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【第2話】末の王女と辺境の地

──マルパラム王国

国土の半分が海に面していて、ほとんどを海産業でまかなっている小さな海洋国家だ。

逆に言えば、それだけでやっていけるほど小さな国であるとも言え、周辺の国よりも少しだけ豊かであった。


そんな国には今、現国王の後を継げる男児がいなかった。

歴代に女王がいなかった訳ではないが、その期間は災害などが多くなる傾向にあるため避けるのが暗黙の了解となっていたからだ。


そんな国の王城の、とある隠し部屋に男が2人。

豪華な服を着た、不思議な色合いの瞳を持った男──この国の王、ヴァダー・アグア・メレフ・マルパラムとその侍従だ。

初老の侍従は部屋にこっそりと運び入れられたゆりかごの中で眠る、(ソラ)色の髪の赤子を見て頭を抱えていた。

「いくら王子が居ないからと言って、妾の子を作って来るとは……しかも王妃様が王子をお産みになったのとほぼ同時に」

「…………まさかこうなるとは思わなかったのだ」

ええ、そうでしょうね……と侍従は再びため息を吐いた。

この後、密談を聞きつけて乱入した王妃に、国王は何度も頭を下げる事となった。

そして赤子は妾の子である事を伏せ、末の王女として育てられる事となったのだった。


***


それから2年が経ち、末の王女──セウ・カウルム・マルパラムは辺境の屋敷に居た。

この町は、その小ささに似合わない知名度を誇っている。

理由が知りたいなら空を見上げれば良い。

そこには様々な色の巨大な生き物、竜たちが今日も大空を自由に飛び回っているだろう。


そう。

この辺境はこの大陸最大の竜の飛来地なのだ。


ここには必ず、王族の誰かが常駐する事になっている。

万が一竜と戦う事になった時、王族が持つ膨大な魔力が町の防衛に必要になるからだ。

魔力を流すだけなら幼子でもできる。

どこからか流れた“セウ王女は王妃の血を引いていない”との噂から、彼女を遠ざけるにはうってつけの場所だったのだ。


とは言え、ここは辺境。

竜が降りて来る可能性を考えると、外で大声を出して遊んだりは出来ない土地だ。

そうなると幼子が出来る事と言えば勉強か、本を読むくらいしか無かった。

そうしてセウが5歳になる頃には──読み書きや計算など、到底幼子とは思えない程の知識を持った子に育っていた。


しかし、そんな平和な日々は長くは続かなかった。

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