発的に、様々な事象を生じていた。


80年ぶりに生起した、空母機動部隊同士による艦隊決戦もその一つだ。


グアムの北500キロの海域に、中国の誇る機動部隊が輪形陣を組んで遊弋している。

陣形の中心となるのは、空母「遼寧」「山東」「福建」の3隻。

それを055級、052D級駆逐艦が8隻、054級フリゲート6隻が護衛していた。さらに海中には、095級原子力潜水艦を伴っている。そして、後方には901級高速戦闘支援艦3隻が補給に備えていた。


機動艦隊の任務は、グアム、ハワイ方面から飛来するであろう米軍爆撃機の阻止と、米本土から来航する米機動部隊の迎撃。

状況次第では、グアムへの爆撃すらもありうるとされていた。

実際、既にグアムを爆撃可能な距離にまで接近している。

だが、中国軍空母機動部隊の首脳陣には、グアムの米軍基地爆撃など、眼中にない。

狙うは、かつての台湾海峡危機で中国海軍に屈辱をもたらした、米空母の撃沈だ。


彼等は米軍の空母「ニミッツ」を中心とした空母打撃群=CSGと対峙しつつある。

「ニミッツ」CSGは近年、この時期に中国の空母グループが太平洋に進出して長期訓練を実施すると、横須賀でドック入り中空母「ロナルド・レーガン」や「ジョージ・ワシントン」に代わって監視に出てくる因縁の相手だった。


中国艦隊の搭載機は、大半が中国国産のJ15で占められている。

原型はウクライナから輸入したSU27の艦載機版SU33、その試作機T10だった。

J15を中国が開発した時には、ロシアは中国の技術力を侮っており、いずれ自力開発に行き詰まって、自国のSU33の購入を求めてくるものとタカをくくっていた。

だが、中国の技術力の向上はロシアどころか西側の予想をも上回り、立場は逆転している。


J15の最新型B型では、AESAレーダーを搭載。PL15空対空ミサイルや、対艦ミサイルを装備するに至った。

派生型の電子戦機J17すらも開発した。もはやJ15は、ロシアですら欲しがるほどの高性能艦載機に変貌していたのだ。

J15Bならば米軍のF18E/Fと、互角以上に戦うことが出来る。

先行配備されていたS型も、機会があればB型に改装されていた。ロシアからSU33をわざわざ輸入する意味など無くなっていたのだ。


中国機動部隊は、このJ15BとJ17をそれぞれ「遼寧」が24機、「山東」が36機、「福建」では48機、合計108機も搭載していた。

試作品も同然の「遼寧」はともかく、より大型で本格的な空母である「山東」「福建」の搭載数が少なく感じられるかもしれない。

これは元々、艦載機として設計されわけではないSU27から派生した機体であるJ15が、主翼折り畳み機構を実装してもなお大型に過ぎ、駐機スペースを浪費してしまって搭載数を稼げないためだ。


しかも、その108機は全てが戦闘に参加できるわけでは無かった。

実にJ15の3分の1は「給油機」として運用されるからだ。


J15は確かに有力な艦載機だったが、空母側の事情でその性能を完全に発揮出来ないという問題があった。

「遼寧」「山東」の2隻は、カタパルトを装備していなかった。空母の短い甲板から艦載機を発進させるために、甲板に傾斜を設けたスキージャンプ方式を採用してはいた。

だがそれでは、カタパルト方式と比べて、かろうじて発艦できるに近く、艦載機の最大離陸重量の大幅な制限を受けた。

「福建」は最新の電磁カタパルトを備えていたが、非原子力機関のためカタパルトの出力が不足しており、結局のところ離陸重量の問題は解決出来ていなかった。


西側には、これをもって「福建」を欠陥品とみなす向きもあったが、当の中国は気にしていなかった。「福建」はカタパルト運用に習熟するための、半ば実験・練習艦でもあったからだ。

本格的な電磁カタパルト運用は、原子力機関を搭載した「福建」2番艦から開始するつもりで、その成功が確認され次第「福建」も大規模改装を受け、原子力機関を搭載し、電磁カタパルトを本格運用するつもりだった。


中国海軍はそれまでの間、J15の能力を完全に発揮させる方法として、かなりの荒業を考え付いた。

それが、搭載するJ15の3分の1を、空中給油機として運用するというものだった。

いわゆる「バディ給油」と呼ばれる方法だ。


そのままだと、J15は搭載する燃料と武装に大幅な制限を受ける。

しかしこの運用方法の場合、燃料は最低限のみ搭載するかわりに、武装はフル装備で発進できる。

発艦後、先行していた給油役のJ15から空中給油を受け、フル装備で作戦行動が可能なだけの燃料を給油するのだ。


給油担当のJ15も、燃料を満載で搭載できるわけではなかったから、1機の給油担当機から給油できるのは2機までで、しかも満載とはいかなかった。

だが、苦労したかいあって残りの3分の2のJ15B、J15Dに、まがりなりにも満足できる兵装搭載量と、戦闘行動半径を与えることに成功していた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 一部本当に中国がやらかしかねない所があるなぁ、と思った。 陸海空その他もあるけど戦区ごとの対立での足の引っ張りあいとか普通にやりそう。というか中国の歴史で内輪揉めをやり過ぎて負け戦になっ…
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