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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

実はその少年、告死烏と呼ばれる魔王

作者: 白山碧水

とりあえず短編でスタート

書き溜めた三話まで繋げました。


よろしくお願いいたします


― 戦場跡にある黒い卵は拾ってはならない ―


 そんな言い伝えなんて僕は知らなかった



 この世界には烏屋と呼ばれ戦場跡に眠っている商品を売る戦場商人達がいる。


 戦場商人達は貴族の庇護下の元商品を集め売る為に大小問わず孤児院を経営し戦災孤児をかき集める。


 集められた戦災孤児達は烏と呼ばれ商品知識と生きていく術を教えられ運良く才能を発現した場合、貴族は教育料として孤児院にお布施を渡し烏は貴族に引き取られる。

 

 僕ことマリウスはそんな枠組みの中で生活している烏の一人である。




 此処は聖女が暗殺されたと言われる大戦場跡。

 そんな戦場跡に僕達烏は大馬車数台から降りて整列する。 

 


「上等なブツを持ってきたヤツは飯をたくさんくれてやる!拾って来れないヤツはなんか獲ってこい!!」


 50cm程の長さで先が三本に別れた通称烏鞭と呼ばれる鞭を持った小男が横に無意味に立たせている僕を烏鞭で叩いて烏達を送り出す。


「マウスもさっさと行け!」


 マウスじゃない、マリウスだと思いながら僕は皆の後を追う。  


 認識証代わりの烏の羽飾りを付けたツギハギだらけの何世代も着回しされた革のベストにだぶだぶの麻の服、靴代わりに履いているどんなサイズでも調整可能な革袋。

 戦場で苦しむ騎士に安らぎを与える為の慈悲の短剣と粗悪なナイフを腰に差し麻縄と堅パンが二つ入った大袋を担ぐ。


 烏達は朝送り出され次の次の日の朝まで商品を探す。


 帰って来れなかったら捜索される事も無く棄てられる、そんな環境。


 二人組や三人組と組んで商品を探す利口な烏もいるが僕は独り。


 何故かというと僕は小柄で非力で足が遅く見た目も幼く上の者に目を付けられている。そして何故か大人並に頑丈なので良く大人の殴り袋代わりにされる。


 そんな僕である。

 

 普通に歩いて探してもまず売れそうな商品なんて何も拾えない。


 僕は遠くに見える森を目指して歩いていく。


 烏達は森を避ける。

 

 通称宝の森と言われ商品を発見出来れば見返りは大きいが危険と森自体の隠蔽性で徒労に終わる確率も高い。


 森を目指すのはだいたいが僕みたいな独り者か怪我をした烏である。


 半日程歩いて森に辿り着いた森は戦場にもなったであろうか、かなり踏み荒らされていた。


 僕は手頃な長さの丈夫そうな枝を探して杖代わりにして森の中を進んでいく。


「あっ、野いちご!」


 踏み荒らされて残った僅かな野いちごを食べてまた休憩しまた食料もとい商品を探す。


 決して食料だけを探しているわけでは無い。


「今日はここで止めて寝よう」


 途中偶然拾った胡桃を食べながら商品として確保した使いこまれた外套を着込み木陰に腰掛ける。


 当然寝る前に何処かで拾った石でナイフを研いでおく事も忘れない。 


「僕はこれから大きくなったらどうなるんだろう」


 木々の隙間から見える星空を眺めながらそう呟き眠りにつく。


 今思えば此処で寝なければアレを見つける事も無かったと思う。



― ああ、今回は出るのか…そう出られるのか ―

 

 何処からか僕を呼ぶように声が聞こえる


  ― 苦痛を捧げよ ―


 気のせいかと寝ぼけたマリウスは周りを見渡す。


 ― 苦痛を捧げよ ―


「向こうから声…?、なんだろう」


 ― 苦痛を捧げよ ― 


 寝ぼけ眼を擦りつつ声が聞こえた方向に向かって森の中を何故か迷う事無く歩いていく…


 なんの前触れも脈絡も無く胸に槍を突き立てられ大木に縫い付けられた少女の前に黒い卵が浮かんでいた。


 ドクン


 心臓が悲鳴を上げる。


 ドクン


 僕は悲鳴を上げる。


 ドクン


 僕の存在が悲鳴を上げる。

 僕に何かが割り込んでくる。

 僕の意識が分かれていく。

 

 僕は一人なのに全員は僕。

 

 せかいとぼくとたまごがひとつになってたくさんにわかれてそれをながめているぼくとながめているぼくをみあげているぼくとぼく


 解らない判らない分からないわからないワカラナイwkrnい…

   


 卵は僕を見ている。

 僕は卵を見ている。

 

 ― 苦痛を捧げよ ―

 

 卵は僕を呼んでいる。

 僕は卵を呼んでいる。

 

 ― 苦痛を捧げよ ―

 

 卵は僕に近づいてくる。

 僕は卵に近づいていく。

 

 ― 苦痛を捧げよ ―

 

 卵は

 僕は

 

 ― 苦痛を捧げよ ―

 

 僕は

 卵は

 

 ― 苦痛を捧げよ ―

 

 卵は僕は卵は卵は僕は卵は僕は僕は僕は卵は僕は卵は僕は卵は卵は僕は僕は僕は僕は僕は卵は僕は僕は卵は卵は卵は僕は卵は僕は僕は…


 ――― お前を捧げろ ――― 



 粒以下になった僕はただ叫ぶ

 


 …僕は…僕だけであり…僕だ…  

 


 

  

 

 気付くと僕は倒れており卵は右手に収まっていた。

 いや、僕は僕は少女の前に立ち黒い卵を握っていた。


 自分の思考と感覚と時間と距離が解らない。

 

 ― 苦痛を捧げよ ―


 胸に凄まじい衝撃が来る。

 胸が熱い、燃えそうなくらいに胸が熱い。


 胸を見ると僕の胸には少女と同じ槍が突き刺さっていた。


 ここは胸に槍が刺さる世界なのか 

 

 世界が黒く遠くなっていく…




「殺ったかぁ?」

「胸に槍刺さって生きてたら人間じゃないな」


 胸に槍が刺さって気絶していた僕の前に森から二人の銀装の騎士が出現れた。


「卵の所有者は死んで魔王は無事封印されたっとぉ…」


 腕をぐるぐると回しながら長身の騎士は面頬を上げながら僕に向かって歩いてくる。

  

「しっかし…こんな事の為にわざわざ聖女を使い潰すってのはどうなんだろうねぇ」


 そう言う騎士に対してもう片方の巨漢の騎士は静かに答える。


「そう言うな。魔王の発生を人類側が管理するには現状これが最善策だ。あとその少年は何処かの烏だな」


「烏なら戻らなくても問題は無しっとぉ…御尊顔はいけーんっとぉ」 


 いったいこの二人は何を言っているんだろう?


 いきなり槍を投げつけて僕を殺そうとした騎士達。


 殺していいよね?

 

 ― うん、いいよいいと思うよ ―


 不用心に近づき僕の生死を確かめに来た長身の騎士の顔目掛けて行動をする。 


「なっ!」


 腰から慈悲の短剣を抜き面頬を上げた長身の騎士の左目に突き刺す。


「がっぐっき…」


 相手はおそらく戦闘慣れしている騎士。通常なら絶対に成功するはずの無い奇襲は槍を当てた油断からかあっさりと成功した。


「パーシヴァル!よくもパーシヴァルを!」


 息をつく暇もなく巨漢の騎士は腰から戦鎚を抜き僕を叩き飛ばす。


「槍が刺さって何故生きている!」

「死ね!死ね!死ね!死ねぇ!」


 フルスイングの戦鎚の横殴りを身に受けて吹き飛び倒れた僕に対して騎士は何度も何度も全力で戦鎚を振り下ろす。


 数分後 


「はぁ…はぁ…死んだか?」


 慈悲の短剣を握っていたはずの右手から意味不明に黒い卵が抜け落ち転がっていく。


 騎士は黒い卵を目で追い凝視し震える。 


 ― 苦痛は捧げられた ―


「な、何故魔王の卵が生きている!まさかあいつが生きっ」


 振り向こうとした騎士の背中に突然激痛が走る。


 マリウスは騎士に体当たりの如く慈悲の短剣を板金鎧の継ぎ目、背骨の辺りに突き刺した。

 そのまま騎士の膝裏を感覚で蹴飛ばし離れる。


「がはっ、ぐっっ」


 うつ伏せに転倒し背中に刺さった短剣を抜こうとしている騎士の腕の輪っかに自分に刺さっていた槍を入れてこの原理で騎士を仰向けに転がす。


 仰向けになり自重で短剣が更に突き刺さった事で悲鳴を上げた騎士の腕にかかったままの槍に両足を乗せ馬乗りになったマリウスは面頬をはね上げて拾った枝を逆手で持ち何度も何度も何度も何度も突き潰す。 


「聖王国に栄光…あ…r」


 マリウスにした事をやり返され息絶えた騎士の横で卵は世界を見つめる。 


 ― 命は捧げられた ―


 そして黒い卵から月明かりを浴びると白く輝く艶のない黒い蛇がこの世に生まれ落ちた。


 ― はじめまして、マリウス。僕はアンドロ、そうアンドロ。以後よろしく ―  


蛇は微笑みながら僕に語りかけてくる。


 ― 気にする事は無い、そう気する事は無い。僕が僕を呼んで僕と僕が繋がっただけ、そう繋がっただけ ―


 ― 僕は苦痛を餌に大きくなる、そう大きくなる。だから苦痛を感じて欲しいばら蒔いて欲しい、そうばら蒔いて欲しいんだ ―


 アンドロと名乗った蛇は僕の右手に絡み付くが不思議と違和感は無い。


 ― ああ顔が大変な事になっているね、そうなっている ―


 蛇は首を伸ばすとばくんばくんと二回噛み付く仕草をする。


 顔と胸の痛みが消えていた。


 ― 苦痛は食べると無かった事になる、そう無かった事になる ―

 ― 今回の僕は僕ととても相性が良い、そうとても相性が良い ―


 言いたい事聞きたい事があるのに納得している僕がいる。


 …とりあえずパン食べて拾って聖女様埋めて戻ろう。


 マリウスは堅パンに齧り付きながら騎士の懐をまさぐる。

 集めた結果、慈悲の短剣の回収の他に金貨63枚と銀の短剣二つに不思議な紋章が二つ。


 紋章は逆三角形を掴む鷲。

 逆三角形の中には大きな星が七つと小さな星が二つ彫られている。


 ― 鷲と逆三角形、そう逆三角形と思えておけばいい。あと金貨は僕が隠してあげよう、そう隠してあげよう ―


 そう言ってアンドロは首を伸ばすと金貨をぺろりと呑み込んで元の位置に収まる。


「そこの御二方」


 声がしてマリウスがびっくりして振り返ると誰もいない。

 気のせいか…と思い立ち上がるとまた声をかけられる。

 

「私は此処に居ます。見えないかもしれませんが此処に存在しています」


 声の方向にあるのは埋めた聖女と聖女の墓だけ。


 きっとそう言う事なのだろう。


「私は私の死を最善策と言った輩を許さない、裁きを下したい。力を貸して下さい。」


「お願いします」


 姿無き聖女から切実に懇願されても困るマリウスはアンドロを見る。


 ― 出来るか出来ないかで言えば出来る、そう出来る ―

 ― 僕と僕の存在を彼女にもわけ与えればいい、そうわけ与えればいい ―


「聖女様、これから儀式を行います。上手く言えないんですけど僕と私的な感じで自分を強く思って唱えて下さい」


「…判りました」


「僕は」

「私は」

「僕は僕」

「私は僕」

 三十秒程言い合っていると世界と僕と聖女様が混ざり合ってくる。


 僕の存在が悲鳴を上げる。

 僕に聖女様が割り込んでくる。

 僕の意識が分かれていく。

 

 僕は一人なのに全員は僕と聖女様。

 

 せかいとぼくとせいじょさまがひとつになってたくさんにわかれてそれをながめているぼくとせいじょさまとながめているぼくとせいじょさまをみあげているぼくとぼくとせいじょさま


 気付くと私は倒れていた。

 気付くと僕は土の中にいた。


 僕と聖女様の境界線を必死に探す。


 突然聖女の墓が爆発する。

 

「私は魔女アウゼリア、アゼルと御呼びくださいませ。マリウス様以後よしなに」


 色素が抜けた白髪は黒髪に染まり瞳は紅く今にも火がつきそうな空気である。

 肌は白く冷たく聖女の衣装はどす黒く染まっている。


 胸に開いた穴が無いのはきっとアンドロのサービスなんだろう。


 あと僕瞬殺されそうな空気感でちょっと怖いのはアゼルに内緒。 


 森を出たらあちこちに転がっている外套をアゼルに被せて戻る事を決定したマリウスである。


 でも孤児院を追い出されそうな気がしてならない…    


乱筆乱文ですが見て下さる方が多ければ…


もしよろしければお願いします。

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